危険の判断を鈍らせる|正常性バイアス
みなさんこんにちは。hisa__penです。
喉風邪を拗らせて、早くも1週間が経とうとしています。
昨日はやっと、まともに寝ることができたような気がします。
朝起きた時の喉の痛みはものすごいですが…。
喉の痛みを抑えるための薬やグッズをフル活用しております。
そんな中ではありますが、本日は「正常性バイアス」について少し勉強したので、それについてまとめていきたいと思います。
正常性バイアスとは
正常性バイアスとは、簡単に言うと、非常事態や異常な状況に直面した際に、「自分にとって悪いことが起こるはずはない」と考え、状況を過小評価してしまう心理的傾向のことです。
私が「正常性バイアス」という言葉を知ったのは、大学の授業で与えられた課題図書を読んでいた時のことです。
その本というのが、『人はなぜ逃げおくれるのかーー災害の心理学』(著:広瀬弘忠 集英社新書』です。
この本のプロローグで、正常性バイアスについてこのように書かれていました。
「私たちひ弱な現代人は、かりに危険に直面しても、それを感知する能力が劣っている。台風や洪水、津波などの災害時に、避難勧告や避難指示が出された場合でも、これに従う人びとは驚くほど少ない」
「これまでの日本や欧米での研究結果によると、災害の被害を避けるために避難の指示や命令などが発令されても、避難する人々の割合が、五〇パーセントを超えることは、ほとんどないということである。安全に慣れてしまって、危険を実感できないでいるのである」
正常性バイアスが働くと、例え災害や事故などの警告を受けたとしても、「自分には関係ない」「大したことはない」と考えて、行動を変えないという選択をしてします。
正常性バイアスが起こる要因
どうして人間は正常性バイアスを起こしてしまうのでしょうか。
これにはいくつかの要因があります。
1つ目は、自己防衛のためです。
正常性バイアスは、心理的ストレスから自分を守るための自己防衛メカニズムの一部だと考えられています。
少しの異常でも、いちいちそれを過度に意識して恐怖を感じ緊張状態に陥っていると、心の消耗が大きくなります。そのため、ある程度の範囲の異常は正常の範囲内として処理するようになっているのです。
進化の過程でも、集団生活や環境において、無意味にストレスを抱えたり、毎回の危機に大きな反応を示すことはエネルギーの無駄遣いになるため、ある程度の「楽観的な思い込み」を持つことが有利であったと考えられます。
2つ目の要因は、経験への依存です。
人間は過去の経験に基づいて未来を予測しようとします。
そのため、「これまでも問題なかったから、今回も大丈夫だろう」と考えてしまうのです。
3つ目は、他者の行動や反応による影響です。
何か異常だと思うことが起こっても、周りにいる人が冷静で、特に反応を示していなかったら、自分も「問題ない」と捉え、危機感を持たなくなることが多くなります。これは、「同調バイアス」とも呼ばれます。
また、基本的に、人間は日常生活において安定した状況を保つことを好みます。
予測できる日常的な状況や行動パターンを維持することで、安心感やコントロール感を得ることができるため、急激な変化や異常を無視する傾向があるのです。
正常性バイアスから起こる悲劇−−韓国テグ市地下鉄放火事件
みなさんも、台風や大雨などの災害警報が出ていても、「いつも通りの雨だろう」と思って避難しなかった経験はあるのではないでしょうか。
正常性バイアスが働いた結果、避難していれば助かったはずの多くの命が犠牲になってしまったという事例があります。
正常性バイアスから起こった悲劇として、特に有名なのが、韓国のテグ市での地下鉄放火事件での悲劇です。
詳しく知りたい方は上のサイトを見たり、実際に調べてみていただきたいのですが、簡単にまとめると、放火により黒煙に包まれた駅構内に停まった列車で、列車の中にも煙が侵入してきているにも関わらず、多くの人々が動かずじっと座り続けていたのです。
実はこの列車自体は放火された列車ではなく、燃えている列車の隣に停まった列車でした。ですがこの事故での死亡者の3分の2以上が、この列車に乗っていた乗客でした。
避難した私は間違っていた?−−小学生の頃の経験談
今振り返ると、あれは正常性バイアスが働いていたんだなあ、と思った経験が私にもあります。
それは、私が小学生だった時の経験です。小学4年生くらいだったと思います。
