【ストレスと子宮筋腫・子宮内膜症】中医婦人科学

子宮筋腫・子宮内膜症における「気滞」の詳細解説

1. 気滞とは

中医学的定義

  • 気滞は「気の巡り」が滞ってしまう状態を指します。

    • 気は体内をめぐるエネルギーの流れであり、これが滞ると痛みや不調が生じます。

    • 特にストレスや精神的緊張が原因となることが多く、現代社会において非常に多く見られる病態です。

発症の仕組み

  • ストレス: 長期的な緊張や精神的負担は、気の流れを妨げる主因となります。

  • 生活習慣: 運動不足や食事の乱れが気滞を悪化させます。

  • 外部環境: 天候の変化や冷えも関与します。

子宮筋腫・内膜症との関連

  • 子宮筋腫: 気滞が進行すると血流が滞り、瘀血(おけつ)を形成します。これが筋腫の成長を助長することがあります。

  • 子宮内膜症: 気滞により生理痛や月経異常が増悪し、症状の重症化につながります。

2. 主な症状

  • 腹部の膨満感: 特に下腹部に張りを感じるが、押すと柔らかく移動することが特徴。

  • 痛みの変動:

    • 痛みが一定しないことが特徴で、場所や強さが変わりやすい。

    • 生理前に胸が張る、下腹部が重い、ガスが溜まるなど。

  • 精神面: イライラや不安感が強くなる。

  • 気滞特有のサイン: 生理前の胸の張り、溜まったガス、周期的な頭痛など。

3. 中医学的治療法

治療の基本方針

  • 気を巡らせて滞りを解消することが第一。

  • 症状が進んで瘀血(おけつ)が絡む場合には、瘀血を改善する治療も組み合わせる。

主な漢方薬

  1. 逍遥顆粒(しょうようかりゅう)

    • ストレスを和らげて気を巡らせる作用が強い。

    • 特に精神的負担が大きいタイプの気滞に適応。

  2. 血府逐瘀丸(けっぷちくおうがん)

    • 瘀血を改善しつつ気の巡りをサポートする。

    • 筋腫や内膜症が進行している場合に有効。

養生法

  1. 食事療法

    • 推奨される食材:

      • 香りの良いもの: セロリ、春菊、バラ茶(玫瑰花)。これらは気の流れを良くし、リラックス効果もある。

      • 鉄分豊富な食材: レバー、ほうれん草。気血を補い、疲れを軽減する。

    • 避けるべき食品:

      • 冷たい飲食物や脂っこい食品。これらは気の流れを妨げる原因となる。

  2. 適度な運動

    • ウォーキングやヨガ、軽いエクササイズが効果的。特にウォーキングは「気滞改善の王道」とされる。

    • 深呼吸を伴う運動で、溜まった気を体外に排出する。

  3. ストレスマネジメント

    • ストレス発散の方法を複数持つことが重要。

      • 趣味、音楽鑑賞、アロマテラピー(ネロリやオレンジフラワー)。

    • 仕事や子育てのストレスが軽減できない場合でも、小さなリフレッシュ手段を取り入れる。

4. 薬膳とハーブの活用

薬膳食材

  • 玫瑰花(まいかいか): バラの花を乾燥させたもの。気血を巡らせ、香りが心を和らげる効果も。

    • 飲み方: バラ茶、バラの香りの紅茶など。

  • 代代花(だいだいか): オレンジフラワーとして知られる。緊張を和らげ、腹部の張りを改善。

    • 飲み方: オレンジフラワーのハーブティー。

具体的な取り入れ方

  • 食事にセロリや春菊を使った温かいスープを加える。

  • バラ茶など香りのよい飲み物飲み、気の巡りをサポート。

5. 子宮筋腫・内膜症における気滞改善の重要性

気滞が症状を悪化させるメカニズム

  • ストレスや生活習慣の乱れにより気滞が進行すると、血流が滞り瘀血を形成。

  • 瘀血が進行することで筋腫や内膜症の症状が悪化しやすい。

改善の効果

  • 気滞を解消することで、血流が改善し、月経痛や生理不順が軽減。

  • 子宮筋腫や内膜症の進行抑制に寄与。

6. 気滞改善のための実践例

  1. 日常生活での工夫

    • 朝に10分程度の散歩を取り入れ、気を巡らせる。

    • 食事にバラ茶や香りの良い食材を取り入れる。

    • 深呼吸を意識して、気を体外に吐き出す。

  2. ストレス解消の方法

    • お気に入りの音楽を聴く。

    • 趣味に没頭する。

    • アロマを用いたリラクゼーション。

結論

気滞はストレスや緊張が大きく関与する現代人に多い病態で、子宮筋腫や内膜症の発症や症状悪化に密接に関わっています。適切な漢方薬や養生法、食事療法を組み合わせることで、気滞の改善が期待できます。

「気滞を整えることで全身のバランスが取れる」という考えを基に、中医学的なアプローチを実践することが、子宮筋腫や内膜症のケアに有効です。

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