ネット炎上の心理
今日のおすすめの一冊は、亀田達也氏の『眠れなくなるほど面白い 社会心理学』(日本文芸社)です。その中から「ステレオタイプと偏見は なぜ生まれるのか?」という題でブログを書きました。
本書の中に「ネットでの炎上が 激化するのはなぜか」という興味深い一節があったのでシェアします。
大小の差こそあれ、いまや毎日のように起きている のがインターネットでの炎上騒動です。有名人の不適 切発言やスキャンダル、バイトテロと言われる動画の公開、公務員や企業による不祥事など、ひとたび話題になれば、たちまちSNSで拡散。本人や企業のアカウ ントには、大量の非難が寄せられる事態となります。
こうしたインターネットでの炎上で特徴的なのが、批判が過激化していくというものです。相手の人格を否 定するようなものから、差別的な発言、さらには「死ね」 といった直接的なものまで罵詈雑言が並びます。なぜ インターネットでの炎上は激化しやすいのでしょう。
その理由のひとつとして考えられるのが「社会比較説」と「集団極化」です。社会比較説とは、他者の多くが自分と同じ意見であることで自分の意見に自信を持ち、その考えがより強化されることです。集団極化は、集団で討論する際、メンバーにリスキーな意見の人が多ければ、集団での意思決定もよりリスキーに、逆に安全志向の人が多いとより安全に偏る傾向のことです。
インターネットの世界というのは、自分と同じ意見の人を見つけやすい環境であり、自分と同意見のみ見聞きする、あるいは同意見のコミュニティーに参加することで、集団極化も起きやすくなります。加えて、沈黙の螺旋や反対意見を軽視する集団的浅慮なども発生しやすく、これらが複合的に合わさることで、激化しやすいと考えることができます。 もちろん、インターネットの匿名性も炎上が激化しやすい大きな要因のひとつでしょう。
社会比較説とは、アメリカの社会心理学者、レオン・フェスティンガーによって提唱された理論です。自分の意見や能力などを他人と比較し、自分の立ち位置を知ろうとする衝動です。比較には「上方比較」と「下方比較」の2種類があります。
上方比較とは、自分より実力が上の人との比較で、モチベーションをあげる比較です。「あんなふうになりたい」と。下方比較とは、自分より不幸だったり、実力がないと思われる人たちとの比較です。「自分よりダメな人をみて安心する」という心理です。
つまり、SNSの投稿などで、他者の多くが自分と同じ意見であることで、自信を持ち、それが強化されるということですが、同時に自分よりうまくいっている人(上方比較)たちが、何かで大きく失敗したようなとき、徹底的にそれを叩くというようなねじれた心理があります。
嫉妬心(しっとしん)であり、うらみや、怒りという感情です。それが、SNSでの炎上につながります。
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