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書店が消えてゆく

30代のころ「深夜特急 沢木耕太郎著 新潮文庫」を読んでいて、当時5巻まで読んでいたが、最終巻の6巻はなぜか読まずに過ぎていた。
そして60代になって、1巻から読み返し5巻まで読み終え6巻がないことに気付いた。

書店に行っても置いていないだろうと、amazon で注文したところ、翌日の日曜日昼には郵便ポストに届けられた。便利な時代になったものだとつくづく思う。そして書店が急激に減っていることに思いいたるのだ。

私の住んでいる町でも、郊外型の大きな書店が昨年閉店し、駅前の蔦屋はもともと売り場面積のわずかしか本売り場はなく、半分はレンタルCD、DVDで残りの半分はトレーディングカード売り場で、その残りが書店と文具売り場となっていて、探した本がある確率は限りなく低い。

電車で20分行けばオリオン書房があるが、そこも徐々に書店売り場は小さくなっていて、この間立ち寄ったら、なぜかガシャポンがたくさん置いてあり、奥のスペースは別テナントとなっていて書店としての面積は当初の半分くらいになってしまっている。

書店経営が厳しくなっているのは、ネットの普及でやむを得ない現実なのだろう。このまま行けば、町から書店が消える日はそう遠くないと思われる。私は若いころ、書店に努めていたこともありその難しさは手に取るようにわかる。

本は雑誌も含めてほとんどが、委託販売で売れなければ返品ができるシステムになっている。一見リスクが少ないように見えるがその分本自体の利益率は低い。その上ベストセラーの本は売れ残りを恐れて無理な増刷はしないので地方の弱小書店にはなかなか入荷しないという現実もある。
だからと言って、たくさんの品ぞろえをしようとすると、家賃の高騰、商品回転率の悪化に伴う資金繰りの悪化と書店経営には逆風しか吹かない構造になっている。それに追い打ちをかけるようにネットの普及がとどめを刺している。

よって町の書店は、ベストセラー本が少なく、ほしい本の品ぞろえも難しく、客足は遠のくという負のスパイラルから抜け出ることができない現実がある。

この傾向は地方の町から徐々に主要都市の書店にも広がっているようだ。経済効率からいうと、このように書店は足元から崩れ去って消えてゆく宿命にある。ただそれが人々の望むことではないことは明らかで、人々のニーズと経営難という相反する命題が立ちはだかっていて、この問題はとても重大なことだと感じている。

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