当時私は、15階建てのマンションに住んでいました。
私の親は共働きだったので、私は学校が終わった後、よく同じマンションの友達の家に遊びに行っていました。
その子の家も共働きで、その日も私とその子の二人で遊んでいました。
遊んでいると、部屋の外の廊下の非常ベルが鳴りました。
私は「火事だ」と思って、友達と一緒に1階に降りました。
1階の玄関ロビーには、数人のマンションの住民が集まっていました。7~8人くらいだったんじゃないかと思います。
集まっていた人は、40~50代の女性が多く、普段よくすれ違って挨拶をしてくれる方達で、顔馴染みのある人が多かったです。
集まっていた人とお話をしながら、だいぶ長い時間、そこにいたと思います。
それ以上人が増えることもなく、むしろ何人かは自分の部屋へと戻っていっていた記憶があります。
親が帰ってくる時間になったので、インターフォンで自分の部屋番号を押して呼び出してみると、父親か母親が出て、「もう戻って来なさい」と言われて部屋に戻りました。
(マンションへの入り口は正面玄関ロビー以外にもあったので、親が帰って来た時にすれ違うことはありませんでした)
結局その非常ベルは誤作動で、何事もありませんでした。
随分と昔の記憶なので、曖昧なところが多いのですが、私は火事だと思ってすごく怖かったのに、インターフォンで親に「もういいから戻って来なさい」と言われた時の違和感と、自分の家に戻ったらいつも通り夜ご飯が準備されていた時のギャップから、「自分がした行動は変だったのかな」「非常ベルが鳴るというのは、そんなに慌てることではないのかな」と感じたことを覚えています。
今思うと、私はまだあの頃小さくて、小学校で習った避難訓練の知識しかなかったので、その訓練通りに行動しましたが、避難しなかった他の多くの住民は「どうせ誤作動だろう」あるいは「様子を見て判断しよう」という正常性バイアスが働いていたんだと思います。
実際、その後の別の日にも非常ベルが鳴ることがありましたが、その時は「誤作動かな」と思って、鳴り止むのを部屋の中で待っていました。
正常性バイアスによる悲劇をなくすために
正常性バイアスは進化の過程で合理的に人間が身につけたものですが、時にはそれにより命を落としてしまうことがあります。
そのような正常性バイアスによる悲劇をなくすためには、どうしたら良いでしょうか。
まずは、非常事態において正常性バイアスが働く可能性があるということを知っておくことが大切なのではないかと思います。
また、防災訓練の徹底や、防災意識を高めるための教育プログラムやメディアでの情報提供が効果的だと考えられます。
実際の非常事態の時には、状況を伝える側は、パニックを抑えようとして状況を過小評価した伝え方をするのではなく、リアルタイムで、具体的かつ明確な危機情報を提供することが大切だと考えられます。
また、過去に同様の状況で被害が出たケースを具体的に紹介し、自分の身にも同じことが起こりうるという現実感を持たせることも有効です。実際の被害者の証言やドキュメンタリーは、危機感を促進する強力なツールとなります。
集団でいるときに異常が発生した時は、リーダーシップを取る人がいるかどうかが大切になります。全員が周りの様子を伺って、誰かが動くまで動かないという状況になってしまえば、危険を避けることができなくなってしまうかもしれません。
非常事態においては、集団の中で誰かが迅速に行動を起こすことで、周囲の人々も影響を受けて行動を起こす可能性が高くなります。
最後に
いかがでしたでしょうか。
今日は、正常性バイアスについてご紹介しました。
非常事態には正常性バイアスが働くかもしれない、と自覚しているだけでも、危険を察知して行動することができるかもしれません。
誰も経験したことのない非常事態では、いくら指示する立場の人や専門の人であっても、正しい判断ができるとは限りません。
周りが動いていないから大丈夫だと思わずに、自分の身は自分で守れるようにしていきたいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
♡、いつも励みになります。
それではまた、どこかでお会いしましょう。
hisa__pen
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?