日本のおもてなし文化の源|まれびと信仰
みなさんこんにちは。hisa__penです。
先週、パラリンピックも終わりましたね。
2020東京五輪の誘致の際には、滝川クリステルさんが「おもてなし」と発言したことで、「おもてなし」という言葉が大流行しました。
今日はその、日本人特有の「おもてなし」について、民俗学の視点から深掘りしていきたいと思います。
昔の人々がもてなしていたもの
日本のおもてなしの文化は、昔、農民の住民たちが「まれびと」と呼ばれる存在を迎え入れ、帰ってもらうために、さまざまなもてなしをしたことから始まったと、民俗学者であり国文学者である折口信夫(おりくちしのぶ)は考えました。
「まれびと」とは、折口信夫が提示した民俗学の用語ですが、「来訪神、訪れ神」と同義であるとされています。つまり「まれびと」とは、時を定めて他界からやって来る、霊的もしくは神のような存在であるとされています。
他界というのは、もっというと「常世」のことです。常世は、死霊が住む世界で、不老不死の世界です。そこには、人々を悪霊から護ってくれる祖先が住むと考えられていました。
日常に生活する人々は、この「常世」に強い憧れを持っており、まれびとを迎え、交流し、帰っていただくという、もてなしをしました。それが祭りやさまざまな儀式に発展していったとされています。
現代に残る、まれびとをもてなす行事
神のような存在であるまれびとは、多くの場合、仮面に仮装した異形の姿で現れ、豊穣や幸福をもたらすとされています。行事ではその地域の住民などが仮装し、神に扮します。
今でも日本に残るものとしては、北日本のなまはげ、沖縄の赤また・黒またがあります。
仮装をせずとも、まれびとをもてなす行事というのが、他にもあります。
たとえば、お盆です。
お盆では、盆提灯をさげて、祖先の霊が見つけやすいように目印を立てます。また、精霊馬を飾り、祖先の霊がそれに乗って帰ってきて、再び帰ってもらうことができるようにします。
盆の期間には、お膳を出して祖先の霊に接待をします。
まれびとをもてなすときには、迎え入れて接待するだけでなく、きちんと帰ってもらうことも大切です。
日常生活で、家にお客さんが来る時もそうですが、来てもらう喜びと、帰ってもらう喜びがあります。ずっと家にいられては、都合が悪いのです。
日本文化とまれびとの関係
折口信夫は、こういったまれびとをもてなす習慣が洗練されたことで、日本文化が形成されていったと考えています。
たとえば、客にお茶とお菓子を出してもてなす茶道であったり、お客さんのいる空間作りをする華道などです。
それらの芸道は、まず神様(お客さん)に楽しんでもらおうということが中心になっています。
また、お祭りもまれびとをもてなすためのものであると折口信夫は観察しました。日本のお祭りをよく見ると、遠くから神のようなものがやってきて、それを接待するというものが多いのではないかと気づいたのです。
恐れの対象でもあった「まれびと」
まれびとは昔の農村住民にとって、憧れでもありましたが、恐れの対象でもありました。
集落の外からやってくる旅人も、まれびとでした。閉鎖的な農村というコミュニティへの外部からの来訪者は、しばしば、新しい情報や未知の技術、珍しい物品をもたらす媒介者でした。
そのようなまれびとを、福をもたらす存在として歓迎し、来訪者が去った後に繁栄を得るという考えは、これまでに述べてきたまれびと信仰と同じです。
しかし実際にはそういったケースばかりではありませんでした。
農民の中には、客人とトラブルを起こし、強引に客人の持つ珍品や富を奪い取って繁栄を達成したケースもあります。
「六部殺し(または、「こんな晩」)」という民話がありますが、そのお話はこの「まれびと殺し」のお話です。
ある農家のもとに、旅する六部(日本全国を巡る修行者)が訪れました。その農家は六部を寝ている間に殺し、金品を奪って繁栄しますが、その後生まれた子供が殺した六部の生まれ変わりだったというお話です。
異人(まれびと)の存在があるからこそ、共同体の人々は外との境界を区切り、秩序ある世界像を作ることができていました。伝承において異人(まれびと)は、福を運んでくる存在として歓迎される一方で、災いをもたらす存在として排除されたり犠牲になったりもしました。
最後に
今日は「まれびと」についてご紹介しました。
私もまだまだ勉強中なので、今の時点ではつぎはぎの知識ではありますが、これからさらに知識を広げ、つなげていって、体系的に理解できるようになりたいです。
「まれびと」は、閉鎖的な共同体に稀に訪れる、外部からの訪問者だということがわかりました。それは、神であったり祖先の霊であったり、時には旅の途中などに訪問する外部からの人間です。
「まれびと信仰」というのは、そういった存在が共同体に富をもたらしてくれると考え、その存在をもてなすというものでした。
そして折口信夫は、日本のおもてなし文化は、この「まれびと信仰」に起源を持つと考えたのでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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それでは、またお会いしましょう。
hisa__pen