空気感を描くカメラの話し
カメラで写真を撮ると、綺麗に写ってるけど物足りないなって思うことはありませんか?
例えば、抜け感のあるすっきりとした青空が撮れたとします。これってよくよく考えると、違和感がないですか?
だって、
空気とレンズの間には、光に作用する粒子的なものがあるはず。こんなに抜け感が出るのは違和感が…と思う時が私にはあります。
綺麗な写真は、撮影者の目の前に広がる情景を、より鮮やかに、かつリアリティを持った記録に変換します。
写真ってそれで充分なんでしょうか?
撮影した方以外が見て、撮影者の体験を追体験できるのでしょうか?
私、思ったんです。
目の前の情景をリアリティに、そしてドラマスティックな記憶を併せ持った記録として保存できるカメラがあっても良いのではないか。
そのカメラで撮られた写真を見ることで、その時の撮影者が目にした情景を追体験できるそんなカメラはないのだろうか。
そう考えた私が出会い、心惹かれ続けるカメラについてご紹介します。
はじめに
私はただのサラリーマンです。
高校生の頃から写真を撮ることにハマり、気が付けば様々なカメラに手を出すようになりました。
そんな私が出会い、愛するカメラを皆さんにご紹介したくnoteを書いてみました。
そのカメラとは
SIGMAの『sd Quattro H』です。
聞いたことないメーカーと思った方も多いのではないでしょうか。今回は、このカメラの魅力を感覚だけでお伝えしてみようと思います。
Foveonとの出会い
先述のとおり、リアリスティックかつドラマチックな描写ができるカメラを私は探していました。当時も今と変わらずカメラのど素人でしたが、メーカーごとに画作りが違うことは知っていました。
カメラ探しにあたり、街中の家電量販店を巡っていると、「空気感を写すカメラ」と書かれたPOPを見つけました。
そのカメラというのが『SIGMA SD1 Merrill』でした。
空気感?なんだそれ。と思った私は早速そのカメラのことを調べ始めました。すると出てくるのは打率1割のホームラン王という言葉。
なんだそれ?
またもハテナが出てきます。
すぐに、このハテナの由来はセンサーであることが分かりました。このカメラに搭載されたセンサーは「Foveon」センサーというものです。
他社製のカメラによく搭載されているセンサーとしてベイヤー式センサーというものがあります。このセンサーは色の三原色であるRGBをそれぞれバラバラで感受するするようになっています。
それに対してFoveonセンサーは多層構造で1箇所でRGBを縦3層で捉えます。 この違いで、細かい線の描写や色再現度に優れると言われます。
ただ弱点もあり、高感度耐性は0なのでISOは常に100だったり、バッテリーの消費も激しいです。
そのほか、ダイナミックレンジが低かったり、逆光に弱いなど撮影場所を選ぶため、良い写真は10枚に1枚程度となるわけです。
そんなセンサーを知った私は、その日からそのセンサーから生み出された作例を探すようになりました。そして、作例を目にするたびにこの画作りに心惹かれるように。
sd Quattro Hを手にして
私がFoveonセンサーに心奪われ始めた頃、SIGMAからFoveonセンサーを搭載した新機種『sd Quattro H』が出ました。
当時学生でお金もあまりなかった私でしたが、こればかりは即購入してしまいました。
初めて撮影した被写体は朝顔。花の質感や朝露の湿度感に感動した記憶があります。そんなこんなで私とFoveonセンサーの旅が始まりました。
人工物の質感にとらわれて
Foveonセンサーが得意とする被写体の一つに鉄やコンクリートといった人工物があげられます。特にサビが出ているようなものを見つけると、撮りたくなってしまうのがFoveonセンサーユーザーあるあるではないでしょうか。
また、布のテクスチャなどもしっかりと表現してくれます。上の写真はとある厨房の写真です。使い込まれ淡く反射するステンレスと、干してあるタオルの質感、その空間をそのまま写真に収めることができました。
空気中の粒子を捉えて
このセンサーが空気感ある写真を撮れると言われる所以は、空気の粒子をしっかりと描き出しているからなのではないかと私は考えています。
ある冷え込んだ朝、私は山深い林道を歩いていました。前日にちょっと雨が降ったからなのか、落ち葉は少し湿っていました。
そんな散歩道で見つけたのは、木漏れ日が光の線として地面にふわりと落ちていく情景でした。
その時持ち歩いていたのが、sd Quattro Hでした。このカメラで撮ったからこそ、柔らかく自然な光芒をそのまま描けたのだと、今さらながら思います。
空気中の粒子を描けるということであれば、炎や煙の様子もしっかりと描き出せます。上の写真は街のお祭りで焼き鳥が焼かれている様子。立ち上がる煙の様子を綺麗に描いています。
美味しさそのままに
次は食べ物の撮影です。
このセンサーで撮影すれば、食材のもつ色を発色良く見せ、美味しい見た目を写真に閉じこめ、香りまで感じさせているような気がします。
特に、フルーツの色は美味しさを際立たせているように思います。
夜景は空のにじみを描く
夜景は、時間と共にかわる空の色も楽しむ要素の一つです。夕方の赤い空がゆっくりと黒に変わっていく時間、いつまで赤色が残っているのかなともどかしく感じてしまいます。
黒い空へにじむ様に、差し色的に残った赤が夜景に彩を添えます。Foveonセンサーでは、この様子をしっかりと描けてしまうため、私は夜景撮影にその後ハマってしまうのでした。
眩しさに目を細めて
Foveonセンサーが苦手とすることの一つに逆光耐性の低さが挙げられます。
少しでも光源が入ってしまうとフレアやゴーストが出てしまいます。このデメリットを一概にデメリットであるとは言い切れないと私は思います。
フレアのおかげで光が広がっていく様子を表現できるのではないでしょうか。だからこそ、目を細めて眺めていたその情景を写真に収めることができるのではと思います。
一緒写り込むゴーストだって、写真を見る人へその眩しさを示しているかのようにも思えてしまいます。
光源が水面に反射し、その情景は撮影者を眩しく感じさせました。光源が複数あったこと写真を見る方へ伝えてくれます。
だからこそ、Foveonセンサー機だから逆光シーンでは使えないではなく、Foveonセンサーの可能性を信じてみる場面なのです。
センサーの特性に合わせて写真を撮るのではなく、センサーの可能性を信じる。そんなカメラってめんどくさいけれど、対話をしているようで楽しい。
ドラマチックに
特に編集を加えなくてもドラマチックな写真を撮ることも得意です。ただ、どうしてドラマチックに見えるのか、それを私の語彙力では言い表せません…
なんとなく、リアリティがあって、ドラマチックに見えてしまう。そんなことがこのセンサーと旅を共にしてから多くありました。
1度や2度通っただけの路地裏が何故か懐かしくノスタルジアっぽく感じさせる画作り。
旅先で撮った写真たちは、何度でもその場にいた時の記憶を思い起こさせます。
テクスチャを捉えられているからなのか、どうして懐かしさがあるのか、答えが出そうで出ない。そんなもどかしさが未だに引っかかっています。
私的に思うのが線の細さが影響しているのではと思う時があります。繊細なものを繊細に描けるから空気感を描けているのかなと。
さいごに
ここまではFoveonセンサーを搭載したカメラの良さを感覚で語ってきました。感覚での話でしたので、いまいち理解できなかった方もいらっしゃることでしょう。
このカメラの魅力は触ってみないと分からない。
そんなカメラです。ですが、もっと多くの方に魅力を知ってほしいと思っています。もっと言語化出来るようになったとき、またおすすめさせてください。
取り急ぎ私の熱い想いだけを知っていただければ幸いです。