【肺と蔵象学説】中医基礎理論
蔵象学説における肺の詳細な解説
肺の基本的な働き
宣発と粛降を主る
宣発(せんぱつ):
気や水分を体の上部や外部に分布させる働き。
肌や毛穴を通じて、汗や不要な水分を排出する。
皮膚の健康や防御機能に密接に関連。
粛降(しゅくこう):
気や水分を体内に降ろし、調整する働き。
水分代謝において、不要な水を腎や膀胱に送る。
呼吸における吐き出しの作用も粛降に含まれる。
気を主る
呼吸によって、清気(外気の良い成分)を吸収し、濁気(不要な気)を排出。
気の推動作用:
血液や津液の循環を助け、体内の生理機能を正常化。
気の不足(肺気虚)は倦怠感、呼吸困難、息切れ、疲労感を引き起こす。
水道を通調する
肺は体内の水分代謝を管理。
吸収された水分を全身に分布させ、不要な水分を腎や膀胱に送る。
肺気の不足は水分代謝の滞りを招き、むくみや痰湿の原因となる。
肺と関係する部位・特徴
鼻に開竅(きょう)する
鼻は肺と密接に関連し、肺の健康状態が鼻の機能に影響。
肺が弱ると鼻詰まり、鼻水、嗅覚異常などが起こる。
皮毛は肺の華
肺の状態は皮膚や毛に現れる。
肺の滋潤作用が低下すると、皮膚が乾燥し、毛が艶を失う。
大腸と表裏の関係
肺と大腸は機能的に連携。
肺の気が不足すると、大腸の動きも滞り、便秘や下痢を引き起こすことがある。
肺気・肺陰の特徴
肺気
主な機能:
呼吸による酸素の供給と二酸化炭素の排出。
全身の気血を循環させ、生命活動を支える。
肺気虚(はいききょ):
主な症状:
呼吸が浅く、息切れ。
倦怠感や疲れやすさ。
咳、痰。
原因:
長期の風邪や慢性的な呼吸器疾患。
過労や不適切な生活習慣。
肺陰
主な機能:
肺を潤し、乾燥や邪気から守る。
外界との接触が多い肺を滋養する。
肺陰虚(はいいんきょ):
主な症状:
乾燥した咳、喉の渇き。
声がれ、皮膚の乾燥。
体が熱っぽく感じるが、発熱ではない。
原因:
長期的な乾燥環境。
不適切な水分摂取。
精神的ストレスや過労。
肺のバランスを保つための養生法
肺気を補うために
深い呼吸法を取り入れる(腹式呼吸やヨガの呼吸法)。
軽い有酸素運動を行い、肺の働きを活性化。
「気」を補う食品:
黒豆、山薬(ヤマイモ)、レンコン、生姜。
肺陰を守るために
適度な水分補給。
肺を潤す食材を摂取:
白キクラゲ、梨、クコの実、百合根、ナツメ。
過度な辛い物や揚げ物の摂取を避ける。
季節に応じた対策
秋(乾燥しやすい季節):
肺陰を補い、滋潤作用を高める食事を。
冬(寒邪が侵入しやすい季節):
肺気を補い、外部からの寒気を防ぐ温かい食事や衣服を心掛ける。
肺は「呼吸」と「水分代謝」の中心であり、外界との接点が多い臓器です。適切な養生によって、肺の健康を維持し、全身の気血・水分の調和を図ることが重要です。