【血の滞りと子宮筋腫・子宮内膜症】中医婦人科学
子宮筋腫・子宮内膜症における瘀血(おけつ)の詳細解説
瘀血は、血液が体内でスムーズに巡らず、滞った状態を指します。この状態は多くの婦人科疾患と関連し、特に子宮筋腫や子宮内膜症において重要な治療目標となります。
瘀血の特徴と形成要因
瘀血は以下のような特徴と要因で形成されます:
血の滞り:
血液が体内でスムーズに巡らないため、身体の特定部位に停滞します。
冷えや気滞(ストレスなどで気の流れが悪くなる状態)が長引くと瘀血を助長します。
形成要因:
冷え: 冷たい環境や飲食物が血液の流れを遅くします。水が冷えると氷になるように、体を冷やすことで血流が滞り、瘀血が形成されます。
気滞: 精神的ストレスや緊張によって気の巡りが悪くなると、それに伴って血の巡りも悪化し瘀血が発生します。
瘀血の症状
瘀血の代表的な症状は以下の通りです:
塊状の痛み:
固くて移動しない塊が存在する。
「刺痛」といわれる、針で刺されるような鋭い痛みがある。
痛む箇所が明確で、触ると痛みが強まる場合もある。
月経関連症状:
月経痛がひどい。
経血量が増える。
月経周期が長くなる。
全身症状:
肩こりや首のこり。
顔色が暗く、くすんだように見える。
口が乾燥するが、水分を取りたいと感じない。
季節性の悪化:
冬など寒い季節に生理痛が悪化しやすい。
瘀血の治療法
瘀血を改善するためには、血の巡りを良くする「活血化瘀」(かっけつかお)が基本となります。
漢方薬による治療:
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):
瘀血を改善し、子宮筋腫や内膜症による塊や痛みを和らげる効果がある。
消癥(しょうちょう):体内の塊を消す作用がある。
田七人参(でんしちにんじん):
瘀血を改善しつつ、止血作用もある珍しい生薬。
外傷や炎症、手術後の血行不良にも有効。
養生法によるサポート:
運動:
血液循環を促進するために軽い運動を推奨。ストレッチやウォーキングが最適。
※気虚(エネルギー不足)を併発している場合は、激しい運動は避ける。
温熱療法:
身体を冷やさないようにし、特に月経中や産後は冷え対策を徹底する。
シナモンや生姜入りの紅茶など、体を温める飲み物を摂取する。
瘀血の養生法
瘀血を改善するためには日常的な養生が重要です。以下の方法を取り入れることで効果的なサポートが期待できます:
食事療法:
推奨食材:
玉ねぎやラッキョウなどのネギ類:血液循環を改善。
青魚(サバ、イワシなど):オメガ3脂肪酸が瘀血を改善する。
シナモンや生姜:体を温め、血行促進。
注意点:
冷たい飲み物や生ものは避ける。
食事は温かい状態で摂取することが基本。
運動療法:
定期的な運動で血流を改善。
激しい運動ではなく、ストレッチやヨガ、ウォーキングを取り入れる。
服装と環境管理:
足元や腰回りを冷やさない工夫が必要。
寒い季節には靴下や腹巻を着用。
短いスカートや薄着は避ける。
瘀血が引き起こす影響
瘀血が長期間続くと、以下のような影響を及ぼす可能性があります:
子宮筋腫や内膜症の悪化。
慢性的な肩こりや首のこり。
月経関連症状の重症化(経血量の増加や激しい痛み)。
全身のだるさや疲労感の増加。
瘀血改善のポイント
冷えを防ぐ:
体を温める飲み物や食事を取り入れる。
冬場は特に体を冷やさないように注意。
ストレス管理:
ストレスは瘀血を悪化させる要因になるため、適度なリラクゼーションを取り入れる。
早期対応:
瘀血による症状が現れた際は早めに漢方や生活習慣の改善に取り組む。
結論
瘀血は子宮筋腫や子宮内膜症の重要な病態要因であり、適切な治療と養生が必要です。漢方薬を用いた活血化瘀に加え、生活習慣の見直しを行うことで、症状の軽減と根本的な改善が期待できます。特に、体を冷やさないこと、血流を促進する運動や食事の工夫が重要です。