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中国語の歴史に思いをめぐらす

現代中国語の発音を学ぶと、日本の漢字の音読みと似ているものもありますが、かなり異なったものもあります。例えば、"学校"は日本語では"ガッコウ"、中国語では"xué xiào"(シュエシァオ)とまるで違って聞こえますが、"電脳"だったら日本語で"デンノウ"、中国語では"diàn nǎo"(ティェンナオ)でかなり似ています。
中国語の発音や語彙は、日本人がその昔、唐の時代に学んでから1000年の時を経て、変化してきています。その変化の様子と、日本語における新しい中国語の発音の受容。そして、中国語の方言に残る昔の中国語の名残などに思いを馳せると興趣が尽きません。

呉音と漢音

日本人が漢字のシステムを学び始めたのは遣隋使/遣唐使の時代からと言われています。日本語の音読みの主要な部分は、この遣唐使のもたらした唐の時代の発音を元にしています。それを日本では漢音と呼びます。そしてそれ以前の発音を呉音と呼びます。これはしかし時代的に唐の前の隋王朝というわけではない様です。Wikiの説明には次の様に記されています。

漢音を学び持ち帰る以前にすでに日本に定着していた漢字音であり、いつから導入されたものかは明確ではない。雑多なものを含むため、様々な経路での導入が想定される。

Wikipedia

この経路というのは、学術的には定説がないらしく、朝鮮経由であるとか、江南地方のことであるとか言われているようです。

それに比べると、漢音というのは唐の都長安で話されていた中国語の音を反映させています。唐の時代というのは西方から来た鮮卑系民族による征服王朝でした。この時代に中国語の発音がこの民族の言葉に影響され変化したのですね。そして遣唐使が学んだ長安の中国語が大量に日本に持ち込まれました。現在日本で話されている音読みの大きな部分がこの漢音になります。
この発音体系は、そののち中国本土では更なる異民族の統治を経て変貌していくわけですが、日本や韓国では外来の漢字の読み方として定着し、まるで化石の様にその発音を現代に残しているわけです。

漢音(かんおん)とは、日本漢字音(音読み)の一つ。古くは「からごえ」とも呼んだ。7, 8世紀、奈良時代後期から平安時代の初めごろまでに、遣隋使・遣唐使や留学僧などにより伝えられた音をいう。中国語の中古音のうち、唐中葉頃の長安地方の音韻体系(秦音)を多く反映している。他の呉音や唐音に比べて最も体系性を備えている。

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唐音

漢字の音読みとして最も一般的な漢音に対して、より現代の中国語に近い読まれ方をする音読みがあります。それが唐音です。時代的には非常に広い範囲をカバーしていて、漢音以降の発音は十把一絡げに唐音と呼んでいるような状況です。しかし、この間中国の王朝は宋・元・明・清と移り変わっています。このうち元朝はモンゴル民族による、清朝は満州民族による王朝で、中国語に大きな影響を与えています。

唐音(とうおん・とういん)は、日本漢字音(音読み)において平安時代中期以降、江戸時代末期までに中国から入ってきた字音にもとづくものをいう。宋以降の字音である。

Wikipedia

最も新しい時代の漢字の発音

唐音のうち江戸時代に入った発音を近世唐音と呼ぶそうです。この時代の発音になると、かなり現在の中国語の発音に近くなります。
例えば下記のものなどは、かなり似ています。

椅子(イス):yǐ zi
西瓜(スイカ):xī guā
扇子(センス):shàn zi
暖簾(ノレン):nuǎn lián

漢字の発音は、時代の移り変わりと共に

上記の様に、日本語の漢字の発音は、中国のそれぞれの時代の発音を残しているという面があります。ですので、音読みの変遷は中国語の発音の歴史であると考えると、興趣がつきませんし、日本語話者というのはそれだけで中国語の音韻学の素養を持っているとも言えます。

下記の様な古代からの漢字の発音の変化を想像すると、中国語の歴史に対する興味が深まります。これは日本人だからこそ得られるメリットですね。

【行】
呉音:ギョウ・ゴウ
漢音:コウ
唐音:アン
現代中国語:xíng・háng

【子】
呉音:シ
漢音:シ
唐音:ス
現代中国語:zi

【京】
呉音:キョウ
漢音:ケイ
唐音:キン
現代中国語:jīng


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