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年末年始はドル円レンジもユーロ急落、米株は持ち直すか?中国金利急低下
結局レンジとなった年末年始のドル円、12/31に156.01円まで円高となるも
あけましておめでとうございます。12月日銀会合での植田総裁のハト派会見から急上昇したドル円相場、年末年始に海外勢による円キャリー再開で日本の通貨当局の介入もあるか?と警戒されましたが、警戒が強い時ほど何も起こらないものですね。ドル円相場はほとんど動意がなく小動きに終始。穏やかな年末年始となりました。明日1/6(月)から動きが出るでしょうか?
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日銀後のドル円の高値は12/26の158.08円、安値は12/31の156.01円。2円幅もあればデイトレ、スキャル勢には十分かもしれませんがトレンドフォローにとってはやりにくいレンジ相場でした。
ただ、12/31に156.01円まで崩れた時には、年末年始のリスクオフ、ドル円急落のシナリオもあるかと構えたことも事実。なぜ12/31ドル円相場は156.01円まで崩れたのか。米株がXmas明けからやや崩れたことが指摘されています。
Xmas明け、WSJニック・ティミラオス記事で手仕舞い売りか
米株はXmas休暇明けの12/27から再下落、1/2までの4営業日下落が続きました。これをリスクオフと捉えるなら円高も腹落ちします。特に12/30(月)の米国株下落は比較的大きく、米株下落となる中、米金利が急低下したことがドル円下落の背景だったかと思われます。これは前回12/31のnoteに書きましたが、その時は特にトリガー(きっかけとなるニュース)はなかったようだが~と書きましたが、色々ウォッチしていると12/27のニックティミラオスの記事で米株に利食い売りが広がった可能性が指摘されているようです。
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https://www.wsj.com/economy/central-banking/the-fed-is-tryingagainto-size-up-trump-77c8fc9b
「FRBは再びトランプを見極めようとしている」
~新政権が誕生した新年を迎えるにあたり、政策立案者たちは削減幅を縮小し、インフレはやや頑強になると予測している。
POINT
・FRBは、次期大統領のトランプ氏との対立を回避しながら、同氏の政策による潜在的なインフレ圧力にも対応しようとしている。
・FRBの最近の予測では、当局者は以前の予測よりも価格上昇圧力が強固になることを予想している。
・パウエルFRB議長は、トランプ大統領の関税や移民政策を先読みして政策を策定している中央銀行当局者の存在を懸念している。
・FRBのトランプ大統領の政策への対応は、インフレや失業率などの経済状況によって左右される。
FedウォッチャーNICKの記事はWSJ(有料)でしか読めませんが、Xのポストでも大まかに読み取ることができます。FRBはトランプ政権下でのインフレ再燃を警戒している、と。
The Fed is trying to size up Trump. In 2018, tariffs didn’t end up producing inflation and the Fed ended up cutting rates because of fears of a growth slowdown from souring sentiment and investment.
— Nick Timiraos (@NickTimiraos) December 27, 2024
But the 2018-19 episode followed years of very weak price pressures where…
~最後に、トランプ大統領は長らく金利を低く抑えたいと表明しているが、一部の顧問はインフレがまだ抑えられていないことを認識しており、FRBが引き続き利下げを続けることに懐疑的だ。
とはいえ、米株は1/2(金)には反発しており12月安値を割り込むには至っていません。年末年始の流動性が高くない時期の値動きですが、ひとまず高値圏にある米株には利食いが旺盛に入ったのだろうと推測できますが、リスクオフ相場全開、というまでには至らなかったというのが現時点までの値動きですね。
米株は持ち直すか?1/3(金)力強い反発で週末を終える
株の益回りと債券利回りの比較から、米株のここからのさらなる上昇には懐疑的ですが、持続的な米金利高という以外に米株が暴落するほどの悪材料が出たわけでもありません。1/3(金)は米下院議長選で現職のジョンソン議長が再選されたことが米株市場で材料視されたようです。
「トランプ次期大統領が掲げる企業寄りの政策と規制緩和を、共和党議員が結束して進める可能性が示唆された。」Bloomberg記事
更にこの日、リッチモンド連銀のバーキン総裁が、「経済成長については、下振れよりも上振れのサプライズを予想している」と述べ、2025年の景気見通しはポジティブであることが示されたことも好感された模様。
そして発表されたISM製造業景況指数、2ヶ月連続で持ち直しています。
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ISM製造業購買担当者景気指数 49.3
11月の48.4から上昇、3月以来、9カ月ぶりの水準まで回復。
~ただし景気の分水嶺50は9ヶ月連続で下回ったまま
~製造業は米経済の10.3%を占める。
・先行指標となる新規受注指数は52.5、前月の50.4から上昇。
・価格指数は52.5、前月の50.3から上昇。
・輸入は49.7、前月の47.6から上昇。
~トランプ次期米大統領が掲げている関税引き上げを見越して、
輸入が増えた可能性。
・供給業者の納入を示す指数は50.1、前月の48.7から上昇。
~50を超えると納入が遅くなっていることを示す。
・雇用指数は45.3と、前月の48.1から低下。
