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「まちライブラリー」はまちを変える
今日のおすすめの一冊は、磯井純充氏の『まちライブラリーのつくりかた』(学芸出版社)です。その中から「まちライブラリーとは」という題でブログを書きました。
本書の中に『「まちライブラリー」はまちを変える』という心に響く一文がありました。
私は、いまの社会は、大きな火力を使って、大きな鍋でシチューやカレーを煮ているような ものだと感じています。鍋も、台所のコンロに置ける程度の鍋であればいいのですが、家ほどの巨大なものになると、外からの火力で中の具材を温め、おいしいカレーやシチューをつくるのが難しいことは、誰でもわかると思います。
しかし、こうしたことはよくあります。より大きな物事を成し遂げるには、より大きな力を出せばできるといった勘違いがある。ましてや、大きな鍋同士をくっつけてさらに大きな鍋にして、もっと大きな果実が得られることはありません。
しかしながら、実際にはA市とB町を合併したり、 C会社とD会社を合併したりすると、よりよいものが生まれるかのような錯覚を起こしているのです。 おいしいものにするためには、中身の具材が、それぞれおいしいものに変質していく必要が あるのです。
そこで参考になるのが、酵母菌なのです。 鍋の中に酵母菌を入れて発酵すると、おいしく変質するものがたくさんあります。日本酒はもちろん、納豆や味噌など、発酵を利用しながら、物を変質させ、自分たちの生活にとって役立つものにしていく知恵が、日本の文化にはあります。
我々の社会でも、大きなものを力ずくで変えるのではなく、中にいる一人一人が変わってい くことで、いいものに変えていくという方法があると思います。
まちライブラリーは小さな力ですが、そこに参加する一人一人が変わることによって、全体として、いいまち、いい地域に 変わっていくことを目指しているのです。
何か大きなことをやろうと思うと、組織力が要る、お金が要ると言われますが、逆なのでは ないでしょうか。組織ができ、大きくなっていく過程で、本来やるべきミッションは、むしろ失われがちになるのではないか。足して二で割ると言いますが、足してたくさんで割 るのですから、思いがどんどん薄れていきます。
それに対して、個人の活動は、思いが抜きん出ています。多くの小さな図書館活動がそうです。 公共図書館や大学図書館ではなかなか出し得ない、組織よりも個人の思いが抜きん出ている世界が、一番大事なのではないでしょうか。
もし大学や公共図書館に勤めていても、自分の時間はあります。自分の力でやる部分も必ず残していることが、大事なのではないでしょうか。 個人としての思いを出せる場として、まちライブラリーを活用してほしいのです。
最近、「交流人口」と「関係人口」という言葉をよく聞く。総務省の定義では、「交流人口」とは主に観光に来た人をさす。
「関係人口」とは、その地域に変化をもたらす、地域と多様に関わる人々のことをいう。具体的には、兼業や副業などの仕事を絡めていたり、祭りやイベントの運営に参画して楽しむなどファンベースの交流を重ねたりするなど、さまざまな活動をさす。まさに、まちライブラリーのことだ。
まちライブラリーは小さなムーブメントだが、確実にそのまちを変えている。
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