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流れにまかせる

今日のおすすめの一冊は、保坂隆氏の『空海のことば』(MdN新書)です。その中から「とにかく一歩を踏み出してみる」という題でブログを書きました。

本書の中に「流れにまかせる」という心に響く文章がありました。

《調子がよくないときは流れにまかせ、無理するな、無理するな》 

「意(こころ)に文を作らんと欲せば、興に乗じて便(すなわ)ち作れ。若し煩(はん)に似(に)れば即(すなわ)ち止めて、心(しん)を令(し)て倦(う)ましむる無(な)かれ」(『文鏡秘府論 南』)

「文章を書く仕事は、調子のいいときに一気に進める」といった意味です。現代のビジネス パーソンに当てはめれば、「文章を書く」という部分を置きかえて、「仕事は、調子のいいときに一気に進める」と読んでもいいでしょう。

また、「なかなかうまくいかないときは、いったんそこから離れて休み、心が疲れないようにしなさい」と教えているのです。

仕事に好不調の波はつきものです。仕事にかぎらず、スポーツや勉強、あるいは好きな趣味でも、スランプに陥ることもあれば、自分でも驚くほどの絶好調という日々もあるでしょう。 


じつは、空海のこの言葉には続きがあります。「いつもこのように心がけて実行していれば、創造力、あるいはアイデアが尽きることはなく、また、精神的に疲れるようなこともない」というのです。 

趣味にしても同様で、たとえば釣り好きの人なら、アタリが続く日もあれば、まったく釣れないこともあります。そんなときは潔く「今日は納竿」と、その日の釣果を諦めることも必要でしょう。 

「まだまだ」と続けているうちに、波が荒れてこようものなら、身の安全にもかかわります。 「多少の無理をしても、無茶はするな」という言葉もあります。

調子がよければともかく、 そうでないときは、おとなしく休む、いっそのこと寝てしまうにかぎるようです。ただし、 そうなると大切なのは、ふだんの努力ということにもなりそうです。 

《調子がいいときは波に乗れ。そうでないときは、いっそのこと休め。それを見極める目も養え。》

陶淵明に「帰去来辞(ききょらいじ)」という詩があります。彼は41歳で、いまでいう郡の役所の長くらいにまでなりましたが、公務員に嫌気がさし、自分の故郷に帰っていく途中で「帰去来辞」を詠むのです。

その詩の最後に書きつけた言葉があります。「いささか化(け)に乗じて以て尽くるに帰し  かの天命を楽しんでまたなんぞ疑わん」

どんな変化が来てもそれに乗っかり、その変化が尽きるにまかせよう。そして、これが天命なんだと信じて疑わない。陶淵明はそう決意を述べるのです。(流れにまかせて生きる 変化に応じる「観音力」の磨き方/PHP)より

自分の人生は自分で切り開くものとか、自分の目標に向かって進むもの、と考える人は多い。学校や社会においての「教育」の中の大きな価値観の一つだからだ。

しかし、一方で「流れにまかせて生きる」という生き方もある。小林正観さんはそれを「頼まれごとの人生」という。人(天)から頼まれたことを淡々とこなしていくという人生。

目標に向かって生きるという生き方は、目標が叶うこと以外は、すべて否定するという生き方。反対に、頼まれごとの人生は、起こったできごとや頼まれたことを受容するという肯定の生き方。

変化が起きたとき、「ああ、なるほど、そうきましたか」と抵抗しないで、すべて受け入れる、ゆだねる生き方でもある。

色々なことが起こる毎日を、淡々と、流れにまかせて生きることができる人でありたい。

今日のブログはこちらから→人の心に灯をともす


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