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これらの結果を受けて 1/3(金)は米金利が再上昇しています。
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ドル円が下がりきらなかったのは米国株の持ち直し、米金利の再上昇が背景かと思われます。
ISM製造業景況指数のサブ項目の数字も軒並み前月より上昇していた、ということが米国株市場では好感されたわけですが、ただ、雇用指数の低下が気になりますね。7月以来の大幅低下です。FRBの2つの使命はインフレの安定と雇用の最大化です。労働市場の陰りは良いニュースではありません。今週末金曜日は早速12月の米雇用統計の発表がありますね。
1/6(水)
1/7(火)24:00 11月雇用動態調査(JOLTS)求人件数
前月774.4万件⇒予想 777.5万件・増加予想
1/8(水)22:15 12月ADP雇用統計(前月比)
前回14.6万人⇒予想13.0万人・減少予想
1/10(金)22:30 12月分雇用統計
非農業部門雇用者数(NFP)
前月+22.7万人 ⇒予想+15.3~16.0万人・減少予想
失業率 前月4.2%⇒予想 4.2%
平均時給(前月比) 前月0.4%⇒予想 0.3%
平均時給(前年比) 前月4.0% ⇒予想 4.0%
今週は雇用関連指標でドル金利、ドル円相場が神経質に動きそうです。悪ければ素直にドル金利低下、ドル円下落のような気がしますが、海外勢が本格的に円キャリー取引を再開させる相場に発展するようなら、そこが押し目となるでしょうか。しかし年末年始に海外勢の積極的な円売り姿勢は確認できませんでしたので、本当にここからさらなるドル高円安相場となるのか、まだ確信は持てません。
米金利の上昇が止まりませんが、金利上昇は債券売りが旺盛である、ということでもあります。TLT市場、2ヶ月間での資金流入が過去最低=マイナスですので資金流出ですね、流失が過去最大だというポストです。
TLT=20年超米国債ETF
This is the LOWEST 2-month net flow into TLT in history.
— Guilherme Tavares (@i3_invest) January 2, 2025
"The time of maximum pessimism is the best time to buy, and the time of maximum optimism is the best time to sell."
Sir John Templeton pic.twitter.com/TNTHXRE8z2
米国は9月に利下げサイクルに入ったというのに、金利が下がらず上昇(債券が下落)しているというのはやはりちょっと違和感がありますね。
ユーロが急落、欧州天然ガス価格上昇も嫌気か
ユーロドルが年末年始、一段安となりました。
パリティ(1ユーロ=1ドル)を目指すのでは、という見方が現実味を帯びています。
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あまり利下げはできないのではないか、という米国に対して欧州は積極的な利下げが行われるだろうと見られています。欧州景気はよくありません。
ECBは12月会合で3会合連続となる利下げを決定。0.25%利下げで3%に。インフレ率が目標の2%に近づく一方で経済は低迷していることから、来年もさらなる利下げを行うと示唆しています。さらにトランプ2.0での関税も警戒されています。
また、ウクライナを経由したロシア産天然ガスの供給は、契約失効に伴い1月1日に停止されています。代替策がないようです。。。
トレーダーらは一部の中欧諸国にとって重要な供給源であるロシアからの流入が止まることで、貯蔵分の取り崩しが速まるかどうかを注視している。欧州全体のガス在庫は、エネルギー危機の兆しが見られ始めた21年以降、最も速いペースで減少している。
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エネルギー高はインフレ再燃のリスクに直結します。
もう一度主要国の長期金利チャートを確認してみます。
欧州圏のドイツ、フランス、イタリアの金利は上昇していますね。これはインフレ警戒が長期金利に織り込まれているということでしょうか。しかし金利上昇ならユーロ高となるはずです。ところが、金利高でもユーロ安。債券売りとなっているということですね。債券が売られて通貨も売られている。。。よくありませんねぇ。フランス政治の混乱もユーロ売りの背景にあるとの指摘も。
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ユーロは戻り売り戦略でしょうか。
不穏な動き、中国株下落と中国長期金利の急低下
今では中国の悪材料が他市場に波及することは少なくなっていますが、年始早々マーケット関係者の話題は中国の金利低下。
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中国人民銀行(中央銀行)は、2025年の「適切な時期」に金利を現在の1.5%から引き下げる可能性が高いとの見方を示した。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が3日、人民銀による同紙へのコメントとして報じた。
中国の主要金利は7日物リバースレポ金利で、昨年9月下旬に1.7%から1.5%に引き下げられた。
人民銀は「金利調整の役割」を優先し、融資拡大のための「量的目標」から軸足を移す考えも示した。
金融緩和観測を背景に中国の10年債利回りと30年債利回りは3日、ともに過去最低を付けた。
中国は12月に開いた中央経済工作会議で、景気底上げに向けて財政出動を拡大するとともに、金融緩和を行う方針を決定。「適切な時期」の利下げと銀行預金準備率引き下げの方針を決めた。
中国が金融緩和策を量的緩和から金利調整に軸足を移すという考えを示したということがきっかけのようです。たしか中国は人民元の国外流出を阻止するためにあまり金利を下げてこなかったと記憶していますが、そうも言っていられないということでしょうか?
