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親と子の気持ちの伝えかた、感じかた。

今さっき、道を歩きながら、とてもとても美しいものを見て、思いがけず涙してしまった。幸いなことに、外はとても暑くて、汗で涙をごまかしながら、目的地のカフェまで歩いてきた。そして今、席に着き、たかぶる胸と、目頭の熱さを感じながらパソコンを開いて、これを書いている。いま抱いている感情を、ずっと残していたい。

私が見たもの。
それは小学校の校門の前に立つ、ひとりの母親らしき女性の表情。

彼女を見ると同時に、校門の方からは子供たちのとっても明るい「さよーならー!」が聞こえてきた。私の耳はよろこびながらも、なぜだかその女性から目を離せなかった。

さっきまでは「暑い〜」と言わんばかりの表情で、我が子なのか、親戚の子なのか、友人の子なのか、いずれにせよ、子供を待っていただろうその人は、子供達の声と共に、私の涙をそそうほどの、美しい表情へと変わっていった。

目はやさしいカーブを描くような線の形になって、口角はゆっくりと上がっていき、少し伸びたかようなスラッとした身体は、一歩前に進んだ。すぐにでも誰かを抱きしめるかのような表情と動き。その一瞬は、スローモーションの映像かのように、今も私の目にしっかりと焼き付いている。

特にその人のまなざしを見た瞬間、私の涙はぶあっと溢れだしてきた。止めたくても、ぜんぜん止まらなかった。止まってくれなかった。

この世の全ての悪を、ゆるしてくれそうな、優しい眼差し。
大切な何かを、慈しみ、愛おしいんでいる、深い愛を感じる眼差し。
だいすきな人にずっと会えなくて、ようやく会えて、すぐにでも触れようとしたくなっている時の、眼差し。

とっても、とっても、うつくしかった。とっても。

その瞬間、私は自分の母を思い出した。

「母も、あんな表情をしていたのかな」って。

きっとしていたのかな。

「お母さん、会いたいな。」

学生の頃、どれだけ家から近くても、習い事からのお迎えだけは欠かさなかった母。中学生になって、さすがに友人たちと帰ることが増えてきても、いつも隠れて、反対側の道路から私のうしろを追いながら、私の帰りを見届けてくれていた。頼んでいなかったし、何なら迷惑だと思ったことも。

いま思えば、実家で一緒に住んでいた頃、まじまじと母の表情なんか見ることは無かった気がする。存在が当たり前すぎて、一心同体のようだったし、何か改まって母について考えたことは無かった。

親子って、そんな関係性なのかもしれない。
大事な存在だってことは事実だけれど、近すぎると、その存在の尊さが当たり前になってしまって、お互いの気持ちを確かめ合うことなんて、滅多としないんじゃ無いかな。

でも見えないところで、親は子を想い、子は親を想っている。

親子って、想いの「すれ違い」の数の方が多いかもしれない。そこには照れくささや、恥ずかしい、素直になれない、お互いのいろんな気持ちが絡まり合っているからこそ。好きだから、でも近いから。別にいちいち伝えなくてもいいか、それが多すぎるのが、親子や家族なのかもしれない。

今日見たあの人は、どうだったんだろう。日頃からずっとあんな風に子供と対峙しているのかな。でもきっと怒っちゃったりもするよね、叱かること、子供を躾ける事、ずっとずっとハッピーでポジティブな感情でいられる、女神のような親って、それこそ希少存在な気がする。

親にだって、喜怒哀楽があっていいと思う。子供はきっとそれを見て、人間にはいろんな感情があることを学び、それぞれの感情との向き合い方を学んでいくんだとも思う。

お母さんだから、しっかりしないと。
お父さんだから、威厳を持っておかないと。

そんな人たちだって、そっと隠している「うつくしくて、あったかくて、やわらかい」子供達への愛があるんだと思う。そう信じている。そう信じてきたから。だから、どれだけ親が厳しくても、一度も嫌いにならなかった。

どうか、たまにでいいから、それを子供達にも伝えてみてほしい。
その時のあなたの表情や言葉達は、きっと子供達を強くして、安心を感じて、この世界の美しさにまた気づいて、好きになると思うから。

そして、その時の子供達の反応を見てみてほしい。きっと目をキラキラ、うるうるさせて、ずっとあなたを見ているかもしれない。うまく感情を表せない子もいるかもしれない。でもすっごく喜んでいると思うし、あなたも優しい気持ちになれるかもしれない。そしてその一瞬は、きっとずっと子どもの心の中で生き続けていくものだと思う。

そんな親子の「愛の受け渡し」に、私は立ち合って、時にはお手伝いなんかもしたりして、夢みたいだけど、夢じゃない、そう願う金曜日の昼下がり。

外はノロノロ台風で騒いでいるけど、とっても優しい気持ちになれているのでした。

Hiroko




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