【子宮筋腫・子宮内膜症の中医学的解説】中医婦人科学
中医学的に見る子宮筋腫・子宮内膜症の詳細解説
1. 中医学における子宮筋腫・子宮内膜症:癥瘕(ちょうか)の概念
1.1 癥瘕(ちょうか)とは
定義
癥瘕は女性の下腹部(子宮)に現れる塊を指し、痛み、張感、膨満感などを伴う症状群を表します。症状が進行すると、出血や不妊が見られる場合もある。
現代医学での「子宮筋腫」「子宮内膜症」「生殖器の腫瘍」などに相当。
1.2 癥と瘕の違い
癥(ちょう)
固い塊で、固定され動かない。
押しても形が変わらず、痛みの場所も一定。
主に「血瘀(血の滞り)」が原因。
瘕(か)
柔らかい塊で、動くことがある。
押すと形が変わったり、痛みの場所が変わる。
主に「気滞(気の流れの滞り)」や「痰湿(余分な水分)」が原因。
癥瘕
癥と瘕を区別することは難しいため、総称して「癥瘕」と呼ぶ。
2. 子宮筋腫・子宮内膜症の中医学的原因
2.1 気滞血瘀(きたいけつお)
原因
ストレス、過労、感情の抑圧による「肝気鬱結」。
気の流れが滞り、血液循環が悪化する。
メカニズム
気の滞りが血瘀(血の滞り)を引き起こし、塊を形成。
症状
下腹部の張り感や痛み。
月経痛、過多月経、不正出血。
2.2 正気虚弱(せいききょじゃく)
原因
体質の弱さ(先天的な虚弱体質)や、慢性的な疲労、不適切な食事。
メカニズム
体のエネルギー不足により邪気を排除できず、血瘀や痰湿が生じる。
症状
倦怠感、冷え、顔色不良。
過多月経や不妊。
2.3 痰湿内阻(たんしつないそ)
原因
脾胃の機能低下、脂っこい食事や冷たい飲食物の摂取、運動不足。
メカニズム
脾胃の弱りにより痰湿(余分な水分や脂肪)が体内に蓄積し、塊を形成。
症状
下腹部のだるさ、膨満感。
肥満傾向、手足の冷え、むくみ。
2.4 寒邪侵襲(かんじゃしんしゅう)
原因
冷え(寒邪)の影響や寒冷環境での長時間滞在。
メカニズム
寒邪が血液の循環を妨げ、血瘀を形成。
症状
冷えを伴う下腹部痛。
月経血が暗赤色で塊が多い。
2.5 湿熱下注(しつねつかちゅう)
原因
食べ過ぎ、アルコール、甘いものや脂っこい食べ物の摂取。
メカニズム
湿熱が生じて血液や経絡を阻害し、炎症や腫れを引き起こす。
症状
熱感を伴う下腹部痛。
黄色いおりもの、不快感、強い月経痛。
3. 子宮筋腫・子宮内膜症の中医学的治療方針
3.1 治療の基本方針
活血化瘀(かっけつかお):血行を促進し、瘀血を除く。
理気解鬱(りきげうつ):気の流れを整え、ストレスを緩和。
化痰除湿(けたんじょしつ):痰湿を取り除き、血行を改善。
温経散寒(うんけいさんかん):寒邪を取り除き、血行を促進。
清熱利湿(せいねつりしつ):湿熱を取り除き、炎症を抑える。
3.2 主な漢方処方
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
適応:瘀血による塊、月経困難症、過多月経。
作用:血の滞りを取り除き、血行を改善。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
適応:気滞、ストレスが原因の婦人科疾患。
作用:気の流れを整え、ストレスを緩和。
温経湯(うんけいとう)
適応:冷えを伴う月経異常、不妊症。
作用:血行促進、冷えの改善。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
適応:血虚(血液不足)や冷えが原因の婦人科疾患。
作用:血液の生成を促進し、冷えを改善。
清熱湯(せいねつとう)
適応:湿熱による炎症や腫瘍。
作用:熱と湿を取り除き、炎症を抑える。
4. 子宮筋腫・子宮内膜症の生活習慣改善
4.1 冷え対策
温かい飲食物を摂取(お湯、生姜湯)。
冷房や薄着を避け、適切な保温を行う。
4.2 食事管理
脾胃を養う食材を選ぶ(山薬、蓮子、赤小豆)。
冷たい飲食物、脂っこい料理、甘いものを控える。
4.3 運動
適度な運動(ウォーキング、ヨガ)で血流を促進。
長時間の座りっぱなしを避ける。
4.4 ストレス管理
瞑想や深呼吸でリラックス。
趣味を楽しむ時間を作る。
5. 子宮筋腫・子宮内膜症に関する中医学的まとめ
中医学では、子宮筋腫や子宮内膜症を「癥瘕」として捉え、気滞、血瘀、痰湿、寒邪、湿熱などを原因として考えます。
治療は、患者の体質や症状に合わせて弁証論治を行い、漢方薬や生活習慣の改善を通じて根本的な体質改善を目指します。
定期的な観察や個別対応により、症状の緩和や健康維持が期待できます。