【02】漫画のひらめきを待てない妖怪[企画書編]
こんにちは、漫画家のひさまつえいとです。
前回の記事を読んで下さった方、ありがとうございます!
あんまり参考にならないようなことばかりかと思いますが、こういう生き物もいるんだな~という気持ちで見ていただいたら嬉しいです。
さて今回から少しずつ私の原稿の書き方について書いていこうと思います。
あくまで私のやり方なので、世の漫画家さんたちが全員こうしている!ということはないですし、こうすればプロになれる!というものでもありません。わかってると思うけど!
そしてこの記事は有料部分があります。
どのあたりが有料かというと、私の使っている企画書のテンプレートをDLして使ってみたい方がもしもいたら…ということで設定しているので、興味がある方はどうぞ記事の最後までお付き合いくださいませ~!
🌸漫画の製作風景について
現代人において漫画やアニメなどのサブカルチャーコンテンツは非常に身近なものになっているため、あちこちで漫画の基礎知識を見聞きする機会もさぞ増えたことだろうと思います。
念のために書き起こしますね。
企画書(企画立ち上げ)
プロット(漫画の台本)
ネーム(ラフ・漫画のコンテ)
下書き(作家のための完成原稿を迷いなく描くためのガイド)
完成原稿制作(実際に納品するデータ)
ざっくりとわけるとこのような工程があり、それぞれの回数や精度は作家さんや編集部単位で様々です。
段階が切り替わるたびに提出したり、いくつかの工程を進めてから提出したりなど、やり方自体もひとによって違います。
ちなみに私は下書きの工程はありません。※これについてはまたそのうち記事で書きますね!
今回の記事では1番目の企画書(企画立ち上げ)から書いていきますね。
■企画の立ち上げ=マーケティング
まず、企画を立ち上げる方法はひとつではありません。なんだったら自分で立ち上げない方法もありますしね!(原作のあるコミカライズだったり、担当編集者さんからすでに立ち上がっている企画を頂いたり)
漫画を描く際に一番最初に行うことを、いくつか紹介しますね!
持ち込みにいく(※取引がない場合)
「次回どんなのやりましょっか~」と担当編集者さんに話す(※すでに取引がある場合)
自分で描いて即売会で出すorWEBにアップロードする
こんな誰もがわかりきった基礎的なことをつらつら書いても眠くなるだけでしょうがないなと思うのでガッと端折りますが、私はこれらを空手で行いたくないタイプです。
編集部が私という漫画家と仕事をしたいかどうかはさておいて、
私は「さて仕事をしようかな」と思うとき、編集部に自分を売り込む必要があるな…!と思います。
これは編集者さんから「何か新作やりませんか~」というオファーのメールを頂いた時も同様で、自分がそこでなにを作れるのかをいくつか提示する必要があります。
闇雲にやりたいものとやらを考えてもらちがあかないので、私はいつも先に調べものをします。
編集部(と、レーベル)の色
どんな絵柄やお話のタイプの作家さんが多く在籍しているのか?私の絵は線画が太く線質が固めなので他の作家さんの邪魔にならないだろうか?
ハッピーエンド推奨か、バッドエンドを好むのか。青春に恋愛は必須なのか、友情ものがいいのか。エッチか超エッチか少しエッチか全然な~にもエッチじゃないか…など!
そこで推奨しているように見えるキャラクター像は、女の子は強いのか弱いのか、男の子の筋肉量はどの程度か、おでこは出すのか出さないのか、目は二重なのか一重でもいいのか…など!同じ雰囲気で展開している他社の傾向
相対的に見て出版社問わず人気の設定やキャラクター像があるのならあらかじめ勉強しておきたい。それらを好む読者層の需要と販売店の需要
たとえば、電子配信会社ではどんな特集が多いのかな~!令嬢?現代OL?ガテン系男子?理系?財閥?アイドル?極道・不良?
どこにどういう分布があるのか、これは結構毎日調べて常に最新の情報を得ていたい…。
なるべく世間から大外れしていないものを編集部に打診してあげたい…
私はうっかりヘンテコなのがすきなのでおかしなことを言わないようにしないと…!雑誌・レーベルの仕様
1話が24ページなのか36ページなのか60ページ近いのか、週刊(週1)ペースなのか月刊(月1)なのか、隔月(2か月に1回)なのか季刊(3か月に1回)なのか。
1話36ページだが2週に1度18ページずつ前後半で公開するところなのか。
それぞれすべて、魅せ方が変わる大きな要素なので、入念に調べないとならないです。
36ページでできることと、24ページでできることは違いすぎるし、月刊で求められる読み味と週刊のテンポ感も全然違いますから!
これらを事前に調べておいた上で、企画の案出しをします。
オファーが先にあるお仕事だったとしても「え~なに描きたいですか~」「どうしましょっかね~」というモチモチちらちらした時間を過ごすのを避けたいので、あらかじめ何案か企画を考えておくようにしています。
レーベルがどこからど~~~~見ても『スーパー時代劇異能バトルアクション少年漫画』をやりたがってるのに、私が『図書室のカーテンの裏で消しゴム千切って恋占いする少女漫画』を描きたがらないためにも。
というわけで、マーケティングしておいたほうがお互いの「おもてたんとちがった」を減らすことができるかな…と思い、日ごろから情報収集をするように気にかけています…!
