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試したことのない経験

今日のおすすめの一冊は、多湖輝(あきら)氏の『盲点力』(WIDE SHINSHO)です。その中から「盲点力とは」という題でブログを書きました。

本書の中に「試したことのない経験」という示唆に富んだ文章がありました。

大人と子どもでは、その経験や知識や情報量に圧倒的な違いがあります。したがって、誰が考えても大人のほうが判断力に優れていることになります。しかし、「盲点力」となるとちょっと怪しい。なぜなら習慣や常識や先入観の中に盲点が生まれるからです。

万事にそつのない大人は、逆に言えば盲点だらけかもしれないのです。しかも、大人の経験の中には「試したことのない経験」がたくさん含まれています。

わたしは以前、テレビで養蜂家のドキュメンタリーを観たことがあります。そのとき非常に驚いたのは、四、五歳の子どもがミツバチの巣箱を開けてハチミツのいっぱい詰まった巣を素手で抱えていることでした。 もちろんその子の周りをミツバチがブンブン飛び回っています。

子どもが両手を広げて抱えるぐらいの巣房(すぼう)にも、無数のミツバチが群がっています。でもその子は、手袋もしていないし顔をガードするネットも被っていませんでした。その子の「経験」は、ミツバチはむやみに人間を刺さないということです。 でもそれも、最初は両親が教えたことなのでしょう。 

「大丈夫。 ミツバチはやさしく扱えば人間を刺したりしないから」 そう言いながら、親が実際に巣房を持ち上げて見せれば、幼い子どもは疑いもなく親の真似をします。 これも「経験」です。 

「危ない」「ダメ」「いけない」「失敗する」「やっても無駄」と親が言い張れば、子どもも それに従うしかありません。 でもこれは、「試したことのない経験」に過ぎません。

大半の子どもは、「試したことのない経験」を積み重ねて大人になってしまいます。親や先生や大人の言うことをよく聞く子どもほど、そういう傾向があります。 そして、そういう子どもがいわゆる常識的な大人になるのです。

やれば「危ない」ことや、やっても「無駄な」ことがたくさんインプットされた、万事にそつのない大人になっていくのです。そういう大人に、どれほどたくさんの盲点が存在するか、これは考えてみる価値がありそうです。

◆多くの大人は、子どもに「それは無理」「むずかしいからやめなさい」「できっこない」などと、挑戦をさせない言葉を投げかけている。やる前から挑戦をあきらめさせる言葉、それが、子どもたちの「試したこのとのない経験」となる。

サントリーの鳥井信治郎氏の「やってみなはれ、やらなわからしまへんで」という言葉がある。なにごとも、やってみなければわからない。やるまえからそれを止めたら、チャレンジ精神も冒険心もない大人ができ上ってしまう。

「試したことのない経験」の積み重ねによって盲点が生まれていないか、今一度考えてみる必要がある。

今日のブログはこちらから→人の心に灯をともす


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