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僕は看護師の仕事をしていて泣きたくなる瞬間がたくさんある

僕は看護師として働いています。
僕は、この仕事をしている中で泣きそうになる瞬間がたくさんあります。

僕がいま、働いている病棟はリハビリ専門の病棟です。
急性期の治療を終えて、生命の危機的な状況から脱した患者さんが次のステップとして自宅や施設等に帰るための機能訓練などを行なっていくことを主としている病棟です。


以前までの僕は、急性期の病棟で働いていました。
手術を受ける患者さんや抗がん剤治療を行う患者さんがいる病棟での勤務でした。

オペ前から患者さんやそのご家族と関わって、その不安や恐怖に寄り添って
そこからオペ後の痛みや、身体の変化に戸惑っている姿に寄り添い
そしてそれらを乗り越えていく患者さんたちを支えてきました。

僕は看護師の仕事にとてもやりがいを感じています。
不安でいっぱいだった患者さんが、辛くて苦しくて泣いていた患者さんが、笑顔になって退院していく姿を見送るのは本当に言葉に表せられないくらいの嬉しさだったり、心の奥がじんわりとあったかくなるようなそんな感覚があります。

だけど、必ずしも治療を受けたみなさんが元気になって帰っていくわけではありません。
病院で最期を迎える方もたくさんいらっしゃいます。






「最期は、苦しまずに逝ったんでしょうか」




ご家族の方からこんな質問をいただく機会が多かったように思います。


そんなご家族に対して僕は



「きっと、最期は苦しくなかったと思いますよ。」


そう、短くお伝えして
ご本人の手を握っていただき
そして静かにその場を離れて
ご家族の時間を過ごしていただくようにしていました。


医師の死亡確認を終えたあと
一人の人が亡くなるという
とても感情が大きく揺さぶられるような
出来事があったにも関わらず

病棟は忙しく動き続いていて
言葉が適切ではないかもしれませんが
悲しんでいる暇なんてないくらいに
毎日が忙しかったです。


僕は、啜り泣く家族の声をきいて
たくさんの人の最期の瞬間に立ち会っていく中で

僕の看護は正しかったのかと
あの瞬間に僕はご家族にどんな言葉をかけることができればよかったのかと

自問自答する瞬間がたくさんありました。

そして僕はいつも
涙が出そうになるのを堪えていました。


僕は看護師で、プロとしてこの場にいて
そんな僕がご家族を差し置いて
悲しんでいていいわけがない
泣いていいわけがない

そんなふうに思っていました。

だけど、時々家に帰ってから泣いてしまうことがありました。
人の死を目の当たりにして、その死を悲しんでいる人たちを目の前にして
僕は一人の人間として、一人の看護師として
何もできない無力さを感じていました。

そんな日々の中で、僕は今の仕事は
僕には向いていないんじゃないかなと考えるようになりました。


向いていないというよりも、もっと自分が自分らしく
生き生きとした働き方ができる場所があるんじゃないかと
そんなふうに考えました。


そして僕は6年勤めた職場を退職し、今の職場へ転職しました。冒頭でもお話ししたようにいま僕はリハビリ専門の病棟で働いています。

今の働き方を選んだ理由は、患者さんとの時間をよりたくさん持てて、尚且つ笑顔で未来の話しを患者さんやそのご家族とできる時間をよりいっぱい持てるんじゃないかと思ったからです。


実際に転職をしてみて、急性期の病棟と比較すると仕事量にも余裕があり
患者さん自身の気持ちにも余裕があり
比較的ゆったりとした雰囲気で仕事ができているように思います。

また急性期のような生命の危機的状況や人の死と向き合う時間はほとんどなくなって
僕自身も気持ちに余裕が持てたように思います。


僕は、業務の合間で暇さえあれば患者さんのベッドサイドに行くようにしています。
ゆっくりと今の思いや今後の不安を聞き、寄り添える時間を少しでも増やしたいと思いながら仕事をしています。


昨日、僕の担当の患者さんが退院していきました。
僕は退院前に患者さんと必ず対話の時間を設けるようにしています。

患者さんの気持ちをお聞きすることはもちろんですが
僕自身の思いをしっかりとお伝えするようにしています。




ここに来たときは、スタッフ二人に抱えられてやっとの思いで車椅子に乗り移りをしているような状況で、お互いに大変でしたね。
痛みで一人で起き上がることもできなかったのに
今はちゃんと自分で歩けている

毎日毎日、弱音を吐きながらも
頑張っている姿を見て
僕自身も一緒に頑張ろうという気持ちになれました

退院後は新しい施設での生活で
不安なことはたくさんあると思うけど
だけどきっと大丈夫です。

〇〇さんの人柄なら大丈夫。
どこでもちゃんとうまくやっていけます。

僕が太鼓判を押しますよ。

くれぐれも無理はせずに
いつでも安全に慎重に
転ばないように気をつけてくださいね
シルバーカーのブレーキは絶対にちゃんと止めてくださいね

お食事もしっかり食べて
大変なことや困ったことは施設の人やご家族にちゃんと相談して
一人で抱え込まないようにしないでくださいね。

本当はまたお会いしたいけど
でもここに戻って来られたら困るので
またねとは言いませんよ。

どうかお元気で。
お身体に気をつけてね。



僕はいつもこのときに泣きそうになります。
患者さんが一生懸命に頑張ってきた姿を近くで毎日見てきたからこそ
無事に退院できたことが本当に本当に嬉しいんです。



私は泣かないわ。
別れは笑顔でって決めてるの。
ひろトさんと会えてよかったわ。
あなたがいたから頑張れた。
不安だけど頑張るわね。
ありがとう。



涙を目に溜めながら
患者さんもそんなふうに僕に言ってくれました。


あなたがいたから頑張れた


これ以上の嬉しい言葉ってないなって思います。
僕は、こうやって次の人生に向かって
病気と向き合いながらも毎日不安と闘いながら頑張っている人たちの背中を押してあげることができる
今の仕事が大好きです。


僕はやさしい看護師になりたい。


これは僕が看護師を志したその頃から変わらない
大事な大事な僕の看護の目標であり
看護観でもあり、僕の行う看護の軸になっている思いです。


僕は今日も患者さんにとってやさしい看護師だったのだろうかと
毎日、自問自答しながら
看護師として働いています。

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