白血病になっていい子やめた#5
2023年11月、私は47歳で急性骨髄性白血病と診断されました。今も治療は続いています。この文章は治療の過程でついついしてしまう「我慢」「いい子(良い患者)」について綴っています。興味がありましたらお読みください!
入院生活をしていて毎日、私が一番発している言葉とは?それは「大丈夫です」と「ありがとうございます」です。病院の先生や看護師さんが毎日聞いてくれる「お変わりないですか?」に
すぐ「大丈夫です」と言ってしまう私がいます。これは嘘をついてる訳じゃなくて、その時は本当に大丈夫。もちろんお腹が痛いとか、吐き気がするとか、身体が辛い時はその事を具体的に言えるのですが、
例えば、今日はあんまりやる気がしないな〜とか、治療のこと前向きに考えられないな〜とか、明け方に少し泣いちゃったんだよな〜とか、そんな日もあったりします。
身体が辛い日は具体的に言えるけど、気持ちがあまり元気じゃない日は……「大丈夫です!ありがとうございます」と言ってしまう私。病院の先生や看護師さんはプロなので、いい子ちゃんをしてしまう私の性格や雰囲気を見抜いていて
「どんなことでも言ってくださいね」
「ちょっとでもイヤなことあったらすぐ教えてください」
「グチでも何でもぶつけてもらっていいからね」
よくそう言って声をかけてくれます。
病棟を歩いていると、看護師さんと患者さんのやりとりが聞こえてきます。
看「食後のお薬飲みましょうね〜」
患「やーだよー」
看「おねがい、飲みましょう」
患「やだね」
その他にも先生が回診で、一人一人の患者さんに話をしている時、中にはスマホゲームをしていて、話を聞いてるんだか聞いていないんだか、分からない人もいる(らしいですby先生)。
正直、私にはそこまでの態度をする気持ちも勇気はありません。じゃあいつも治療に前向きかというと全然そんなこともない……今イチな気分をグッと飲み込むと、小さな我慢が溜まっていきます。私の我慢が入ってる袋は伸び縮みするゴム製みたいで、毎日真面目にやってるじゃんと自分を褒めながら、なだめながら過ごしていくと、風船の中に空気みたいに、我慢がいくらでも溜まっていきます。一見小さな我慢でも、積もり積もってそれは人に言えないストレスにつながります。
どうすればいいんだろう?分からなくなった私は、妹に電話で話してみました。
「病気になって我慢すること、イヤなことがいっぱいあるんだけど、周りの人に気持ちをぶちまけたり、中々できないんだよね」
これまで妹にこんな話をすることがほとんど無くて、どちらかというと相談に乗ることの方が多かった。ビックリされちゃうかな〜。
妹は「そんなにいい子でいなくてもいいんじゃない」さらに「嫌な時は、不機嫌になっても怒ってもいいんだよ」とズバリ。戸惑う私は「えーだって今までそんなことしたことない」と返しつつ、心の中ではもう気付き始めていました。
私は今まで、冷静でしっかりものという自分のキャラを守りながら生活してきました。いい子でいたいとか嫌われたくないと思っていた訳ではなく自然にそうしていたのですが、40年以上やってきた行動をいきなり変えるのは思ったより大変なこと。でも白血病という病気になり、限られたスペースでの入院生活、抗がん剤治療で体調は優れない、検査も薬もいっぱい……病気の前とは嘘みたいに生活がガラリと変わってしまった今は、もうキャラにこだわっていられないのだと。
そして妹が言ってくれたのは
「どんな風になっても私はお姉ちゃんの味方だよ」
心につかえていたものがスーッと通るような気持ちでした。そうだ、周りの人の反応やどう思われるかを気にするより、まずは自分のことを一番に。今は私の病気がよくなるのが何より大事。もっとワガママになってやるんだーーー!こうして妹という最強の味方を手に入れた私は、無理にしゃべらない、無理に笑わない、無理に食べない、無理に受け入れない合わせない、嫌なことは嫌だって言う……そんな風に変わっていきました。
見た目、気持ち、環境、自分が急に前と大きく変わってしまった時、それでも今の自分を好きでい続けることって実はとても難しい。でもぐちゃぐちゃな私になっても、大好きな人が味方でいてくれる、この安心感は何にも代えがたいです。世界に一人でいいからそんな人がいると大変な病気も治療も乗り越えられるんじゃないかな。
まぁでも、治療や入院生活に我慢はつきものなのです。ある日、我慢の風船が大きくなってついに破裂してしまった日のこと、次回の文章で綴ってみたいと思います。