【肝と胆の湿熱に!】竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)薛氏医案せつしいあん①

竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)は、肝と胆の湿熱を取り除くことを目的とした漢方薬です。特に、肝と胆が密接に関係しているため、肝の不調が胆に影響を及ぼし、湿熱(体内に余分な水分と熱がたまる状態)が生じる場合に用いられます。この処方は、炎症や湿熱による不快な症状を鎮めることに特化しています。
※竜胆瀉肝湯は薛氏医案 せつしいあんと一貫堂 いっかんどうの二つあります。双方について1記事ずつ解説します。

竜胆瀉肝湯(薛氏医案 せつしいあん)の構成生薬とその作用(科名付き)

1. 当帰(とうき) - セリ科

  • 作用: 補血作用と活血作用があります。血を補い、血行を良くすることで、特に女性の生理不順や冷え症の改善に有効です。肝を養うことで血の不足を補い、血行を促進して滞りをなくします。

  • 適応: 血虚による症状や冷え、血行不良が原因で起こるトラブルに効果があります。

2. 地黄(じおう) - ゴマノハグサ科

  • 作用: 血を補いながら清熱・涼血作用を持ちます。体内の熱を冷まし、血を潤すことで、乾燥や炎症を防ぎます。特に血虚による熱感を緩和します。

  • 適応: 血の不足に伴うほてりや炎症を抑え、体のバランスを整えるのに役立ちます。

3. 黄芩(おうごん) - シソ科

  • 作用: 強力な清熱作用を持ち、特に胆や肺の熱を冷ます働きがあります。抗炎症作用があり、体内の過剰な熱や炎症を鎮めるのに効果的です。さらに、精神的な緊張を和らげる働きもあります。

  • 適応: 熱による炎症や、ストレスが原因でこもる体内の熱を解消するのに用いられます。

4. 山梔子(さんしし) - アカネ科

  • 作用: 清熱・解毒作用があります。心や肝の熱を冷まし、炎症を和らげると同時に、体内の余分な熱を排出します。特に精神的な興奮やストレスによる熱を鎮める効果があります。

  • 適応: 熱感、炎症、精神的なストレスが引き起こす不調に効果的です。

5. 竜胆(りゅうたん) - リンドウ科

  • 作用: 肝や胆の熱を強力に冷ます清熱作用があります。特に湿熱がこもった状態を改善し、炎症を抑える働きがあります。肝胆の過剰な熱や湿気を取り除くことで、体のバランスを回復させます。

  • 適応: 肝胆の熱が原因で起こる炎症や、過剰な熱による不調を鎮めます。

6. 沢瀉(たくしゃ) - オモダカ科

  • 作用: 利水作用があり、体内の余分な水分を排出してむくみを改善します。湿気を取り除き、体の水分代謝を促進することで、湿熱の症状を緩和します。

  • 適応: むくみ、湿気による不調や、水分が滞ることによって引き起こされる症状に効果があります。

7. 木通(もくつう) - アケビ科

  • 作用: 利尿作用があり、体内の水分循環を改善することで、湿熱を排出します。特に尿の流れをスムーズにすることで、炎症を和らげます。

  • 適応: 排尿障害や湿熱が原因で起こるむくみや不快感を軽減します。

8. 車前子(しゃぜんし) - オオバコ科

  • 作用: 清熱・利水作用を持ち、体内の熱を冷ましながら尿の排出を促します。体内の余分な湿気を取り除き、炎症を和らげる効果があります。

  • 適応: むくみ、尿の出が悪いなどの症状を改善し、体の水分バランスを整えます。

9. 甘草(かんぞう) - マメ科

  • 作用: 調和作用があり、他の生薬の働きをバランスよく調整します。炎症を和らげ、体全体の調和を図る効果があります。特に苦味を和らげることで、飲みやすくします。

  • 適応: 全体の作用を調整し、副作用を抑える働きをします。

竜胆瀉肝湯の主な効果

  1. 肝胆湿熱の改善

    • 肝と胆に湿熱がたまることで生じる炎症や不調を改善します。湿熱が原因で起こる症状を緩和し、体内のバランスを回復します。

  2. 肝と胆の関係

    • 東洋医学では、肝と胆は密接に関係しており、肝が不調になると胆に熱がこもりやすくなります。この処方は、肝を調整しながら胆の熱を冷ますことで、全体のバランスを整えます。

  3. 女性の特有症状の改善

    • 陰部のかゆみや分泌物: 肝胆の熱が陰部に影響し、かゆみや湿疹、においのある分泌物が増える場合に効果があります。湿熱による症状を改善し、炎症を鎮めます。

    • 排尿異常や湿疹: 湿熱が膀胱に影響し、排尿時の不快感や痛みがある場合にも有効です。

  4. 胆熱による不調の改善

    • 肝の不調が胆に影響し、胆に熱がこもると黄疸や口内の苦み、胆のうのトラブルが起こります。この処方は、胆の熱を冷まして炎症を緩和します。

  5. 炎症を伴う目の不調

    • 肝胆の熱が目に影響すると、充血や黄疸などが現れます。この処方は、目の炎症を和らげ、視力の不調を改善します。

使用のポイント

  1. 湿熱があるタイプに適応

    • 竜胆瀉肝湯は、特に湿熱が体内にたまっているタイプの人に効果があります。熱を冷まし、余分な水分を取り除くことで、炎症や不快な症状を和らげます。

  2. ストレスと湿熱の関係

    • ストレスが原因で肝の機能が低下すると、胆に熱がこもりやすくなります。この処方は、ストレスや精神的な緊張によって体内に生じた熱を効果的に鎮めます。

  3. 実熱と湿熱を同時に改善

    • 実熱(体内に過剰な熱がある状態)と湿熱(余分な水分と熱がこもった状態)を同時に取り除くため、炎症が強い場合に特に効果的です。

注意点

  • 体質に合った使用が重要: この処方は実熱や湿熱がある人に適していますが、冷え性や虚弱体質の人には向かない場合があります。適切な診断のもとで使用することが大切です。

  • 長期間の使用は避ける: 湿熱や炎症が改善した後は、使用を中止することが望ましいです。長期間使用すると、体が冷えすぎる可能性があります。

結論

竜胆瀉肝湯(薛氏医案)は、肝と胆の湿熱が原因で生じる炎症や不快な症状に特化した処方です。特に女性の特有症状や、胆の熱による不調を改善する効果があり、体内のバランスを整えるために役立ちます。ストレスが原因で肝の不調が胆に影響を及ぼしている場合に、清熱・利水作用を持つ生薬が効果的に働きます。

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