シンプルな床の間

15年ほど前から、戸建住宅で和室を設ける計画が少しずつ減っていたのだが、ここ最近その傾向が変化し、和室や床の間を設けるお客様が増えつつあるように感じる。たまたまなのか、お客様層の違いによるのか、もしくはトレンドとして復活しているのかわからないが、弊社では確実に、だ。

私の場合での床の間といえば、実家や祖父の家にあった昔ながらのスタイルで、いわゆる『The 和室』的な神聖な存在。欅や楓、杉、桧などがふんだんに使われており、経年変化も非常に美しいといったイメージ。(The 和室のくせに実家の仏壇置きはクローゼットになっているが)どちらかといえば、ひとつひとつの線が少し太めで、廻り縁や竿縁もごつい。欄間のデザインも非常に細かく施され、職人さんたちの技術は光る箇所が多い。

そのような『The 和室』は新築の住まいでは最近はなかなかお目にかかれない。少しずつ少しずつシンプルに変化しているように感じている。


18_和室


そんな中、あるプロジェクトで和室のご依頼を頂いた。『和の空気は好きなのだが、昔ながらのスタイルとは違うようなご提案を頂きたい』とのこと。

そもそも昔ながらのスタイルってなに?ということを考えた。昔って日本の文化的な昔なのか?それともお施主様的な昔?もしかして私基準?など様々な考えを整理し、自分なりに出した答えは『伝統を踏襲する心と空気があれば、素材や線はシンプルでいい』ということだった。

長押は90㎜、障子の桟は6㎜とし、シンプルな水平ラインをつくることで空間のパースペクティブ感を強調し、付鴨居や束などは最低限設けつつ、床柱はタケノコ仕様にすることで安定感を表現してみた。また素材は桧、欅をメインとしシンプルな色遣いを心がけ、天井材は杉柾目のみとすることで余計な線を消した。書院の丸窓も枠を無くし、自然光をそのまま美しく感じることができるよう設定した。


和室は奥が深い。私にはまだどれが正解なのかはわからないが、こちらのオーナー様のおかげで、新しいスタイルもどんどん受け入れられると感じた案件だった。

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