唯一無二の自然環境が生まれた珪藻土発掘跡地?!スロースケープを守り、豊かさを分かち合う活用方法とは
これまでの活動
昭和化学工業は、1933年に蒜山で創業した会社です。昔、蒜山は湖だったと言われており、珪藻土が採掘できる土壌に恵まれています。
現在は主に、珪藻土・パーライトを原料に食品関連のろ過助剤事業、建材事業、化成品事業を展開しています。
そんな昭和化学工業の岡山工場長を務める山本さんは、蒜山エリアの珪藻土採掘及び、珪藻土の乾燥の工程も含めた管理・改善を担われています。
特に、珪藻土は乾燥させる際に、熱エネルギーを大量に使うこともあり、真庭市が力を入れている木質バイオマス熱供給のプラントを工場敷地内に建設。
地元で出る樹皮等を燃料とし、珪藻土製品の製造・乾燥工程に活用することで、環境負荷に配慮した取り組みも実践を積み重ねています。
現状の課題感
今回、活用プランを募集する珪藻土採掘跡地ですが、実は昭和化学工業社も驚くような現象が起きました。
今までの蒜山の珪藻土跡地では、埋め立てをし地域施設など町に開いた場所へと利活用をされてきましたが、今回の珪藻土跡地に関しては数年そのままでの状態で管理をしていたところ、太古の蒜山を彷彿とさせる景観と、近年では珍しい自然環境が形成されつつあるといいます。
そんな珪藻土跡地の状態をみて、工場長の山本さんは蒜山の生態系保全に取り組む自然再生協議会に相談をし、水質や自然環境の調査をすることに。
そこには、採掘したことで、いずれも貧栄養な陸地と陸地と湿地と水域が共存し、そのような特異な環境を好む生物も生息する類まれな自然環境が存在していました。
「平地とし農地に戻す必要があるが、ここを埋め立てて終わらせる以外の方法はないか。」
山本さん自身も、これまで珪藻土採掘という有限な地球資源を活用し工場運営をする中で、ある意味自然環境を削っている感覚を少なからず抱いていました。
こうした特異な環境が生まれたことをきっかけに、今度は自然環境に対して何を価値として返していけるかという問いに企業として向き合い、維持・活用方法を模索していきたいという想いが芽生えたといいます。
活用したいスローマテリアル
活用したいスローマテリアルは、唯一無二な自然環境が生まれた珪藻土跡地です。
珪藻土の採掘を目的にした場所が自然発生的に、農薬や肥料で汚染されていない貧栄養な土壌になっている現象は今や世界的にも珍しく、そうした場所を好む水生昆虫や植物は、軒並み絶滅危惧種になっているものが多いそうです。
また、周りから流入河川がない場所という特徴もあり、斜面からの染み出し水と雨水のみで水が溜まるため、周りから魚が入ってこず、川鵜の糞などで水質が影響を受けることもない。そうした条件が揃っていることから、水質としても珍しい状態を維持できている。
その他にも、貧栄養な土壌であるため森への遷移が遅いため、草原環境を維持できており、そういった環境を好む絶滅危惧種の植物や蝶も生息している。
今回調査に携わった自然再生の専門家からも「露天掘りの採掘場での自然再生の事例は国内外にもほとんどない。活用方法次第では、世界的にも貴重な事例になるのではないか」というコメントをもらったといいます。
蒜山一体が昔は湖であったからこそ珪藻土が取れる、という背景やその情景を想起させる場所が、現在の蒜山には存在していません。そういった成り立ちから考えても、この景観を残し活用していくことには深い意義があるのではないでしょうか。
一方で、この環境を維持すること自体にも様々なコストがかかるため、中長期目線でも、この自然環境を守りながらエリアの地域振興にも寄与する活用アイデアが求められています。
そんなストーリーも含めて、この唯一無二のスロースケープを活かすアイデアを構想したい方をお待ちしています。
運営よりイチ推しコメント
珪藻土跡地、皆さんは足を運んだことがありますか?
そこにまさか、壮大な自然環境が広がっていることを想像できますか?
「珪藻土跡地に自然環境が戻ってきた」その言葉を聞いた時に?が10個くらいついたことを覚えています。ただ、その環境を目の前にした時、ただただ感動し、心が洗われました。この環境だからこそ生息できる植物や生き物がいること、そしてこの土地の歴史背景が感じられる景観の美しさが守られて欲しいと切に感じました。
活用アイデアの実行は容易くはないと思いますが、ピンと来た方の参加をお待ちしています!