【ブックレビュー】「福祉って本当にこれでいいの?」を読んでみた
私自身が利用することで見てきた障害者就労支援事業は、数年前からいわゆる流行りのビジネスと化しており、今もSNSなどでは、年商〇千万円稼げる安定のビジネス!市場規模〇億円の成長産業!などを謳い、フランチャイズ加盟を呼びかけるバナー広告が嫌というほど掲載されています。
中身がなく金儲けを先行した素人が福祉業界に参入すると、業界は有象無象がひしめき合う状態となり、それによって支援の質の低下という弊害が引き起こされることは容易に想像できると思います。
残念ながらその弊害によって、私がお伺いしてきた精神障害の方々の苦い体験談につながっていることは否めません。
そういった苦い体験談を伺えば伺うほど福祉って本当にこれでいいの?という問いが深まっていく。
その問いへの答え探しは途方もない旅となるでしょう。
そんな旅路の途中で出会ったこの本は、私の問いがそのまま本のタイトルに冠されていて、それだけで思わず手に取ってしまうほど強いインパクトを受けました。
自問自答こそ寄り添いと自己研鑽の源
世の中には「自己研鑽」を積み、「寄り添い」の気持ちを持って利用者に接することが真の福祉に対する姿勢だとする、まっとうな精神論を説いた福祉関連の書籍は数多あると思います。
中には名著と呼ばれるものもあるでしょう。
しかし、学者先生方が書いた現場感覚が希薄な精神論と違って、この本には著者金原知宏氏が長いこと第一線で活躍している支援員だからこそ経験した様々な事例はもちろんのこと、葛藤や挫折の時の感情や自問など人間臭い部分も克明に記されています。
このような自問の言葉は、改めて支援する側もされる側もまぎれもない生身の人間であるということを思い出させ、金原氏の自答がすべて寄り添いの行動につながっているのだと理解できます。
すなわち自問自答こそ寄り添いと自己研鑽の源であると教えてくれているのです。
すべての福祉従事者が金原氏と同じマインドを持つことは難しいかもしれません。
しかし、金儲け先行主義やプロ意識の低さは利用者へのしわ寄せとして弊害になっている現状を憂いている私としては、少しでも多くの福祉従事者がこの高みを目指してくれることを願います。
エッセイのようなタッチで読みやすく、気軽に読み進めることが出来るのも魅力。
福祉に携わる方をはじめ、現在の福祉施設の支援に違和感や疑問を感じている障がい者の方、そして、そのご家族など多くの方々におススメしたい一冊です。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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