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<なんで働いているんだっけ?>のとき、手にしてみるとよいかもしれない本。

 坂口恭平さんの、今から12年前に出版された本。でも全く時のうつろいを感じさせないです。それだけ、社会が大きく変わってないってことなのかもしれなくて、でもこの本に出会ったタイミングは、自分にとって大事なポイントかもしれないって感じさせてくれる内容です。

坂口恭平が抱える、子どもの時からの質問  ———
1. なぜ人間だけがお金がないと生きのびるうことができないのか。そして、それは本当なのか。
2.毎月家賃を払っているが、なぜ大地ではなく、大家さんに払うのか。
・・・中略(全部で8まであります)・・・
こんな質問をあなたの子どもがしたら何と答えるだろう。

「独立国家のつくりかた」坂口恭平 P.7 まえがき より


「生きのびるための事務」坂口恭平 P.79 のジム(お借りしました)

 私たちは社会を生きる上で、常に自分のフィルター越しに世界をみているわけですが、この本はいい意味で、フィルターの「ラベル」をぺろりと剥がしてくれます。そんなの当たり前じゃんって、スルーしがちな「ラベル」です。当たり前だからこそ、気づくことができないので、あなたの常識に一石を投じてくれる本です。優しく投じてくれるものだから、ついつい読みたくなっちゃいます。

生理的におかしいことを受け入れてはいけない。それは疑問として、ちゃんと自分の手前でとどめておかなくては駄目だ。体内に入れて咀嚼してしまったら、自分が駄目になってしまう。

「独立国家のつくりかた」坂口恭平 P.67 第2章 より

 私の場合は、療養期間を2年以上過ごして今に至っているのですが、そうすると、どうも現代社会になじめなくなってしまっている感じがあって、やり場のない憤りというか、どこか抑圧的な気持ちが心の中で渦巻いている感じがあったのですが、この本を読んで、それらが少し静まるというか、楽になる感じです。読み終わる頃には、心がスッと軽くなります。久しぶりに、熟睡できた翌朝、この文章をかいています。

 苦しい時にたどり着く本の中で、東日本大震災後にかかれたものは特に響くものがあって、心の底に触れてくれる本は多くないのですが、その多くないもののうちの1冊だと感じています。

 そして、ラベルをいちどはいでみたからそ、できることを、今の自分にできる範囲で、休憩しながらやるだけだな、と思い直させてくれた声がこちらです。

試せば試すほど、人間はどんどん智慧を身につけていく。そして恐怖心が和らいでいき、どんな困難な状態であろうと淡々と生きていくことができるようになる。なぜはら試すことで「知った」からである。自らの生活に必要な「量」を。不安ではなく恐怖の実体を。つまり、つまり生きるとは何かを。

「独立国家のつくりかた」坂口恭平 P.57 第1章 より

 著書の坂口恭平さん、40冊以上出しておられますが、この本が一番売れているそうです。やっぱり必要な本は、必要な人のもとに届くのでしょうか。売るために書いていないからこそ、届くものがあるのかな、そんな風に思っています。そのうち、「生きのびるための事務」の本が、これを越すのかな。今の私には、坂口さんのまだ読んでない本があるっていう楽しみがあり、そういう幸せがあるって素敵だなって思えている今の自分にホッとします。