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僕はどこまでもそっち側にいる

「僕はどこまでもヒップホップ側にいる」
部族/hip-hop/氏族/JAZZ/Malcolm X/僕の街 

おはようございます。
ラッパーのQティップの所属していたア・トライブ・コールド・クエストというアメリカの90年代を代表するヒップホップグループがあって、以前からこの「トライブ」っていうクールな響きの、日本では聞き慣れない単語に関心を持っていた。トライブは日本語だと「部族」と訳される。部族は、ほぼ死語というか、今の日本では一般的には使わない。だから、日本語で部族というと、すごいフィクショナルな雰囲気が生まれる。 「トライブ」は同一の出自や歴史的背景、共通の文化や言語、価値観の上で共同生活を営むとされる集団の単位のこと。少数民族のもう少しカジュアルな感じかな。日本では60年代に「部族」を名乗るヒッピーのコミューンがあった。管理社会は資本主義の否定のようなニュアンスが「部族」という言葉にはある。

アメリカの黒人スラムには、失業していて時間を持て余した荒ぶる若者が大勢いる。もとは、皆奴隷だったルーツを持ち、アフリカを中心に出身国には欧米とは大きく異なる文化があるだろう。アメリカの都市部にこうした部族的なものが生まれる要因は、こうした歴史的社会的背景から理解できる。
重要なのが、彼らがヒップホップという音楽ジャンルを通じて、その新しい表現をグローバルに展開することができそれが高い評価を得たということだ。

さて、クラッシック音楽の歴史を紐解くと、教会音楽が最初にあり、そこに辺境の要素やそれぞれの国々民族的な情感のようなものが組み込まれて、新しい音楽が生まれてきたことがわかる。それは、ロシアだったり、スペインだったり、アフリカだったりする。

そう考えると、ドライブ・ゴールド・クエストの戦略は西洋音楽の文脈にそった、ある意味正統で賢い戦略であり、自分たちのプロジェクトに【TRIBE】という言葉を使ったことは、名前が音楽史に残る可能性を高めた。そう考えると、トライブと同時代の【ウータンクラン】というグループも名前の印象が強いが、こっちはむしろ現代的な部族要素を、架空の中国拳士の名前(カンフー映画の登場人物)を頭につけて 逆説的に際立たせる賢いひねりに成功している。(ちなみにウータンは名前、クランは氏族の意味)

【ヒップホップ】この言葉の響きには〈ヒッピー〉のニュアンスがある。そもそもの源流は、ビートニク、それが西海岸に移って、ヒップスターからヒッピーになった。ビートニクは、黒人音楽とシュールリアリズムの融合であるが、あくまでアメリカの富裕層のカルチャーだ。ならば、ヒップホップから生まれたギャングスターがというキャラクターは、ヒップスターの対抗軸として有効である。白人の金持ちから富を奪ってやる。お前らの資本主義を過激に利用して。こうしたルサンチマンに人類はめっぽう弱い。まあ、ある種の偽悪的な振る舞いをする義賊である。

どう考えても白人文化であるヒッピー、サイゲデリックに対抗する戦略としてのヒップホップカルチャーは、こうしてマーケット的にも成功した。それは1950年代以降のクラシック音楽ととジャズの対抗軸を想起する。様式対即興、教条対自由、リズム対ビート、
そして、それは、公民権運動におけるブラックパンサーのように被差別民族故の過剰さが社会的に許されるからこそ、認知された。
共通するのは、アナキズムである。彼らは、イリーガルなことを強調することで、白人文化のメインストリートとの対抗軸を強く意識していたはずだ。

黒人奴隷が、暴力革命や資本主義的成功を自分たちで成し遂げ、そのスノビズムをパロディ化、無化することで、白人への復讐に成功しいていると考えると、そのアイロニーに眩暈がするが、結果的に白人的な文学表現に回収されるとしたら悲しい。
僕はどこまでもヒップホップ側にいる。

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【トライブ】

9月は4月より残酷だ 
俺は街のはずれの公文書館で部族の謎を探っていた 
母方の高祖母は白鳥族 
北に飛んでいって戻らなかった 
父方の祖父は木星の火に焼かれて記憶を失っていた 
12に分裂したヨセフの身体の1つを貰い受けた父は その緑色の小さな体を 太陽神に捧げてしまった 
部族は重い罰を受けた 
山頂で夢の粒子が立ち昇っていくのが見えた

街は海の渦巻実験によってうまれた
11番目の怨念で汚染されていた 
目の悪い俺は光が鬱陶しかった 
夜明け前 朝日が登る前に海辺を歩いた 
紅ゾンビのラジオおとこが死に場所を探している 
汚れた作業ベストの修羅に聖域も汚された 
首切り場の地蔵菩薩の首がポロリと落ちた
猫女 勘弁しろよ
と呟いてプププと笑った 

俺が街を離れるたびに閻魔が出る 
「ポータラカに首を差し出せ」とやたらうるさい
「そうおっしゃいましても」 
こうして白が残った 

なんて部族だ
午前六時五十分  
今朝の俺はマルコムのように攻撃的だ 


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