本当は、中小企業の方がイノベーションが起こしやすい
今日のおすすめの一冊は、成毛眞氏の『2025年日本経済再生戦略』(成毛眞&冨山和彦/SB新書)です。その中から「問題は、自分がどう生きるのか」という題でブログを書きました。
本書の中に「本当は、中小企業の方がイノベーションが起こしやすい」という心に響く一節がありました。
「お金がない。人がいない。中小企業はどうすればいいのだ」イノベーションを進めよと言うと、決まって聞こえてくる声の1つだ。だが、こう言う人は、「イノベーション=自前で開発したもの」という思い込みの罠にはまっているのではないか。
自前でやるなら、経営者の器や眼力、資金力が非常に重要になる。たとえば大学と一緒に何かを開発しようとなったら、成果を得るために必要な人材、能力、設備、そして資金を的確に判断しなくてはいけない。だが、極端にいえば、こうした眼力や資金力はイノベーションの必須条件ではない。
イノベーションは自前でなくてもいいのである。そんなコスパの悪いことをしなくても、今は、世界中の頭のいい人たちがさまざまなサービスを競うように開発し、クラウドに仕上げてくれている。そういうオープンソースを使わせてもらえばいい。つまり、ユーザーになればいいのだ。
そうすればAI人材を大量採用しなくてもすむ。中小企業はもちろん大企業でも、ほとんどの場合がそうだ。システムの知識が豊富で、どういうシステムが一番いいかという目利きができ、使いこなせる人が一人いれば十分だ。それもフルタイムの正社員でなく、外部アドバイザーで構わない。
イノベーションというのは新たな結合によって社会やビジネスを大きく変えるような新しいやり方を創出することを意味している。大事なのは、誰も解決できていない問題を何とかしたいとか、何かすごく素敵なことなのでお金を払ってでも実現したいとか、そんな思いを実現するためにいくつかの要素、それは新しいものでも古いものでもいいからくっつけてみることだ。
この際、その要素は全部、他人からの借り物でもOK。誰もやっていない組み合わせを実現することのほうが大 事なのだ。
あらゆる意味でオープンソースが豊かになっている今は、「自前でどんないいものをつ くるか」よりも、「よその誰かがつくったものをいかに組み合わせて、他社よりも優れた 商品、サービス、ビジネスモデルを生み出すか」という「オープン・アーキテクチャー思考」が、ますますもってイノベーション力の源泉、企業の付加価値の源泉となる。
すでに世の中にあるものを安く手に入れ、掛け算して活用する。端的に言えば、これが 今どきのイノベーションの真髄だ。
勝負は世の中の森羅万象に好奇心をもち、感度を上げて新ネタの探索を続け、いいもの を見つけたらアジャイル(素早い、頭の回転が速い)に行動する組織能力、人数よりも個々人の才覚のほうなのだ。
好奇心、感度、スピードといえば、当然、若い人材のほうが旺盛だし、若い人の多い新しい会社のほうが有利である。 また、自前の開発要員とか情シス要員とかをたくさん抱えていない中小企業のほうが、自由に外部資源に目を向け、少数精鋭でオープンイノベーションを進めやすい場合が多い。
日本には、イノベーションが遅れている地域や産業が多い。 これは、あたかも100メートルを30秒で走っているようなものだ。GAFAMと勝負しようと思ったら、あるいは東京のグローバル競争型ビジネスで最先端を目指そうと思ったら、100メートル9秒台を目指さなくては太刀打ちできない。
しかし、みんなが30秒で走っているところならば、少し努力して25秒で走れるようになれば余裕で勝てる。実はそういう産業や地域が日本にはたくさんある。 そこでは、「イノベーションを起こせる部分はないか」とちょっと本気で考えるだけで、勝てる企業になる可能性が一気に高くなる。
その部分で業務の「分ける化」「見える化」 をして無駄を省き、生産性を上げるだけでいいのだから。 「あらゆる産業、あらゆる業種で、こうしたイノベーションの発想をしてもらいたい。そ うやって労働生産性を向上させ、賃金を上げていくべきだ。
さもなければ、少子化で労働人口はどんどん減り、外国人労働者は賃金の安い日本に見 向きもしなくなり、「そして誰もいなくなった」状態になってしまう。本当に老衰国家と なってしまうのだ。
大企業と比べてないないづくしの中小企業です。しかし、実はそれが別の視点から見ると、しがらみにとらわれない、決定が早い、忖度しないでベストなオープンソースを選べる、自前のAI人材がいないので大企業のように自社の開発チームに気を使わなくていい、というような利点もあります。
つまり、やる気さえあれば、中小企業の方が、ある面では、イノベーションを起こしやすいとも言えるのです。要はトップのやる気です。
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