居心地のいい場所が人の成長を止める
今日のおすすめの一冊は、サチン・チョードリー氏の『「運がいい人」になるための小さな習慣』(アスコム)です。その中から『「運がいい人」になるために』という題でブログを書きました。
本書の中に「居心地のいい場所が人の成長を止める」という心に響く話がありました。
近年、心理学やコーチングの分野などで、「コンフォートゾーン」という言葉 が用いられるようになりました。 コンフォート (comfort)とは、直訳すると「安全」、あるいは「快適」という 意味。つまり、ストレスや不安を感じることのない、居心地のいい快適な環境を 意味しています。
たとえば、毎日決まった業務をこなすだけの職場や、長い付き 合いで楽な人間関係など、さして刺激がない代わりに、リスクを感じることもない場所が、みなさんにもあるのではないでしょうか。 コンフォートゾーンとは、まさにその感覚に近いものです。
この言葉はもともと、アメリカの心理学者であるロバート・M・ヤーキーズと ジョン・D・ドットソンが提唱した、「ヤーキーズ・ドットソンの法則」と呼ばれる生理心理学の基本法則に端を発するといわれています。
このふたりの心理学者は、人間を取り巻く環境について、心の平穏を感じる環境とそうではない環境の2パターンに分類したうえで、ある仮説を実証しました。 それは、人はある程度のストレスを感じる環境に置かれたほうが、高い能力を育み、発揮することができるというものです。
一方で、立場や職業にかかわらず、人間とは「易きに流れる」生き物です。 楽で居心地のいい場所に居続けようとするのは安全を求める本能であり、もし 目の前に楽な道と苦難の道があるなら、楽な道を選ぶのは当然のことでしょう。
これは、必ずしも悪いことではありません。結果や成果が同じなら、余計な苦労 やストレスを抱えることなくスムーズに事をなすに越したことはないからです。 ただし、「効率重視」であることと、「精神的な怠慢」はまったくの別物と考える必要があります。
なぜなら、居心地のいい環境では、人は成長することができないからです。
◆学生時代の部活で、練習よりも試合のほうがいい結果を出すことができた。
◆どうしても定時に帰らなければならない予定がある日に、いつもより速く、それでいてクオリティの高い仕事をこなすことができた。
◆緊張して不安でいっぱいだったプレゼンが、思いのほかうまくいった。
不安があるからこそ、いつもより高い集中力を発揮できたり、コミュニケーションに対する積極性が生まれたりするこのような例は、誰でも経験があるはずです。
環境に慣れるということは、すなわちコンフォートゾーンのなかにいることと同義です。このゾーンのなかにいるかぎり、人は磨かれることも成長することもありません。 人が成長するためには、適度なストレスという摩擦が必要。 では、それを感じるためにはどうすればいいか? 答えは簡単。コンフォートゾーンから抜け出せばいいのです。
そこで注目したいのが、コンフォートゾーンの外側にあり、適度なストレスと高い学習効果が得られる「ラーニングゾーン」です。人間が磨かれるのは、まさにこの環境です。 日本にも「若いときの苦労は買ってでもせよ」という故事がありますが、あえて茨の道を行くことで何かを得ようという考え方には、しっかりとした裏付けが あるのです。
ただし、ストレスや負荷がかかりすぎると、ラーニングゾーンを飛び出し、今度は「パニックゾーン」に入ってしまうので注意が必要です。 こうなると、過度なストレスが心身に悪影響を及ぼす可能性があり、成長どころか社会生活に支障をきたすリスクすらあります。
狙うべきはあくまで、コンフォートゾーンのすぐ外側にあるラーニングゾーン。 適度なストレス環境に身を置くのは、決して難しいことではありません。日常生活のなかにおいても、ちょっとした工夫、わずかな視点の切り替えによって、成長のチャンスを得ることが可能です。
コンフォートゾーンを抜け出すには、今までやったことのない何か新しいことをすることです。「新しいコミュニティに参加する」「人前で話をする」「SNSで発信する」「転職する」「副業を始める」「初めてのところに行く(場所、店、レストランなど)」「本を読む」「学び直す(大学や大学院に行く)」等々。
「居心地のいい場所が人の成長を止める」。「コンフォートゾーン」を抜け出し、自分を少しでも高めたいと思います。
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