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効率は創造性を殺す

今日のおすすめの一冊は、谷本真由美氏の『世界のニュースを日本人は何も知らない』(ワニブックスPLUS新書)です。メルマガも同名の「世界のニュースを日本人は何も知らない」という題で書きました。

本書の中に「効率は創造性を殺す」という素敵な一文がありましたので、シェアしてみたいと思います。

最近、「働き方改革」が声高に叫ばれている日本を含め、世界的にも「効率」や「合理性」を追求することが大変多いと感じます。たとえば職場においては各従業員の業績評価というのを数値化し、いくら稼いだかを厳密に計測したり、製品を何個生産したかを管理したりします。またビッグデータ化が進んでいるため、列車の遅延率や物品の配達スピードなども細かく計測するようです。
パフォーマンスが上がるようにどんどん無駄を省いて生産性を追求することが、企業のひとつの「改善」の形として定着しているのです。より多くの利益を得るために不明瞭な仕事をしている人を解雇する、正社員を非正規雇用に置き換えて人件費を節約する、経費をどんどん削る、プロジェクトは成果の出るものしか残さない…そんなことが当たり前のように行われています。
ところが、こういった“効率化”が組織や個人個人にとっては大変なマイナス効果を生んでいることが少なくありません。アメリカにある国立の複合博物館教育研究機関の研究者であるエドワード・テナ―氏は、効率化が抱える矛盾やビッグデータの非有用性などをつまびらかにした著書で、効率と創造性のパラドックスについて語っています。
特にシステムやAIを活用して効率化を進めるようになった現代のあり方について疑問を投げかけているのが印象的です。データやシステムに頼った効率化というのは、あくまで特定のアルゴリズムや過去のパターンに沿って行動したり考えたりすることです。
過去の成功体験をなぞって行動するわけですから、合間に遭遇する異質なことや予期しなかった発見、回り道によって得られた新たな知識や体験が思いも寄らないアイデアに結びつく、なんていうこともありません。一見関係のない景色や人との運命的な出合もそこには存在しないのです。
このように、効率化を追求するあまり無駄を根こそぎ排除する方法は、むしろ新しい発想や考え方が生まれるチャンスを阻む有害なものといえます。過去に成功したパターンを繰り返したりそれに沿って機械的に決定したりするわけですから、新しいものが生まれるわけがないのです。
これは、書店や図書館での出来事を思い出してみるとよくわかるでしょう。狙いをつけていた本のすぐ近くに並ぶ別の本が気になって手にとったり、偶然目に入って買ってみたら思わぬ珠玉の一冊となったり…このような経験は誰でもあるのではないでしょうか。これは街をぶらぶら歩いていても同じです。
知らなかった店を発見したり、何かを教えてくれる人に公園で出会ったり、変わった広告が目に止まったりすることもあります。そういった予期しない出会いというのも新しいアイデアやヒントにつながるものです。

その幸運は偶然ではないんです!」を書いたクランボルツ教授は、「キャリアの8割が予期しない出来事や偶然の出会いによって決定される」と言います。そのためには、漫然と待っているだけでなく、運のいい人に声をかけてもらえるように自分を高めることや、頼まれやすい顔(雰囲気)になることも必要です。

効率はもちろん大切ですが、そればかりを追い求めると、偶然や予期せぬチャンスがやってきません。なぜなら、運は人が運んでくるものだからです。それをセレンディピティといいます。ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみとることです。

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