見出し画像

識の三層と照明・形象の関係

唯識思想において、識(心)の「阿頼耶識・末那識・六識」の三層表記はよく知られていると思いますが、識(心)を「照明や形象」で表す表記はあまり知られていない部分なので、簡単にまとめておきたいと思います。

【阿頼耶識】(照明+形象)

○阿頼耶識の深層(照明)
阿頼耶識の中心部であり、如来蔵、空性、光り(浄く)輝く心、真如、仏性、自性清浄心、法身、法性、清浄法界など様々な異名があります。主観と客観、即ち末那識・六識と六識内の表象を認識します。

○阿頼耶識の種子(形象の種子)
阿頼耶識の表層に貯蔵された「形象の種子」です。この種子群から、同刹那の末那識と六識が生じ、更には次刹那(異刹那)の阿頼耶識の表層が生じます。そして、識が体験した内容が種子となって保存されます。

○阿頼耶識の表層(形象)
前刹那の阿頼耶識表層から投げ渡される種子群を受け取って保持し、次刹那のそれに投げ渡すキャリアーとして機能します。

○阿頼耶識の表層に相伴う心所
・遍行心所{触、作意、受、想、思}

【末那識】(形象)(主観)

○末那識とは
阿頼耶識を自己と思い込む自我意識です。その活動には、自我に関する無知・邪見、自我への慢心・愛着が伴われており、六識による認識に「自分が」を付加します。

○末那識に相伴う心所

・四煩悩{我見、我癡、我慢、我愛}
・遍行心所{触、作意、受、想、思}
・別境心所{慧}
・随煩悩心所{惛沈、掉拳、不信、懈怠、放逸、失念、散乱、不正知}

※世親の『唯識三十論』では四煩悩のみ、安慧の説では四煩悩+五遍行心所で九個、そして護法の説では四煩悩+五遍行心所+別境心所の慧+八随煩悩心所で十七個です。

○末那識の活動が阿頼耶識に植え付ける種子
等流の種子であり、来世の末那識となります。

【六識】(形象)(主観+客観)

○六識とは
第一識 眼識(内部に眼根・色境を表象として含み、それを認識する)
・第二識 耳識(内部に耳根・声境を表象として含み、それを認識する)
・第三識 鼻識(内部に鼻根・香境を表象として含み、それを認識する)
・第四識 舌識(内部に舌根・味境を表象として含み、それを認識する)
・第五識 身識(内部に身根・触境を表象として含み、それを認識する)
・第六識 意識(内部に意根・法境を表象として含み、それを認識する)

○六識に相伴う心所(世親の唯識三十論より)

・遍行心所{触、作意、受、想、思}
・別境心所{欲、勝解、念、定、慧}
・善心所{信、慚、愧、無貪、無瞋、無智、軽安、不放逸、行捨、不害}
・煩悩心所{貪、瞋、癡、慢、疑、悪見}
・随煩悩心所{忿、恨、覆、悩、嫉、慳、誑、諂、害、憍、無慚、無愧、掉拳、惛沈、不信、懈怠、放逸、失念、散乱、不正知、後悔、睡眠、尋、伺}

○心所の分類
・遍行心所:あらゆる対象について機能する心理作用
・別境心所:限定された対象について機能する心理作用
・善心所:倫理的に善性である心理作用
・煩悩心所:倫理的に悪性である根本煩悩の心理作用
・随煩悩心所:副次的煩悩の心理作用

○六識の活動が阿頼耶識に植え付ける種子
一つ目は等流の種子であり、善・悪・無記の六識の全てが植え付け、来世の六識となります。二つ目は異熟の種子であり、善・悪の六識が植え付け、来世の阿頼耶識となります。