【生理痛の痛みの種類】中医婦人科学
今回は月経痛(生理痛)の中医学的な考え方を説明します。中医学では月経痛を「気血の不調と捉え、身体のエネルギー(気)や血液の流れがどのように影響しているかに着目して原因を探ります。月経痛は主に「滞りタイプ」と「不足タイプ」に分けられ、それぞれに特徴的な症状や痛みのパターンがあります。
1. 滞りタイプ
滞りタイプの月経痛は、身体の中で「気」や「血液」の流れが悪くなることが原因です。この状態では、血液や気が停滞し、痛みが発生します。
(1) 気滞血瘀(気の巡りと血の巡りが悪い)
原因: ストレスや感情の乱れ、生活習慣が原因で気の流れが滞り、それにより血行不良が起き、血の巡りが悪くなります。
症状:
痛み: 強い鈍痛や刺すような痛み、張った感じ。痛みは下腹部に集中し、圧迫すると痛みが増すことが多いです。
特徴: 痛みが鋭く、時には血塊を排出することで楽になることもあります。痛みが長時間続くことが多く、圧迫や温めると一時的に楽になることがあります。
治療: 気の巡りを改善するために、気を流す薬草やマッサージ、鍼灸治療が有効です。また、血行促進のための薬や食事療法も有効です。
(2) 寒湿凝滞(寒さと湿気が血の流れを妨げる)
原因: 寒さや湿気が体内にこもり、特に下腹部や骨盤に冷えが生じ、血液の流れを滞らせます。このタイプは、特に冷え性の女性に見られることが多いです。
症状:
痛み: 下腹部の冷えを伴う鈍痛、寒さを感じる痛みが特徴です。冷たい飲み物や湿気の多い環境で痛みが悪化します。
特徴: 冷えや湿気によって、痛みが緩和されず、むしろ悪化することがあります。温めると痛みが軽減するため、温熱療法が有効です。
治療: 温めることが重要で、温かい食事や漢方薬を用いて体内の寒さを取り除き、湿気を排出する治療が必要です。
(3) 湿熱瘀阻(湿気と熱が血の流れを妨げる)
原因: 湿気と熱が結びつき、体内で血流を滞らせることから、特に夏季や湿度が高い環境での月経痛に見られます。消化不良や脂っこい食事が影響を与えることもあります。
症状:
痛み: 強い圧迫感や膨満感があり、痛みが鈍くて広範囲にわたることが多いです。
特徴: 疲労感やだるさ、過剰な発汗、顔や体にニキビができやすいなど、湿気や熱の影響が現れることもあります。
治療: 湿気と熱を冷ます薬草を使用し、体内の湿気を取り除くことが重要です。冷たい食事や飲み物を控え、さっぱりとした食生活を心がけることが推奨されます。
2. 不足タイプ
不足タイプの月経痛は、気や血が不足していることが原因です。この状態では、身体のエネルギー(気)や血液の供給が不十分なため、月経痛を引き起こします。
(1) 気血両虚(気と血の不足)
原因: 長期間の過労や栄養不足、ストレスなどが原因で、気と血の両方が不足し、月経痛を引き起こします。
症状:
痛み: 腰や下腹部に軽度の鈍痛や不快感が感じられ、痛みが常にあるわけではなく、しばしば疲れやすさや倦怠感を伴います。
特徴: 押さえると楽になる場合があり、圧迫感よりも「鈍い痛み」が特徴的です。月経量が少なく、貧血の兆候が見られることもあります。
治療: 気と血を補うための薬草を使用し、栄養価の高い食事や適切な休息が必要です。気と血を補うためには、鍼灸やマッサージも有効です。
(2) 肝腎不足(肝と腎の力が弱い)
原因: 肝と腎が弱くなることで、月経周期が乱れやすく、月経痛が慢性化します。特に加齢や過度の精神的ストレスが原因となることが多いです。
症状:
痛み: 鈍い痛みが下腹部から腰まで広がり、月経の前後に特に痛みが強くなることがあります。冷えや疲れが原因で痛みが増すこともあります。
特徴: 月経不順や過多月経、腰痛、耳鳴り、めまいなど、肝腎の力が弱くなることで身体全体のエネルギーが低下します。
治療: 肝と腎を補う薬草や食事療法を用い、体全体のエネルギーを強化する治療が必要です。特に安定した生活習慣や精神的な安定を保つことが重要です。
月経痛の痛みの特徴
痛みの性質(鋭い痛みや鈍い痛み)、発生時期(痛みが月経の開始時に強い、終了時に強いなど)、痛みを和らげる方法(温める、抑える)、痛みがどこに現れるか(下腹部、腰など)は、月経痛の診断において非常に重要な情報です。
実痛(滞りによる痛み): 強い、刺すような痛みや鈍痛で、押すと痛みが強くなる。張りを感じる。
虚痛(不足による痛み): 痛みが軽く、抑えると楽になる。身体が疲れやすく、痛みが長引くことがある。
熱痛(熱が原因の痛み): 刺痛や灼熱感があり、温めると痛みが悪化します。
寒痛(寒さが原因の痛み): 温めることで痛みが軽減するが、冷感を感じやすいです。
これらの痛みの特徴を理解することで、月経痛のタイプを特定し、それに適した治療法を選択することができます。