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鼻の奥がツンとした

大事な友人がいた。
大人になってから出会えた大事な友だった。

恋人と別れ、父親を亡くし、仕事の師匠を亡くすという一年があった。

神様に、私から大事な人をこれ以上取り上げないで下さいとお祈りをしたけど、ある日彼女は私の元から去っていった。

社交的で誰にでも優しい彼女の事だから、間違えたのは自分の方だと思う。

私は小さな頃からグループに馴染めなかったから人付き合いというものをよくわかっていないのだ。きっと多くの人を知らずに傷つけてきたのだろう。
彼女も知らないうちに傷つけてしまったのかもしれない。

彼女を責める気なんて全然無い。

誘ってもなかなか会えないのは、彼女に嫌われているからだろうと、私は思った。

嫌いな人からしつこくメールがくるのは嫌だろうと思い、しばらくして私の方から連絡をするのは辞めた。

人付き合いの不器用さから他人を傷つけて生きてきたであろう私だけれど、人から拒絶されるのはやっぱり辛い。

萩尾望都の「一度きりの大泉の話」を読んだという人のツイートを偶然目にして、そんなことを考えた。

萩尾望都も辛かったと思う。

何で嫌われたのかわからないのに、大事な友達から嫌われてしまったら。

きっと自分が悪かったのだと思い、その場を去っていったのだろう。

萩尾望都にとっては、50年たっても消えない痛みなのは当然だ。

こんな本が出版されたんだ。
読んでみたいな。

本を購入する前に、Twitterで色んな人の感想をあさる。

そしたら、去っていった友達の事を思い出して鼻の奥がつんとした。

もう10年近く前のことなのに、わたしの心の傷も癒えてなんかいないのだ。
生きていくために忘れたふりをしていただけ。

ひょんなきっかけで、消えたと思っていた悲しみが、生々しい痛みと共に表面化する事がある。
人の心って面白い。
そう思った。


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