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私の躁うつ日記11〜ゲジゲジ

警察沙汰の大騒動もひとまずは収まったが、私の「信じる気持ち」はだいぶ死んでいた。だってさぁ、こんなことされてどこを信じればいいのか。それでも可愛い娘っ子と腹にはザリガニという状況ではどうすることもできない。実家に帰ることもできないし、他に行くあてもない。自分の気持ちは置き去りにして、かりそめの生活を続けた。

ある日、キッチンのサッシに黒いウニョウニョしたものが貼り付いているのに気がついた。うごめく影に近づいてみるとヒェェェェッ!!とものすごい悲鳴が出た。ム、ムカデ、いや足がもっと長いゲジゲジであった。あんな禍々しい生きものは見たことがない。20センチ以上の躯体でのたうつその姿はそれまで見た昆虫の中でダントツの恐怖だった。

当時住んでいた米軍住宅は山を崩して造成された場所なので、タマムシや珍しい蝶など昆虫が多かった。中でもムカデとゲジゲジは危険なので「MUKADE or gejigejiガイタラ、スグMPニ知ラセテネ」とポリスボックスに貼ってあった。躊躇なくお巡りさんを呼ぶ。とてもじゃないが1人じゃ太刀打ちできない。

やがて迷彩服のガッチリしたMPが2人やってきたが、ゲジゲジを見た途端
に「ノオッッ!」と後退りした。そりゃそうだろうよと思ったが、このままでは困るので涙目で「ヘルプミー」と言ってみる。すると諦めたのか肩から下げた殺虫剤をプシューと吹きかけはじめた。しかしゲジゲジは全然死なない。むしろ半身を立ち上がらせてクネクネと動きながら向かってくる。あの時の私たちのサブイボはえげつない数だったはずだ。

ついにMPのうち1人が「ガッデム!!」と叫びながら軍靴でムカデを踏み付けた。ブシャッ!という音に私は耐えられずぴょんぴょん跳ねていた。それでもなお動くゲジゲジを2人がかりでバラバラになるまで踏み潰した。酷い戦いだったが我が家に安息がもたらされた。MPに感謝しつつ、ゲジゲジの冥福を祈る。

それにしても…なんだか不吉だな。次はマムシが家に入り込んだりして。怖い思いをして少し不安になった。母が倒れてから、夫の不貞がわかってから、うつ病になってから…不安はずっと続いているけれど、もっと深い穴の淵に立っているようなそんな気持ちだった。

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