カナヘビだらけのポケット【息子育てはファンタジー】
この夏19歳になった息子。
もう子育てはほぼ終了だと思うけれど、彼を育てるのはすごく楽しかった。
2人の子どもを授かって、夫と2人で無我夢中で育ててきました。確かにその時々でものすごく大変な時もありました。腹を立てたり悲しかったり…。
でも、子ども達とのどの瞬間も結局楽しかったんだと思います。
私にとって、特に息子を育てるのはちょっとしたファンタジーでした。
男の子って不思議な生き物です。まるで異世界から飛来したみたい。
小さい彼は…
・不意に見えない敵と戦う。
・なんでも部屋一面に広げるのが好き。
・虫やトカゲやザリガニや…私の苦手なものが大好き。
・いつも陽気だけれど怒り出したら火山が噴火したかの如く…笑。
・1日に数回とてつもなく可愛い顔で甘えてくる姿は…もうこの世界に存在するのが奇跡なほどの愛らしさ!!←どの親御さんもみんなそう思ってるよね♡
娘は確かにこの世界で育てた実感がありますが、息子の場合は…時々異世界にトリップしていたような感覚を覚えます。
なんでだろう…??
それはきっと、彼がいなければ絶対に見られない世界を見せてくれたからかも。
例えばこんな光景…。
小学一年生の頃、ニコニコと帰ってきた息子が得意げに捕まえたカナヘビを見せてくれた事がありました。
近くの用水路にたくさんいたんですって。
「へえ、スゴいね!」
褒める私。
元気に外で遊んで生き物と戯れるなんて、少年のカガミじゃない?←どこまでも親バカ笑
しかし、男の子はやはり異世界の住人なのよね。
「うん、えへへ…」
得意げにポケットに手を突っ込むと…おぉ、中からカナヘビがもう1匹…。
「あらま、2匹も捕まえたの?」
息子はさらに得意げにポケットに手を入れて…あらあら、もう1匹!
そして満面の笑顔で
「すっごくたくさんいたから、いっぱい捕まえてきた!」
と言うのよ。
あ!体操着のズボンのポケットがなんだかうごめいているんだけど…。
「ちょ、ちょ…待ち!外で見せて!!」
リビングがカナヘビだらけになる予感がした私は、慌てて彼を庭に連れて出しました。
「ママ、ケース出して!逃げちゃうから」
「う、うん」
観察ケース持ってくると、抑えていたポケットからカナヘビが出るわ、出るわ…さらに出るわ…
その数なんと18匹!
小学校指定のジャージのポケットよ。よく入れてきたね。不思議なポケットかぃ笑!
いや待って、そんなことより…
小さな観察ケースの中がうじゃうじゃとカナヘビだらけでグロテスク。カナヘビには悪いけれど衝撃の気持ち悪さなんだけど…!
「お、おー!!わー!!どーするこれ?」
わけもなく声を上げる私としゃがんでニコニコと観察ケースを眺める息子。
騒ぎを聞きつけて庭に出てきた義父も思わず息を呑みます。
「おうちで飼うよ」
という息子に
「家の中はやめてっ!!」
と叫ぶ私。驚いた顔で私を見上げる息子。
優しい義父は孫の頭に手を置いて
「おー!こりゃすごいね。どこにいたの??」
と、ひとしきり息子の武勇伝を聴いてから
「カナヘビは外の生き物だからね。外に置いたほうがいい…」
不満そうな息子に
「さ、カナヘビはここにいてもらって、じじとお部屋でポテトチップス食べよう」
そう言いながら、そっと観察ケースの蓋をずらす義父…なかなかの策士です。
ポケットチップスを食べて、いそいそと庭に出てきた息子は、カナヘビくんたちが全員お家に帰ってしまった事を知るのです。
めでたし、めでたし。
この話を、私はよく人に話します。…たぶん自慢話として笑。
小さかった息子の超絶可愛いまん丸なほっぺと、小さな手に握られて次々に出てくるカナヘビ…亡くなった義父の優しい笑顔とともに、とびきり幸せな思い出です。
あの瞬間、私と義父は息子にファンタジーの世界を見せてもらっていた気がします。
もうすっかり大きくなった彼ですが…今でも時々、私たちに驚きの世界を見せてくれます。
もちろん、息子が引き起こすことは良いことばかりでは無いわけで、その時々で怒ったり悲しかったり、色々な感情を抱いていたはずなのに、頭の中に蘇る光景はいつもとても幸せなんですよね〜!
本当に男の子は不思議です笑。
…あ、ちなみに19歳になった今の彼は、カナヘビを大量にポケットに入れていた幼い頃の自分にゾッとするそうですよ笑。あんなにカブトムシを愛していたのに、今は蝶もバッタも触れないそうです。
異世界から来た可愛い男の子もいつか、この世界の大人に育っていくのね笑。