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大乗仏教 空の思想

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#中観

【大乗仏教】中観派 龍樹(ナーガルジュナ)の思想

【大乗仏教】中観派 龍樹(ナーガルジュナ)の思想

今回から、大乗仏教「中観派」の龍樹(ナーガルジュナ)の思想に入っていきたいと思います。

○龍樹(ナーガルジュナ)と中観派
中観派とは龍樹(ナーガルジュナ)によって創始された大乗仏教の学派の一つです。伝記の上において、龍樹は南インドで活躍したと言われており、現代の一般的な学説でも彼は南インドのデカン高原のヴィダルバに生まれ、成人後も南インドのアンドラ王国で活躍したと考えられています。これは彼が般若

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【大乗仏教】中観派 龍樹の論理形式

【大乗仏教】中観派 龍樹の論理形式

龍樹(ナーガルジュナ)の論理形式については、明快な研究結果が発表されています。龍樹の論理形式として、定言論証式・仮言的推理・ディレンマ・四句否定が挙げられています。

ただし、前回の記事で述べたように、龍樹は本体の世界の論理でこれらを用いているため、あえて本来の形式論理学の原則を無視した使い方をします。龍樹が学んだ論理学は古代インドの論理学であるはずですが、我々現代人に馴染み深い古代ギリシア論理学

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【大乗仏教】中観派 龍樹の四句否定

【大乗仏教】中観派 龍樹の四句否定

前回の記事に続きになります。今回は四句否定について、触れていきたいと思います。以下が前回の記事です。

さて、厳密に一致しないのですが、四句否定を便宜的にテトラレンマと呼ぶ学者もいます。これは龍樹の創見ではなくて、すでに初期の原始仏典にも見られたもので、彼はその伝統を受け継いだだけとなります。『中論』において、龍樹は以下のように四句否定を使用しています。

しかし、四句否定は論理的な問題点があるこ

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【大乗仏教】後期中観派の中核

【大乗仏教】後期中観派の中核

シャーンタラクシタ、カマラシーラ、ラトナーカラシャーンティの説はいずれも『入楞伽経』の中にある詩頌を中核にしていると言われています。後期中観派の哲学と瞑想の階梯の理論はこの詩頌が根拠となっているわけですね。ただし、シャーンタラクシタ、カマラシーラによるこの詩頌の解釈は、ラトナーカラシャンティによる解釈と異なります。

シャーンタクシタ、カマラシーラによる解釈は次のようになり、()内は『入楞伽経』の

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