長崎きまぐれ案内その6 ー坂の街
海に面した街で古くから港があるところは大抵坂の街である。
海岸線に沿って山が迫っている土地は海辺も切り立った崖や急峻な坂が多く水深もすぐ深くなる。つまり、船が入りやすいのだ。現代の様に簡単に浚渫して水深を深くすることなど出来ない時代は海辺の坂の街はイコール港町だったのである。
長崎はその典型で港町、造船の街でそれはつまり坂の街だから。
初めて長崎に住んだときに地元の人に教えてもらったことがある。長崎では自転車とベビーカーはほとんど使わない。これは坂の街たるゆえんで説明するまでもないだろう。
特に、ベビーカーは使わないというより使えないと言った方が正しいらしい。安全ではないから安心も出来ない。
自転車に至っては一部のスポーツマン、アスリートを除きほとんどママチャリなど見かけない。自転車屋さんも市内に数えるほどしかないかそもそも無かったか。
結婚した後初めての転勤は下関だった。坂もあるが平地もある。自転車があれば便利だ。そこで初めて上さんが自転車に乗れないことを知った。何故だか鉄棒の逆上がりが出来ない生徒をイメージした。しかし、小学校で逆上がりをする授業はあったけど自転車に乗る授業はなかった。
旦那に頼むとすぐイライラするからと社宅の同じ階段の仲良しにお願いして自転車に乗る練習をしたらしい。結局5年余りの下関の生活で自転車を買うことはついになかった。
いつも明るくニコニコしている仲良しの奥さんをもってしても効果はなくついに乗れず仕舞いだったようだ。
練習の手伝いを頼まれなかった自分にとってこれは苦い思い出なのか、それとも夫婦のケンカを回避出来たので善しとすべき思い出なのか。未だに記憶のアルバムのどちらのファイルにしまうのか迷っている。
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