読書感想文 音楽 三島由紀夫
音楽 三島由紀夫
弓川麗子という音楽が聞こえない不感症の美しい女を、精神科医の汐見が精神分析し治癒を目指していく物語。
オルガスムを音楽といって例えている。よって不感症の事を音楽が聞こえないと言う。
麗子の恋人隆一は元ボート部で筋骨隆々、肉体も精神も充実しているが麗子のことは満足させられない。その原因を麗子は話せずにいる。困って精神科医の汐見に相談するもそう簡単に心は開かない。トラウマになった過去と麗子は向き合い、その麗子に振り回されながらもめげずに向き合った汐見。音楽は聞けるようになるのか?
麗子の音楽が聞けなくなった理由は10歳上の兄との近親相姦だった。その甘美な記憶が抜けずにいつまでも音楽が聞けなくいる。
音楽を取り戻すまでの過程が麗子だけでなく、麗子の出会う人間から汐見先生までの精神が丁寧に描写されている。
麗子が嫌いで拒否していた許嫁であるまたいとこが末期のがんになり、その嫌いでしょうがないまたいとこを死ぬまで看病したその時、音楽らしきものを聞けるようになる。その後旅先で出会った自殺未遂の男。でその人は不能者。男版の音楽が聞けない青年との出会いから、付き合い看病することで音楽らしきものを聞く。
そして不感症の原因の兄との出会い。
汐見の視点で描かれている話だが、麗子が不感症になった精神的な状況から音楽を取り戻すまでがとても丁寧に描かれていて読みやすい。
三島先生自身が精神のことについて勉強されていたんだろうなと思ったし、そのあまりある語彙力で物語を作っているのは流石です。
三島先生自身子供の時に読んだ、兄妹が墓穴で永遠に愛し合う話に対し兄妹愛を越えて肉欲になることに感動を覚えたらしい。
その子供時代の感動を大人になってその兄妹の精神を分析し作品に残すとは流石です。
第一に三島先生自身の自己分析があってからこそだと思いました。その自己分析の最たるものである仮面の告白も読みたいなと思いました。