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2024年9月の記事一覧
持たざる者のサバイバル・タロット愚者の旅 第1話(改訂版)
ボロボロのマントを纏ったその男は
杖にしがみ付くようにして坂道を登った。
周囲が見渡せる場所に着く頃には
額は薄っすら汗ばみ、息切れがした。
男の視線の先には、小高い丘の上に小振りの城といえるほどの
石造りの館が建っていた。
もう何年、何十年経ったかも定かではない、
男は18であの館から旅立った。
記憶の中の館はもっと大きく立派だった。
館の周りは見渡す限りの農場と農園が今も広がっている。
男の
持たざる者のサバイバル・タロット愚者の旅第9話
大食堂の隣のホールでは、春祭りに招待された近隣の名士や
その夫人たちが華やかに着飾り、愛想笑いを交わし、
頭を寄せ扇で口元を隠しながら噂話を楽しんでいた。
そこへ大階段からこの屋敷の大奥様が
次男坊のテオと連れ立って降りてきた。
ホールに居た者は誰もが大奥様カロリーナの艶やかさに眼を奪われた。
男たちは心の底から「ウヲ~」と感嘆の声をあげ、
「大旦那様が羨ましい、いやいっそお辛いか?」と
下卑た