【生理が早い原因】月経先期と中医婦人科学
今回は経先期(生理が早く来る)の原因と対処法について中医婦人科学の理論で解説します。
月経先期の主な原因
月経が通常より早く来る原因は中医学的に「気虚」と「血熱」に分類され、それぞれ異なる特徴と治療方針が設定されています。
1. 気虚による月経先期
気虚は、身体のエネルギー不足が原因で生じるもので、体が血液を十分に留めておけず、月経が早まる傾向があります。
主な症状:
経血量が多く、色が淡く、質が薄い:気虚の影響で血を十分に管理できず、薄く流れやすい経血が特徴です。
全身の疲労感や四肢の倦怠感:気虚による体力の低下が影響しています。
食欲不振や便の緩み:気の不足が消化吸収に影響し、食欲不振や消化不良につながります。
気虚の生理作用: 気には血を流し、固定し、体を温める「推動作用」「温煦作用」「固摂作用」などの働きがあります。気虚になるとこれらの作用が低下し、体が血液をうまく統血できなくなります。
鑑別ポイント:
脾虚:倦怠感や食欲不振が見られ、特に四肢の重だるさを伴います。
腎虚:腰痛や頻尿など、腎機能が弱っている場合の症状が特徴です。
主な処方:
帰脾湯:脾胃を補って気を増やし、血を安定させる処方。
参馬補腎丸:腎の機能を補い、全体的なエネルギーを向上させる処方で、特に腎虚が見られる場合に用います。
2. 血熱による月経先期
血熱は体内に余分な熱が溜まり、血流が早まり出血傾向が高まる状態です。血熱の原因は、日々の生活習慣や体質により異なります。血熱はさらに「陽盛血熱(ようせいけつねつ)」「肝鬱血熱(かんうつけつねつ)」「陰虚血熱(いんきょけつねつ)」の3種類に分類され、それぞれ異なる症状と原因があります。
(1) 陽盛血熱
特徴:
経血量が多く、色が深紫で粘稠:熱が血液を煮詰めて粘度を上げ、濃い色合いになります。
顔の赤み、口の乾き、便秘:熱が多いことから、全身の乾燥や便秘が伴います。
原因: 辛い食べ物や熱を引き起こしやすい飲食物(揚げ物、スパイシーな食材など)の過剰摂取により熱が体内に蓄積し、血を煮詰めます。
処方例:
清営顆粒:血熱を冷まし、血流の調整を助ける処方です。
(2) 肝鬱血熱
特徴:
経血量が多い場合と少ない場合があり、色は深紅や紫紅で粘稠:肝の熱が血に影響し、流れが滞るため粘度が高まります。
下腹部や脇部の張りや痛み、乳房の張痛:肝が影響する部位に痛みが生じやすいです。
口の苦み、喉の乾き、怒りっぽさ:肝鬱が熱を生じるため、精神的な不安定さが現れます。
原因: 肝鬱が長期間続くと熱を生じやすくなり、肝の気が血に影響を及ぼし血熱に発展します。情緒の不安定さやストレスが大きな要因となります。
処方例:
加味逍遥散:肝鬱を解消し、血熱を鎮めるための処方です。
(3) 陰虚血熱
特徴:
経血量が多い場合と少ない場合があり、色は赤で粘稠:陰虚が熱を生じさせ、血が煮詰まっている状態です。
手足のほてりや頬の赤み:陰液が不足し、相対的に熱が高まるため、体が熱く感じられます。
原因: 陰液不足が原因で、体内に熱が発生しやすくなります。加齢や過労が要因で、陰虚が進行することにより、血熱が伴いやすくなります。
処方例:
杞菊地黄丸や八仙丸:腎を補い、陰液を増やして血熱を鎮めます。
月経先期の症状による鑑別と治療のポイント
月経先期は気虚や血熱により、血液の巡りや体内のバランスが崩れていることが多いため、以下の点に注意して対処します。
経血の色や質、量:経血の色合いや粘度、経血量の変化により、気虚や血熱の状態を見極めます。
随伴する症状:便の状態、顔色、体のほてりなどの症状により、陽盛や陰虚、肝鬱のどれが関わっているかを診断します。
日常の食事や生活習慣の改善:辛い食べ物や揚げ物、熱性食材の摂取を控え、身体を温めすぎず冷やしすぎず、バランスを保つ食事を心がけます。
これらの対処により、月経周期の安定と体調改善を目指します。