とはいえ、企画を作るのは簡単ではありませんよね。
しかも何案か作るとなると…うまく作ったうちから1つでも芽が出てくれればいいですけど、その場合でも1つ残して他は捨て案になりますし、最悪全部捨てて新しく作ることも全然あります。
そもそも打ち合わせに企画案をつくるのも、私は「やりたいものを打診」するためではなく「空手で行かないため」なので、出したものが採用にならなくても別にいいです。
たたき台があったほうがお互いの方向性が定まりやすいですし、反応によっては担当さんの趣味もよくわかりますし!
でも、そう…
■そんなに都合よくひらめかないよ
何案もつくるんです、差分じゃなく、全部違うパターンのものを…!
自分にすごくやりたいものがあればゴリゴリに推してみてもいいですが、武器が一つじゃ心許なくないですか!?
もしもの時のために懐に合口、足首に小型銃、両ポケットに手榴弾は持っておきたい。(※担当さんと戦闘するつもりはありません)
今回の記事では、そんなもしもの護身用に企画書を携帯する私の企画書千本ノックをお見せ出来たらと思います。
■とりあえず【企画書】✒
企画(ネタ)を立ち上げる上で、具体的になにを考えたらいいのか、実際に私が使っている企画書を見ながらお話します。
ひとつひとつ説明していきますね。
企画概要
まさにこれが一番難易度が高いです、どんな作品か。
なのでこれは最後に埋めるのがいいですね!
ここの出来で、この企画書を読んで貰えるかどうかが決まる一番たいせつな部分ですので。タイトル案
実際にそのタイトルに決まることもあれば、まったく違うものになることもあります。これは、あくまで案。
この本が実際にリリースされて本屋さんに面置きされるイメージを企画段階でどれだけ自分がイメージできているのかが反映される感じ。
カラー扉や表紙のイメージも、ここを考えてあると具体的に出てきやすい気がします。キャッチコピー
完全に読者さんのためだけにある欄。
これもあくまで案なので、実際にこれに決まるというわけではありませんよ!でも漫画の向こう側に読者さんたちをイメージできているかが重要だと思うので、読者さんたちにどこを面白いと思ってもらうべきかを考えています。作品のウリ
この部分は編集部や販売店のためにある欄。
商品価値を重視し、この部分は売り上げが見込めると思う箇所を書くようにしています。想定読者層と想定購入層
これはなぜ分かれているかというと、画像にも書きましたが、連載中と単行本は必ずしもターゲットが同じになるとは言えないからです。
連載中も一緒に走ってくれる読者さんもいれば、単行本が出るまで待つ読者さんもいますよね。
でもどうしよう?連載中に読んで貰ってないと単行本が出ないです!
それは巻数が増えればなおさらです。
しかも…単行本が売れないと連載も打ち切りで終わっちゃう…!
これにより「本になるのを楽しみに待ってたのに~」や「連載追いかけてたのに売れてなかったの!?」が起きます。作家は知っています、みなさんがきっとそれぞれ読んでくれているってこと…!
でも、どちらか片一方が足りないと、もう片方からも作品を取り上げることになってしまう。
それぞれの読者層や購買層が少しずれることを見越して、具体的に漫画の向こうのイマジナリー読者さんたちを見つめたいと思っています。
よかったら好きな漫画家さんの本は、連載をなるべく追いかけ、そして単行本も買ってください…💝読者履修済み想定作品
これは項目名のまま、その通りです。
私は商業漫画でお仕事をしているので、執筆した漫画はすべて会社の商品になります。勝手に書いて売ってもらってるわけではないので、会社がこの漫画を商品として世に出そう決定してくれる必要があるのです。
【誰が読むのかも分からないような謎の新連載】では会社もOKが出せません。特に私は【お前誰だよ?】という無名の作家です。このひとなら何描いてもイイよ!とは思われません。
そのため「いまから作ろうとしているのは、他のこういう作品が好きな人がハマッてくれると思いますよ!」と言えた方がいいかな…と思っています。
なるべく人気があって会社が安心できる作品のタイトルを複数出すように心がけています。(ネタが同じとかではなく、共通の読者さんが読んでいそうだな~と思うタイトル)企画詳細
誰が何をしたか~みたいなところは、見ていただいたままです。
大テーマ・小テーマについては詳しく書いたほうがわかりやすいですかね?
