【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか156】11月(19)ピラティス
火曜日の午前はフランス語ベーシックで生徒をやり、夜は日本語のオンライン授業で先生の真似事をする。木曜日はフランス語アドバンスでぜーはー言い、週の締め、金曜日はピラティスだ。週に三回、歩いて10分の公民館に通っている。公民館のスタッフも、東アジア人のばあさんを覚えたようだ。
ピラティスでは、11月に入ってボールを使うようになった。ハンドボールぐらいの小さなのと、いわゆるバランスボールと、2つである。小さなのは買ってきた。バランスボールは娘が椅子代わりに使っているものがあるので、それを金曜日の朝だけ持って行く。
まあ、想像してみてください。大きなバランスボールを抱えたばあさんが、てくてく歩いている光景を。いちいちぺしゃんこにして持って行ってから膨らませるなんて時間はないから、大きいまま持って行くわけです。一度はトラムの線路を横切っているときに落として転がっていって、慌てた慌てた。
道路工事のおっちゃん(とはいえ、きっと私より年下)に、「それ何?」と聞かれたこともある。「ぴらっと!!(Pilates、元はドイツ語、英語ではピラティスですが、フランス語だと「ぴらっと」になります)」と叫んで、ついでに背中のリュックからはみ出ている小さな方のボールも、ほれほれと見せてみた。「おお、頑張れ」励まされちゃった。
流石に雨の日にこれを抱えて歩くのは無理だろう、どうしようと思ったら、ちゃんとボールを運ぶ用の紐が売られてるんですね。ぐるんと直径に回してから締める感じ。身長が低いせいで、ぶら下げると地面についてしまうので、紐を使っても持ち上げなければいけないけど、両手で持って歩くのに比べたら、こりゃ楽ちん。運ぶのも楽勝だ、と思って油断していたら、途中で紐が緩んでボールが転がっていった。危ない危ない。
娘が家で椅子として使うときには、ぱんぱんに膨らんだ状態だ。しかし、そのままでは私にはちょっと大きい。初めて持って行ったときには先生のヴァージニーに「これじゃダメ!」と言われて、その場で空気を抜かれた。座ったときに、太ももが床と平行になるぐらいにすればいいみたい。「今度から、この状態で持ってきてね!」とのこと。
ぱんぱんの状態よりも多少空気が抜けている方が、持ち歩くにも上に座るにも足で挟むにも楽だ。そこで、次の回は気持ち多めに空気を抜いていった。楽しようと思って。そしたら目敏く「それじゃ減らしすぎ!」と、ぱっこんぱっこん膨らまされた。ばれたかー。そしてまた次の回は「もうちょっと減らして!」と空気を抜かれる。うーん、塩梅が難しい。
大きなボールに体重を乗せて、いろんな姿勢でバランスを取る。お腹を引っ込めて、筋肉を引き締める。鼻から息を吸って、口から吐く。胸式呼吸だ。思っていた以上に、ピラティスは難しい。足や横隔膜がつりそうになる。
もともと運動神経がゼロに等しく、小学校の運動会予行演習で右手と右足を一緒に出して、朝礼台の上から先生に怒られたのがトラウマの1つだ(今だったら、先祖が武士なんです!って口答えするかもね、嘘だけど)。ボールに身体を預けると、途端にぐらぐらする。インナーマッスルが鍛えられていないのと、身体の使い方が下手、バランス感覚が鈍いんだと思う。
ヴァージニーに「口で言うのは簡単だけど、実際やるのは難しいわよね。まず、ボールを怖がらないことが大事。家でもボールと遊ぶようにしてね」と言われた。…ボールと友だち…? 翼くんかな? 続けてるうちに、ちょっとはできるようになるかしら。なる気がしねー。でも、できなくたって誰も何も困らないことに挑戦するのは、楽しい気がする。