【疾病(病気)の発⽣ 陰陽失調】中医基礎理論
今回は疾病の発生の原因の一つである陰陽失調に関する解説を行っていきます。
陰陽失調に関する解説
1. 陰陽の基本概念
陰陽の関係
陰陽は万物の対立と調和を示す中医学の基本原理であり、人体の機能を説明する基盤となります。
陰:静的、冷やす、内側、抑制を象徴。
例:身体の滋養や安定を保つ(血液、津液など)。
陽:動的、温める、外側、活性を象徴。
例:代謝や活動を推進する(気、熱エネルギーなど)。
平衡が健康の基盤:陰陽は互いに補完し合い、調和が保たれることで健康が維持されます。
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陰陽の変動
陰陽は固定的ではなく、常に変化しながら動的な平衡を保っています。
例:昼(陽)と夜(陰)、運動後の休息(陽から陰)など。
許容範囲を超える変動があると、疾病の原因になります。
2. 陰陽失調のタイプと特徴
陰陽失調は4つの主要なパターンに分類されます:
1. 陰陽偏盛(過剰)
陽盛(陽気が過剰)
症状:発熱、口渇、顔の紅潮、便秘、イライラ、不眠。
原因:炎症、ストレス、熱邪の侵入。
対策:清熱解毒(例:黄連解毒湯)。
陰盛(陰気が過剰)
症状:手足の冷え、寒気、顔色の蒼白、下痢。
原因:寒邪の侵入、冷たい食物の過剰摂取。
対策:温陽散寒(例:桂枝湯、附子湯)。
2. 陰陽偏衰(不足)
陽虚(陽気が不足)
症状:疲労感、冷え性、むくみ、下痢、低体温。
原因:慢性疲労、寒冷環境の影響、過労。
対策:補陽温経(例:補中益気湯、真武湯)。
陰虚(陰気が不足)
症状:ほてり、のぼせ、乾燥(皮膚、口、喉)、不眠。
原因:過労、慢性病、熱性疾患後の回復不全。
対策:滋陰補虚(例:六味地黄丸、知柏地黄丸)。
寒熱症状としての表れ
陽盛または陰虚 → 熱症状(実熱または虚熱)。
陰盛または陽虚 → 寒症状(実寒または虚寒)。
3. 陰陽失調の病態と具体例
(1) 陽気の亢進 または 陰気の不足 → 熱症状
病態:
陽が過剰または陰が不足すると、身体の温める力が過剰になり、熱症状が現れます。
具体例:
高熱、便秘、口の渇き、心悸亢進。
ストレスや過労によるイライラ、不眠。
治療例:
清熱薬:炎症を抑える(黄連解毒湯、白虎湯)。
滋陰薬:陰を補充して熱を抑える(六味地黄丸)。
(2) 陰気の亢進 または 陽気の不足 → 寒症状
病態:
陰が過剰または陽が不足すると、身体の冷却力が増大し、寒症状が現れます。
具体例:
手足の冷え、冷え性、下痢、倦怠感。
慢性疲労によるむくみ、低血圧。
治療例:
温陽薬:身体を温める(真武湯、附子湯)。
補陽薬:陽気を補充する(補中益気湯)。
4. 陰陽失調のメカニズム
外因:外部環境の影響(寒邪、熱邪、湿邪など)。
例:季節の変化による冷え症や熱中症。内因:感情や生活習慣の乱れ。
例:ストレス(肝陽亢進)、睡眠不足(陰虚)。不内外因:栄養不足、過労、年齢による変化。
例:老化による陽虚、慢性病による陰虚。
5. 陰陽失調と自律神経の関連性
交感神経と陽、 副交感神経と陰:
陰陽のバランスは自律神経の働きに類似。
交感神経優位 → 陽盛 → 熱症状(動悸、不眠)。
副交感神経優位 → 陰盛 → 寒症状(冷え、疲労感)。
ストレス過剰で交感神経が優位になると、陽が亢進し、熱症状や高血圧が発生します。
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6. 陰陽失調の治療原則
バランス回復を目指す
陰が不足すれば補陰、陽が不足すれば補陽。
過剰な場合は、抑える(清熱や散寒)。
全体的視点で診断する
症状だけでなく、患者の体質や生活環境も診断に含める。
漢方薬の活用
熱を抑える薬(黄連解毒湯、白虎湯)。
寒を温める薬(真武湯、附子湯)。
陰陽を補う薬(六味地黄丸、補中益気湯)。
7. 陰陽失調に対する養生法
食養生:
陰を補う:スイカ、梨、山薬(ヤマイモ)。
陽を補う:ショウガ、ニンニク、ラム肉。
陰陽調和を促進する:バランスの良い食事。
運動:
激しい運動は陽を高め、穏やかな運動は陰を養う。
太極拳やヨガは陰陽の調和を整えるのに適している。
生活習慣:
規則正しい生活を送ることで、陰陽のリズムを整える。
季節に応じて衣食住を調整する。
感情のコントロール:
肝(感情の調節を司る)が陰陽失調に影響を与えるため、ストレスを軽減する。
まとめ
陰陽失調は、陰陽のバランスが崩れることで発生する病態であり、寒熱の異常や体質的な偏りとして現れます。中医学では、症状の背景にある陰陽の不均衡を見極め、全人的なアプローチで治療を行います。同時に、食事や生活習慣、感情の安定を通じた養生法を取り入れることで、陰陽の調和を図り、根本的な健康を目指します。