アントニオ猪木詩集
今日のおすすめの一冊は、アントニオ猪木氏の『猪木詩集「馬鹿になれ」』(角川文庫)です。その中から、「この道を行けば」です。
本書の中に猪木氏の心に響く詩をいくつかピックアップしてみます。
◆《蜃気楼》
夢が無いこんな時代を嘆いてみても/夢は此方(こちら)を振り向いてはくれない/夢を追いかけ/走ってみても/夢は先へ先へと/逃げて行ってしまう/踏み出しても/踏み出しても/逃げて行ってしまう/シルクロードをバイクで疾走した夏/砂漠に見た蜃気楼のように/夢はどこまでも/俺を誑(たぶら)かす/蜃気楼を追い続ける/それが俺の運命(さだめ)
◆《感謝の階段》
地図にもない/知らない土地へ旅をした/見知らぬ人に/手を差し延べられて/熱い情けを受けました/人との出会いに感動し/思わず涙があふれ出た/日頃の心に言い聞かす/「いつでも どこでも 誰にでも」/すべてのことに感謝する/そんな自分でありたいと/合(あわ)した掌 汗ばんで/感謝の階段 登ってた
◆《今日も歩いている》
掌に乗っかっちまうほど/小さくなったこの地球に/安住の地など/どこにもないものを/人はそれを求めて/今日も歩いている/時が歩みを追い越して行くのに/人はそれとは気づかずに/今日も歩いている/そして人は/知らず知らずに/老いていく/地球の片隅で/老いていく
◆《運》
運は/勇気の無い者には/めぐってこない/何が起ころうとも/総てに感謝/ありがとう
アントニオ猪木氏は友人でもあり恩人でもある、詩人の百瀬博教氏にすすめられて詩を書き始めたという。まさに猪木氏の内面を見るような詩の数々。
プロレスラーである猪木氏の詩には、「闘い」「闘魂」「鉄拳」「英雄」という強い言葉とは別に、ピュアで傷つきやすくて、繊細で優しい言葉があふれている。そこに猪木氏の魅力がある。
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