『オーリエラントの魔道師たち』(再読)
乾石智子 著、創元推理文庫(小説)
〈オーリエラントの魔道師〉シリーズの短編集を再読。
収録作は
・陶工魔道師
・闇を抱く
・黒蓮華
・魔道写本師
の4本です。
『陶工魔道師』はお気に入りだから何度か読んでるし『闇を抱く』も流れで読んでいるけど、まるまる1冊読むのは1年3ヶ月ぶりぐらい。
暗くて重くて陰鬱な印象しかなかった『黒蓮華』に温かみや救いを感じ、再読してみるもんだ、と思った。
役人のアブリウスがああなるのは当然の報いというか、まったく同情する気持ちにはならないけど、復讐を果たせたそのことよりも〈白花〉(アブリウスの家の使用人)によって、主人公であるプアダンの魔道師の気持ちが浄化された様でよかった。
恨みや怒りなど、そういう感情を持つに至る経験をしたことも悲劇だけど、そういう感情をずっと持ってしまうこと、捨てられなくなってしまうことも悲劇だと思うから。
それからアブリウスの息子セブリウスの視点で家の中の状況が描かれたのち、使用人の〈暑がり〉〈傷男〉〈耳男〉の中の誰かである魔道師視点に移る構成に、誰だよ誰だよと前のめりになってしまった。
なんにも覚えてなくて面白い。
最後も穏やかでとてもよかった。
他の話についても簡単に。
『陶工魔道師』は太った黒猫に変身できるギャラゼが面白いと思っていたけど、ヴィクトゥルス(主人公)の弟子のロイもよいなと思った。
フィーチャーされるキャラクタではないけれど、こういう “普段は落ち着いているけどここぞという時には声を荒げたりもする兄弟子キャラ” みたいのがツボなのかもしれない。もうひとりの弟子とのコンビがアニェースの兄ちゃんたち(※自作キャラ)みたいでもあるなぁと思ったりなんかして。
『闇を抱く』は、様々な事情で苦しむ女性や少女たちを「 呪い」を使って密かに救っている魔女の秘密組織の話。
彼女たちの邪魔をする立場にあるサークルク王子(若く見えるアラフォー)は結局魔女たちの手の平の上なのだけど、間抜けには見えない。ちょうどいいライバル関係という感じ。
なんかちょっと『キャッツ・アイ』みたいだ(今気づいた)。王子と組織のひとりが夫婦だし。
最後は『魔道写本師』。同著者の『夜の写本師』にも出てくるイスルイールの昔の話。『夜の写本師』のときのイスルイールがどんなだったか忘れてるもんで、とにかく甥っ子がうさんくさく、若いのに君そんな目つきでダイジョブかねと心配になった。弟も本当に信用してよいのやら……とも。
女の子の正体も案の定忘れていたのでびっくりした。