『パワードスーツSF傑作選 この地獄の片隅に』
J・J・アダムス 編 中原尚哉 訳/創元SF文庫(小説)
『自生の夢』(飛浩隆)と一緒に買った本。
我ながら両極端な良いチョイスだったと感心する。
パワードスーツの定義には、アイアンマンのようなものから巨大人型ロボットのことまでも含まれるのだとか。
FF6の魔導アーマーぐらいの大きさのものだけだと思っていたので意外だった。
アイアンマンはわりとほっそりピッタリしてますよね。C-3POほどじゃないけど。いや、C-3POの中には人なんか入ってないですけどもね。
パワードスーツはパワードアーマー、または単にスーツ、アーマーなどとも呼ばれ、この本の中でも作品によって呼び方が変わるのでなんとなく察してください。
『この地獄の片隅に』 ジャック・キャンベル
SF初心者目にも「これぞパワードスーツSFだね!」という感じの、異星でパワードスーツを着て異星人と戦ってる話で最高。
スーツで筋力を補えるから軍の中での男女の扱いに差がないようで、ふと気づくと上官が女性だったりすることにいちいち驚いてしまった。
オチも「えすえフゥ〜!」という感じで興奮しました。
『深海採集船コッペリア号』 ジュヌヴィエーヴ・ヴァレンタイン
異星の海底で採集の仕事をしているコッペリア号の話。
パワードスーツのことを「メカ」と呼んでいて、私も機械はなんでもメカと呼ぶので親近感を覚えた。
登場する三体のメカたちに「性格」と呼びたくなるような違いがあってかわいかった。
『ノマド』 カリン・ロワチー
パワードスーツ目線で語られる話。
生まれた時から人間とパワードスーツ(ラジカル)が融合し、固い絆で結ばれているギャングの世界。
人間を失ったラジカル「オレ」の復讐譚。
『自生の夢』に出てきた、感情や思考を勝手に記録する〝Cassy〟は嫌だと思ったけど、生まれた時から自分だけのラジカルと融合してるのは、なんかいいなあと思った。生まれた時から許嫁がいるみたいな感じかな。違うか。
『アーマーの恋の物語』 デヴィッド・バー・カートリー
暗殺を怖れてアーマーを脱がない男性と、この人を殺しに来た女性とのやりとり。
ふつうという評判を知っていて、確かにふつうだなと思ってしまったので面白かった。
主人公の男性が、まったくいいとこのないトニー・スタークという感じなのでときめかないのです。
『ケリー盗賊団の最期』デイヴィッド・D・レヴァイン
SF西部劇。隠遁生活を送る老発明家が、盗賊団のカシラに命じられて「甲冑」を作ることになる話。
発明家がだてに長く生きてないなと思える判断をしてよかった。
『外傷ポッド』アレステア・レナルズ
任務中に大けがをし、その場で外傷ポッド(遠隔操作された腕があって、中で手術も出来る)に入れられた兵士の話。
『このじご』でもスーツ内で治療する場面があった気がするけど、負傷しても戦場から帰されず、その場で即座に治療する、そんな時代なんですね。
結末は当人が幸せそうなのでにこにこする。
『密猟者』ウェンディ・N・ワグナー&ジャック・ワグナー
貴重な自然を有する保護区・地球を密猟者どもから守る自然保護官の話。サスペンスフルだった。
月出身の主人公の目から見る地球の姿がうつくしく、いま現在自由に地球に住めているしあわせと幸運を噛みしめた。いつだって地球は保護区なのかもしれない。
これもスーツの中でめっちゃ治療する。
『ドン・キホーテ』キャリー・ヴォーン
1939年スペイン内戦末期。共和国側を取材していたアメリカ人記者の前に、巨大ロボ的なパワードスーツ登場。
記者がロボに乗らせてもらったときの内部の描写がすてきでした。『ケリ盗』同様にスーツの中が「暑い」というのが良い。
『天国と地獄の星』サイモン・R・グリーン
植物に襲われる惑星アバドンの話。
主人公をはじめ、作業員としてアバドンに送り込まれた人たちは皆、ハードスーツがなければ生きていけない。逆に言えばハードスーツと繋がっている限り死ぬこともできない。どんなに自分自身を呪わしく思っても…。その境遇がつらいので、やはりあの結末はしあわせだろうなと思う。
『所有権の移転』クリスティ・ヤント
着用者を殺された外骨格の話。
着用者を殺したやつに乗っ取られた不快感が綴られている。乗っ取ってきた奴が本当にやな奴で小者でどうしようもない。
『N体問題』ショーン・ウィリアムズ
宇宙の果て(ある意味)にたどり着き、一方通行なので足止めを食らった主人公とメカスーツを来た女性の話。
宇宙の果ての謎も解明されたりするけど、基本主人公がメカスーツの人をずっと口説いてる。
そう考えると『アマコイ』(アーマーの恋の物語)の男女逆バージョンとも言えるんだけど、アーマー脱がない女性に魅力を感じる気持ちはなーんとなく分かる。
『猫のパジャマ』ジャック・マクデヴィット
猫SFってゆうものがあるんだってさ。なんだって!?
宇宙に浮かぶ船にとり残された猫ちゃん・トーニー(三毛猫)を助ける話。
どんな状況になっても助けない理由がなくて○。
主人公が指導する訓練生・ハッチンズ(ハッチ)が機転がきいて主人公より頼もしくて印象に残っている。さいしょ「猫はおいてけ」みたいなこと言ってたけど許す。
ほのぼのとしてさわやかな、地獄とはほど遠いふんいきでした。
気に入りトップ3
1位 外傷ポッド
2位 天国と地獄の星
3位 所有権の移転
1、2位は決定。3位以下は暫定的。「いつまでもしあわせにくらしましたとさ」みたいな終わり方がマジニすきなのですが、どうやらSFだといわゆる「メリバ」がすきなようです。