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Pretty Hot

アジアの料理を食べる機会が地元ではほぼ無い。そのため仕事よりも切実かつ充実した気持ちで朝鮮半島の料理に向き合う自分がいる。韓国に出張した時、現地の取引先の方に連れて行って頂いたお店の味も忘れられないが、アメリカで食べるそれらの味は、その希少さやありがたさも相まって、本場で食べるものよりも美味しく感じるのは私だけだろうか。栄養と旨みをしっかり摂取している気がして、複雑で奥深い風味の食事をアメリカンサイズで摂取すると、しばらくは日本食への恋しさも忘れさせてくれる。

出張で都会に行った。用事は全て済ませた。2月に来た時ネットで調べて見つけ、また来ようと決めていた参鶏湯専門店へ向かう。前に来た時隣にいたイカつめのおじさんが美味しそうに食べていたイカと豚肉の甘辛鉄板焼き。あまりにいい香りだったのを忘れられず、参鶏湯専門店で参鶏湯以外を頼むという究極の選択をした。

鉄板の上でイカと豚肉が胡麻油とコチュジャンで甘辛く炒められている。店員さんが仕上げの炎で香ばしさと風味を増幅する。熱々のイカと豚をサンチュでくるみ、辛子味噌をちょっとつけ、一口で頬張る。タウリンとビタミンと幸せが身体の隅々まで行き渡る。野菜で包むことで手も汚れないし栄養バランスも良い。辛さも中和される。なんて素晴らしい発明なんだろう。包みきれない辛さと熱さが相まって、汗が噴き出る。それがまた良い。

遠く離れた異国で、故郷の食事に支えられながら、理由は様々この国で生き抜いてきた人達の人生に思いを馳せると、涙も出そうになった。仕事よりも数倍真摯に食事に向き合っていると思う。

一通り食事を済ませ、店を出ると衝撃の事実に気がついた。専門店と思っていた参鶏湯屋さんは実はお隣のお店で、私が数ヶ月間楽しみにしていたお店は普通の食堂だった。ネットでのお店選びには真摯さが欠けていたが、食堂の料理は最高に美味しかったので良しとしよう。栄養も補給できたと思う。今度は隣の参鶏湯専門店に行くために、都会へ出張する口実と理由を頑張って作りたい。

栄養補給の後、灼熱の荒野をひたすら走り家にたどり着くといつものチビが待っていてくれた

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