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映画感想#1「ぼくのお日さま」 めちゃくちゃイノセンス、新しい映像作家の誕生。  

この映画に出会えたことが、嬉しい。

全てのカットが美しい。まるで、印象派の絵画のようで、何度も息を呑んだ。日本の雪の風景が、泣けてくるほど美しい。
演じられたキャラクター、撮影、劇伴、あまりにも自分の好みだった。映画をこれだけ微笑んで観たことの記憶がないくらい。

監督、撮影、脚本をすべて28歳の奥山監督が担っている。
撮影がとても自然光を上手く活かしている。特に、アイススケート!
自然光と人口光の色のコントラスト。その空間をスケーティングで動くキャラクター。


スケーティングの撮影が、あまりに映画的。映画って、絵画と違って”動く”ということを如何に見せるか。
この映画はスケーティングの”動き”がとても楽しく、美しい。


そして、タクヤくんとさくらさん。2人の子役さんが良い!
2人のリアリティある演技が、自然光を巧みに活かした演出とも相まって、とてもイノセンスな空気を映画にもたらしている。


荒川さんを演じた池松さん、この役者さんは、抑え気味な演技がいつもジワっとくる。彼のこの雰囲気が、映画のコンテクストに説得力を与えている。

ネタバレになるので、ぼかしますが、都会の大人社会では当たり前になりつつある”コト”。時代背景が1998年くらい、地方社会ではまだ価値観が保守的。加えて大人の一歩手前では、無垢なるトゲを含む言葉は、仕方なくもせつない。

寓話的な美しさ、楽しさ、その多幸感は一瞬の輝きを放ち、その後少年少女は生身のヒトの現実を知り、それぞれの人生に戻っていく。多分少し逞しくなって。

ラストの、鑑賞者の想像にあずける演出がとても好き。
この監督の次作がとても楽しみになりました。
新たな映像作家の誕生。素敵だ。

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