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トロント交響楽団のオールイタリアプログラム アメリカ・オーケストラ漫遊(21), Toronto, ON, Canada

 トロントは2年前の5月、まだコロナ禍が終わりきっておらずカナダの入国管理がまだ厳しかった時期にマラソンを走りに行った。オンタリオ湖に面した、湖岸はきれいに整備された街で、街の様子や地下鉄などの雰囲気もアメリカとはだいぶ違って、あまり気を張らずに歩き回ることができた。人も多く活気のある街だ。また、1時間くらいのところにナイアガラの滝があり、周辺はリゾート地として開発されて、一大観光地になっている。

ナイアガラの滝 カナダ側より

 デトロイトから車で4時間ほど。Port Huronで国境の川に架かる橋を渡りカナダに入国しひたすら東に向かった。今回はコンサート前に少し街歩きをした程度の滞在だった。St Lawrence Marketはトロントのダウンタウン近くにある市場で、生鮮食品からベーカリー、お土産屋など地域の食と観光需要を満たしていた。

Roy Thomson Hall

2024年2月3日 トロント交響楽団

2/3/2024, Sat, 8:00 pm, @ Roy Thomson Hall, Toronto, ON
Toronto Symphony Orchestra
Gustavo Gimeno conductor


  • Ballet Music from Act Ⅲ of "Macbeth" / Giuseppe Verdi

  • Feste Romane (Roman Festivals), P157 / Ottorino Respighi

  • 4 dédicaces / Luciano Berio

  • Selections from "ballabili" from "Gattopardo (The Leopard) / Nino Rota

  • Pini di Roma (Pines of Rome), P141 / Ottorino Respighi

 この日のコンサートは、なんといってもレスピーギ作曲「ローマの祭り」と「ローマの松」の両方を聞けるという、吹奏楽系のオーケストラファンにはたまらない、オーケストラを満喫できるプログラムだった。直前に知ったのだが行くことに決めた。他の3曲もイタリアの作曲家による作品で、指揮者で音楽監督のGimenoもイタリア系、とても楽しみだった。  
 会場のRoy Thomson HallはDowntown近くにあり地下鉄直結の便利なところにある。ホールの内部は近代的な渦巻き型、テレビで見たベルリンフィルのコンサートホールや、ミューザ川崎と似た形だった。アメリカではあまりこれまでにはなかった形だと思う。響き方も箱型や劇場型とは違う。音が一体になって飛んでくるというよりは、楽器それぞれの音がしっかり聞こえて合奏の中にいるような印象。今回は二階席の最前列、一番いい席を取ることができたが、この形のホールなら多分どこで聴いても悪くない、3階の1番前とかでもそれほど遠くなく感じられるのではないか。天井に釣っている円盤は音響の点で何かしているのだろうか。
 レスピーギ以外の3曲はよく知らない曲だった。Berio、Rotaともに20世紀の作曲家で、Berioの曲はオーケストラ向けの小品を4曲組み合わせた組曲だった。またRotaの曲は弦楽器向けの曲だったがヴィオラが不在という珍しい編成の曲だった。
 「ローマの祭り」「ローマの松」の2曲はとにかく大編成で多くの管楽器を使った音色の変化と華やかなサウンドを十分に楽しむことができた。どちらの曲もバンダのトランペットなどの金管楽器がとても効果的だった。そしてあまり聴きなれないホールの環境だったので前半に「祭り」、後半に「松」を両方聴くことができたのは耳を慣らす意味でもとてもありがたいプログラムだった。
 今回、このホールでは舞台上のホルンがだいぶ奥まって聞こえた。大編成の中でチェロの向こう側でパーカッションに挟まれて遠かった。「ローマの祭り」では袖から吹いているのかと思ったくらいだった。カーテンコールでバンダの奏者が紹介されることもなく暗いところで立っていて報われてない感があった。
 レスピーギの華やかなオーケストラサウンドを現代的なホールで楽しむことができてとてもよかった。コンチェルトでソリストの演奏を聴くのも楽しいが、今回のようにオーケストラのサウンドだけを満喫できるプログラムも、聴いて得られる充実感が大きいと感じた。

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