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ニューヨークの街並みとさるのジョージ

ニューヨークに1度だけ行ったことがある。

独身に戻って1年ほど経った頃のこと。当時独りになった辛さからだろうか、閉所恐怖症が酷くなったという自覚があり長時間のフライトが耐えられるのか少し不安があった。しかし、実際の機内は思いのほか快適ですんなりJFケネディ空港に着いた。あるいは旅の準備に疲れてぐっすり眠っていたのか。もう忘れた。

1月のお正月休みが終わってからの旅行だった。マンハッタンの中心に位置するロックフェラーセンターの前の広場にはまだクリスマスツリーが飾られアイススケートリンクではボチボチ滑っている人がいた。衆人環視の中で滑る人達はやはりそれなりの技術を持っている。

タイムズスクエアは映画やテレビで観た通りで夜中でも人通りが絶えなかった。

それまで一度も合衆国に足を踏み入れたことがなかった。米の会社に関係する仕事がなかったり、あっても関われなかったこともある。かつては大型原油タンカー/VLCCの商談があった頃もあった。スペック(船の仕様書)のネゴ(交渉)に米に乗り込んだ上司の話では日本との時差(ちょうど昼夜が逆転している)の関係で職場との連携が大変だったと聞いた。離れた職場とのやり取りはメールではなく電話とファックスしかない時代である。自分が海外へ行ける程度に成長(?)した頃には造船業のシェアトップはとっくに韓国に明け渡しており更に米国へ行く機会は望むべくもなかった。

縁がないなら自分で機会を作るまで、とビジネスではなくサイトシーイング(観光)で休暇を取って行くことにした。

映画のロケによく使われるニューヨーク マンハッタン。米に行くならニューヨークと決めていた。

掲げた写真の様な建物が林立している。映画でもよく出てくるビルの路地側に這いつくばる様にくっついた非常階段が目に付く。こういった通りを歩いていて思い出した。

マンハッタンの街の風景、この非常階段付きのビルは映画で見慣れた記憶よりもっと古い記憶にあった。

古いとはどのくらい?それは子供の頃、幼稚園の頃。

「ひとまねこざる」という絵本である。その続きだったろうか。「さるのジョージ」という連載ものになった絵本のシリーズだった。動物園を抜け出す好奇心いっぱいのおさるさん。黄色い帽子を被った背の高い優しいおじさん。そのシリーズものの一つで建物から逃げ出すさるのジョージが非常階段を下り最後の地上へと降りようとして2階から飛び降りるのだがおさるさんにとっては高すぎて足を骨折してしまう。

非常階段は例えば火事から逃げる際上から降りてくることを想定してるのだろう。地上1階からビルの関係者が簡単に入れない様に普段は1階から2階への階段は2階の高さのところで収納して降りることも登ることも出来ない。おさるさんはそのことを知らずに仕方なく飛び降りて怪我をしてしまった。

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そんな絵本のシーンが記憶の奥底にありその後同じ風景の映画が記憶に上書きされていった。その現場(?)に初めて立って最初の原記憶が呼び覚まされた。夜母に読み聞かされたさるのジョージの物語り。

ニューヨークを目指す心の奥に何度も聞き何度もページをめくった絵本の存在があった。

そうそう蛇足だが欧米では1階はグラウンドだったか別の表現をし日本で言う2階が1階になる。ま、ここではどうでもいいこと。

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