ドル/人民元チャートを見ると足元で猛烈にドル高人民元安が進行中。
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元安で輸出競争力は上がるでしょうけれど、トランプ次期大統領はこうした中国のデフレの輸出を問題視して関税をかけるとしているんですよね…?
困ったことに利下げ、緩和のニュースでも中国株が弱い。年末年始の中国株は大きく下落が続いているのです。この利下げ予告記事がでたのは1/3ですが、上海総合指数、12/31,1/2,1/3の3営業日で大きく崩れていますね。
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昨今では中国の不調は日米のマーケットに大きく悪影響を及ぼすものではなくなってきていますので、これでリスクオフ相場に警戒、というわけではないのですが、中国の影響が他市場に全く及ばないということでもありません。例えば足元のアップルの下落。
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中国で最新モデルのiPhoneを最大500元(68.50ドル)値引きする異例のセールを開始する。消費者が支出に慎重になっている中で、華為技術(ファーウェイ)など地元企業との競争で優位に立つ狙いがある。
どうやら第3四半期の中国におけるi-phoneの出荷台数は前年比で6%減少した一方、Huaweiの出荷台数は24%増加した模様。これを受けた値引きということで、Appleの中国市場での競争力に疑問符がついたことがApple株下落のトリガー。
ただし、Apple株は下値が固い。というのも猛烈に自社株買いをしているからですね。昨年5月、Appleは米国史上最大規模となる1100億ドル(約17兆円)の自社株買い計画を発表しています。Appleは2014年9月期から23年9月期までの自社株買い総額は6077億9100万ドル(100兆円?!)自社株買いが途絶えたらApple株を押し上げる買い手はどれほど存在するのか。今は自社株買いに提灯つけて買う向きがあるでしょうけれど。これ以上の高値を買おうと思う投資家は多くないような気がしますね。
バイデン大統領、日本製鉄USスチール買収中止命令
日本製鉄のUSERスチール買収計画、バイデン大統領が中止命令を下しました。日本製鉄は米政府を提訴すると報じられていますが、
米政府が日本と中国を誤表記するなど、中国と日本を混同している可能性が指摘されていたりするのですが
日本製鉄の過去の親中経営が米国側の懸念なのではないか、という指摘もあり、この問題、意外と根が深そうです。
日本製鉄は、稲山以来、親中経営を続け、宝山・武漢の製鉄所を新日鐵の技術を教えて立ち上げ、しかも、1年前には進藤前会長が日中経済協会の団長として訪中し戦略的互恵関係を確認している。米国が買収に警戒するのは当然だ。この懸念を払拭し説得できる知恵者がいないだけhttps://t.co/yvDMryPimi
— KOJI HIRAI 平井宏治 (@KojiHirai6) January 4, 2025
原油が足元で上昇基調にありますが、中国の緩和が材料でしょうか?中国の習近平国家主席が新年に向けたテレビ演説で、2025年の成長促進へ一段と積極的に政策を実行する方針を明らかにしたことが原油高の背景との解説もありますが~
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バイデン大統領が新たな石油掘削禁止の方針とか。
単純に原油高の材料ですね。あくまで心理的に、ですが。
バイデン大統領任期終了前に慌ただしく色々と動いています。
ウクライナに25億ドルの追加武器支援。
イスラエルにも。1兆円規模だそうです。
先月は息子ヘの恩赦で非難されていましたね。
今週の主な予定
1/9(木)がカーター元米大統領国葬で米市場が休場となります。
■1/6(月)
●12月新車販売台数(14:00)
●12月軽自動車販売台数(14:00)
●米11月製造業新規受注(24:00)
■1/7(火)
●12月マネタリーベース(8:50)
●世界最大の家電見本市「CES」(米ラスベガス、~1/10)
●米11月貿易収支(22:30)
●米11月雇用動態調査(JOLTS)求人件数(24:00)
●米12月ISM非製造業景況指数(24:00)
■1/8(水)
●12月消費動向調査(14:00)
●米12月ADP雇用統計(22:15)
●米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(12/17~18開催分)(1/9 4:00)
■1/9(木):米市場休場
●12月毎月勤労統計調査(8:30)
●12月都心オフィス空室率(13:00)
■1/10(金)
●「東京オートサロン」(幕張メッセ、~1/12)
●11月家計調査(8:30)
●11月景気動向指数(14:00)
●オプションSQ
●米12月雇用統計(22:30)