【辛いものが食べたい時の症状やおすすめ】食養生薬膳
今回は秋の五味「辛味」について、中医学的に解説します。辛味には特有の作用があり、適量を摂取することで、秋の季節に合わせた健康管理が可能です。
1. 辛味入肺(しんみにゅうはい)
中医学では辛味が「肺に入る味」とされ、肺に影響を与えることで知られています。「入肺」という表現は、辛味が肺経(肺の経絡)を通じて体に作用することを指し、辛味が肺の働きを助けるとされています。肺は呼吸器系だけでなく、皮膚や大腸とも密接な関係があり、辛味の食材を摂ることで肺の通りが良くなり、呼吸器や皮膚、大腸に良い影響を与えます。
2. 辛味の主な効能
発散作用:辛味は発散の力が強く、体を温め、汗をかくことで邪気を追い出す作用があります。特に風邪の初期に辛味を摂ることで、風邪の原因となる外邪(外部の邪気)を体外へ追い出し、体を守ります。生姜やネギ、紫蘇などの辛味食材は、風邪の初期症状や鼻づまりを和らげるのに役立ちます。
行気と活血:辛味は気の巡りを良くし、血流を促進します。この働きは、体の冷えを防ぎ、特に秋の寒さが増す時期に体温を調節するのに役立ちます。血行を良くすることで、秋に感じやすい疲労感や倦怠感を軽減し、体のエネルギーを活発にします。
開胃(かいい):辛味には消化を助け、食欲を増進する効果があります。秋は、気温が下がることで胃腸の働きが強化され、食べ物をしっかり消化できる季節です。辛味が胃を刺激し、消化力をさらに高めるため、適量の辛味は食欲を促進し、消化不良を防ぐサポートになります。
3. 辛味の取り過ぎに関する注意
秋の乾燥した気候は、肺を傷つけやすく、特に辛味の発散作用が過剰になると、肺とその関連部位にダメージを与える可能性があります。たとえば、辛味の摂りすぎは次のような影響を引き起こす可能性があります。
肺の過剰な発散と乾燥:辛味は発散の力が強く、乾燥した季節に摂りすぎると、体の潤いが奪われすぎて、逆に肺の潤いが不足してしまいます。肺の乾燥は咳、のどの痛み、肌の乾燥など、さまざまな不調を引き起こします。
相克関係による肝への影響:中医学では五行の関係により、肺は肝を制御し、辛味の摂りすぎは肝の機能にも悪影響を与える可能性があります。特に辛味を摂りすぎると肝のエネルギーを消耗させ、足がつる、筋肉が引き攣るなどの症状が現れやすくなります。また、辛味の多い食事は情緒の乱れを引き起こすことがあり、気象の荒い地域で辛味が好まれることが多いのも、このような特性が関係していると考えられます。
4. 油と潤いのバランス
秋は、乾燥した気候のため、適度に良質な油を摂ることが皮膚や髪の潤いを保つのに役立ちます。秋は一年で最も胃腸の働きが良くなる季節とされており、少量の揚げ物やオイルを含んだドレッシングなどが消化を促進し、乾燥の影響を和らげます。以下のポイントを参考に、秋の食生活に適切な油を取り入れることが推奨されます。
適量の油で潤いを補う:揚げ物や炒め物は、秋の乾燥に対する良い対策となります。乾燥による肌のカサつきや便秘の予防に役立つほか、良質な油分は皮膚や髪の潤いを保つ効果があります。これにより、秋にありがちな乾燥肌や髪のパサつきを防ぐことができます。
潤いを補うドレッシング:秋には潤いを保つために、酸味と甘味を組み合わせたドレッシングを取り入れると良いでしょう。たとえば、レモンと蜂蜜をオリーブオイルと合わせたドレッシングは、潤いを保つのに効果的です。秋に旬を迎えるきのこを使ったホットサラダに、このようなドレッシングをかけることで、潤いと油分のバランスが整います。
5. 適度な辛味を意識した薬膳の組み合わせ
辛味は、秋に適した食材とバランスよく組み合わせることで、健康的な効果が期待できます。たとえば、発散作用のある辛味の食材を温かいスープに取り入れると、身体を温めつつ、気の巡りを良くする効果が得られます。さらに、酸味や甘味と組み合わせて潤いを補うことで、辛味の発散作用を和らげ、乾燥を防ぐことができます。
例:酸味と甘味を含んだドレッシングをホットサラダに使用し、潤いを補う。こうした料理には、きのこや山薬(ヤマイモ)、百合根など、体を潤しつつ補肺の効果がある食材を取り入れると良いでしょう。
6. 乾燥対策とダイエットのバランス
秋は食欲が増しやすい季節で、体も乾燥しやすいため、無理なダイエットは逆効果になりがちです。脂肪を過度に制限すると、肌や髪が乾燥し、便秘を悪化させることがあります。秋には乾燥から体を守るための脂肪や油が必要ですので、バランスを重視した健康的なダイエットが重要です。