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大きなパラダイムシフト
今日のおすすめの一冊は、デービッド・アトキンソン氏の『日本企業の勝算』(東洋経済新報社)です。本書と同名の「日本企業の勝算」という題でブログを書きました。
デービッド・アトキンソン氏が昨年(2019年)に出版した「日本人の勝算」という本の中から抜粋してみたいと思います。
日本には今、大きなパラダイムシフトが訪れています。パラダイムとは、ある時期、ある集団の中で、常識として認識されている「思想の枠組み」を意味しています。一方、シフトという英語には、変える、移すなどの意味があります。パラダイムが変わる、つまり、それまで常識と認識されていたさまざまな事柄が、大きく移り変わること、これがパラダイムシフトです。
パラダイムシフトが起きると、それまでのやり方がまるで通じなくなります。当たり前だと考えられていた前提条件が大きく変わってしまうので、対処の方法も大きく変えなくてはいけなくなるからです。日本で今まさに起きているパラダイムシフトの原因は、人口減少と高齢化です。日本ではこれから、人類史上いまだかつてない急激なスピードと規模で、人口減少と高齢化が進みます。
人口が右肩上がりで増えるというパラダイムが、右肩下がりに減るというパラダイムにシフトしたのです。これまで当たり前だと認識されてきたことが、すべて当たり前ではなくなります。日本は大きなターニングポイントに立たされているのです。人口減少と高齢化が進む日本には大変厳しい未来が待ち構えています。これは脅しでもなんでもなく、人口動態などのデータを冷静かつ客観的に分析すれば見えてくる、ほぼ確実な日本の未来です。
今すぐにでも対応を始めないと、日本は近い将来、三流先進国に成り下がることは確実です。いや、下手をすると、日本は三流先進国どころか途上国に転落する危険すらあるのです。しかし日本国内の議論を聞いていると、あたかも今までの仕組みを微調整して対応すればなんとかなるという、その場しのぎで実に甘い、のほほんとした印象しか伝わってきません。嵐が目の前に迫ってきているというのに、危機感はまったくといっていいほど感じられません。
ご存じの通り、日本ではすでに少子化が始まり、子どもの数が年々減っています。1950年に全人口の55%もいた24歳以下の人口は、2030年には18%まで低下します。人口の55%が24歳以下だった時代、大学教育が若い人だけだったことは、大学の経営戦略としても、国家の教育のあり方としても、理に適っていました。しかしその数が18%にまで減少する以上、大学のあり方そのものを転換しなければなりません。
国民の55%を対象としていた時代の延長線上で、国民の18%の教育をどうするかを議論すべきではありません。国民の82%をどう教育するかが課題となっているのです。「人生100年時代」と言われる中、刻一刻と変化するこれからの世の中で、何十年も前に学校で学んだ知識や一個人の経験から得られた知見だけで、物事に適切に対処していけるとは思えません。この観点からも、25歳以上の成人の再教育は間違いなく必要になるのです。その際には、大学が大きな役割を担うべきです。
しかし今、各大学はすでに少なくなってしまった子どもたちの奪い合いを、血まなこで繰り広げています。これこそ、今までの枠組みに囚われ、固定観念に染まっている証拠です。これは大学に限った話ではありません。あらゆる場面で、これまでの固定観念に囚われない、新たな解決策を見つける必要があるのです。日本は今、大変革の時代を迎えています。もはや平常時ではありません。皮肉なことに、大変革が起きると、それまでの仕組みや枠組みに詳しければ詳しいほど、固定観念に囚われてしまい、新たな発想を生み出すことができなくなります。(日本人の勝算/東洋経済新報社)
昨年に書かれた本ですが、昨年から今年にかけて、人口減や高齢化の問題に対して、大きな変化はありません。しかも、今年はコロナ禍があり、むしろ、人口や高齢化の問題は加速しているような感じがあります。このコロナ禍はいい意味でのリトマス試験紙となっています。
「早く正常に戻ってくれ」とひたすら願っている人は、新たな行動をおこしません。正常化するのをただじっと待っているからです。しかし、「このコロナ禍を機に、新たなチャレンジをして前進しよう」と思っている人は、常に自分を高めようと努力をしています。だからこそ、リカレント教育が必要となるのです。これは、社会の変化という旅に出るための最低限持たなければならないパスポートです。
大学の変革だけでなく、多くの企業も同様です。生産性の向上を図り、ITの波に乗り遅れないよう、前に前に進んで行きたいものです。
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