北川透「海の古文書」感想
現代詩手帖9月号に掲載されてた著者の詩が気になって読書。2010年発表の130ページの連作詩集で、小説なら薄い本だけど、語彙も潤沢、重みある言葉で紡がれた次々と現れるシュールなイメージに終始圧倒されっぱなし。特に何かに取り憑かれた女性の赤裸々な思い出語りのパートが生々しく強烈で、読後はマルケスなどの南米文学数冊分読んだような疲労感。最果タヒが刃なら、これは噴火で飛んできた岩塊。日本現代自由詩すごいな。
自分には読めない漢字も多々あったが、文字そのもののビジュアルな迫力も強い。実は御年85歳のこの詩人、恥ずかしながらこの詩で初めて知ったのだけど、60年代の政治運動や世界情勢、サリン事件も取り込んだ現代の叙事詩的な側面もあって予想以上の読み応えがあった。オクタビオ・パスが詩論で詩と歴史について細かく論じてたのはこういうわけか、と納得。あの時代は何だったのか?という情念、詩という形態でしか表現できないこと、確かにあると思う。
今年のノーベル文学賞は米国の詩人が受賞するなど、海外では詩も広く受容されてると実感し、まずは国内の自由詩をと、読んでみたが、なかなか面白くて新発見。マルケス南米文学好きな人ならこの詩集はおすすめ。
手書き入力付き漢和辞典アプリもあると便利で良いかもです。
(2020年10月20日読了)
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