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何かにすがりたくなったときに読む本『夏の闇』(開高健)

「(略)酔いがさめる。酔えなくなったら生きていくのはつらいよ。つぎは何にすがったらいいか。そこをどう思う。何か酔えるもの、夢中になれるもの、ある?」
(略)
しばらくして私がつぶやいた。
「おれにはないんだよ」
女が息を吸って、低く、
「私にもないわ」

新潮文庫『夏の闇』開高健 166P

生きていると何かにすがりたくなる時がある。

  • 何かが上手くいっていないとき

  • これからの人生に迷っているとき

  • 行動する勇気や自信がないとき

"すがる"のは悪いことと思われがちだが、
何かにすがらないと精神状態を保てなくなることもある。

そんな時は、多少なら何かにすがってもいいのではないか、というのが個人的な意見。高額な壺や怪しいセミナーにすがるのはさすがにアウトだが、神社に参拝したりお守りを大切にすることだって、見方を変えれば”すがる”行為じゃないか。

『夏の闇』の主人公はベトナム戦争に記者として従軍した男が戦地から戻り、酒と性に堕落した生活を送っていたが、ある日また戦地へ戻っていくまでを描いた小説なのだけど、冒頭の言葉は日常に戻ったはいいが何に対しても希望も情熱も持てない男が女にいう言葉だ。

だけどね、思うのです。

遺言として伝いたいこと

長く情熱を注ぎ没頭できるものはそう簡単に見つかるものではない。
しかも、死ぬまでに見つからない人だっている。
何かにすがりたくなっても自分を否定しなくていいし、軽くなら何かにすがるのは全然問題ない。

もし苦しくなったら冒頭の言葉を繰り返し読んでみてほしい。
なんだ!みんなも大変なんだね!
と、気持ちが軽くなるはず。


このnoteはマガジン「遺言として残したい本棚 」に収録されています。
大切な人へ遺言として残したい本たちを集めました。本のどんな所でどんな風に救われたかの記録エッセイです。


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