大テーマは漫画自体のメインテーマです。ナニ漫画なのかという最初から最後まで変わらないで突き通せるテーマ。
そして、小テーマはなんのためにあるのか?と思いますよね。
これは「大テーマがピンと来てなくても、小テーマ部分が面白いから読み続けられるな~」と感じてもらえる部分です。
たとえば、大テーマが冒険ファンタジー・小テーマがパーティー内恋愛…のように、大テーマは最終的にクリアすべきもの、小テーマはどんどん読み進めていくためのものです。キャラ①~③
キャラの情報です。特筆する必要はないかなあらすじ
これも画像参照です。memo
マジのメモ。私は打ち合わせをした後の担当さんの情報を書いたり、話し合った内容をメモします。
よく書いてあるのは、「ドラマ化できる範囲内のレギュレーションで」とか「ヒロインはお姉さん系より妹系」とか…想定レーベルor雑誌
私はこれを最初に設定してから千本ノックをしています。
パソコンとipadそれぞれに企画書テンプレを入れている他、印刷したテンプレートを部屋のあちこちにバインダーで置いて、たまたま目に入ったレーベルや出版社の名前をこの欄に書きとめ、「そこでもし連載するなら…」という妄想をして企画書を作ってみるという脳トレをしています。
が、描きたいものを書きとめたあとに「さて…このネタはどこで連載するのがベターかな」と探すのもいいと思います!作品ウェイト
話数や巻数、ページ数的な意味で、完結までどのくらいのボリューム感になるかをイメージします。
1巻や上下巻で終わるようなものは私は「小」にしますが、読み切りを視野に入れている方は読み切りが「小」、連載が「大」でいいと思います。自分的ウェイト
もはややる気の問題。
自分が描くんだったら、これはどのくらい大変なのか…。取材や資料が大量に必要で一筋縄ではいかなくて、精神的にも余裕がないと難しいのかどうか。
他の人なら困っちゃうだろうけど、私ならチョチョイのチョイだよ!なのか。
なんのためかというと、連載を掛け持ちしながらできるか、できないかを図っています。必要ない方は空欄でいいと思います。
この企画書の1~4がきちんと埋められると、企画としては結構骨太に育ってくれると思います。
ぜひ漫画を描く習慣がない方も暇つぶしに遊びで考えてみてくださいませ!
そして!
企画書の上部にも書きましたが、絶対これを書かなきゃだめだというルールはありません。私がいつもやってるだけ…
でも結構脳トレとして楽しめるとおもうので、ご参考までにどうぞ~!
上の企画書画像の下部にあるように、なんとあれは『一般漫画用』です。
なにを一般漫画というのかの定義は難しいですが、今回はわかりやすいように「BL/TL以外」とさせてください。テンプレートを分けたいので!
■なんと、もうひとつある【企画書】✒
なぜ2つを使い分ける必要があるのか!?
それはですね…
1つ目の企画書は「企画自体の概要やストーリーが重要な案件」、2つ目は「キャラクターの属性や設定、過去、主役たちの関係性を中心に描くことが重要な案件」です。
ネタで読むか、キャラで読むか。
打ち合わせや会議の仕方が微妙に異なるので、企画書を分けています。
■そもそもなぜ企画書を書かなきゃいけないのか
書かなくてもいいです!!!!!!!!!!!!!!!!!
でも私は毎回新規の原稿をするたびにやっているので紹介しました。
私はこのやり方がすごく合っている…練習や勉強にもなるし、漫画家としてデビューする前からこういうものを作るくせがあったのでこの方が楽なのです。
これをすると私にとってなにがいいかというと、
・企画書を作ってから実際に原稿をするまでに時間があくことがあるので、記憶力が低い私でもこれを見れば過不足なく執筆ができる。
・途中で担当編集さんが代わることになっても情報共有が楽。
・ネームをやる時間が取れなくても新規の発案脳トレだけ鍛錬できる。
・打ち合わせを繰り返したり、書き進めるうちに原形がなくなるのを防ぐ。
大まかにこのような理由で、必ず企画書を作るようにしています。
でもなくてもいいひとは書かないだろうし、必須じゃないです。
ひらめくのが苦手な人は、無理やりこのシートを埋める形で特訓するのもいいかもしれないですね!
🌟実際に即席で企画書を埋めてみましょうか
では、前回の【01】の記事で書いた、
…という世にもおもしろくなさそうな発言から企画を作ってみようと思います。あーあ、考えなしに例をあげてしまったなあ、と今後悔していますけどね…つまんなそー!😖
しかし!
なんだよそれぇ~と思うようなテーマだったとしても仕事だったらなんでもやってみよう、という気持ちで漫画家を名乗っているので、ひとまずは少しでも面白くなるように考えてみますね。
そして、ここからはいわゆる秘伝のタレ的な感じになってくるのと、
ウワー!こんなに事務的に機械的にネタを作っていたなんてショックだ!と感じられるかもしれないことと、
ただ普段から作品を楽しんでくれている読者さんたちにどれくらい必要な情報かわからないので、有料記事にさせていただきますね…!
💴有料記事の内容まとめ
実際に即席でつくったネタの企画書案
・企画会議通らなさそうな書き方例
・ちょっと感触がよさそうな書き方例
・企画書テンプレートデータ配布(2種)
・応用編
です!
続きが見たい方だけどうぞ!
上記の内容までできっと企画書の説明はできていると思うので、気になる方やテンプレートが欲しい方だけで良いと思います。
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